尖閣諸島を巡る攻防戦シミュレーション
中国は2016年の段階で作戦準備完了
思い出されるのは2016年の中国の尖閣への大攻勢だ。
同年8月6日午前8時過ぎ、尖閣諸島の接続水域に中国海警局の巡視船6隻が侵入。さらに周辺海域に突然、約230隻もの中国漁船が出現した。同日午後には、海警局の巡視船1隻が加わって7隻が接続水域に侵入し、8月8日には、海警局の巡視船など公船が15隻、漁船の数は400隻に達した。
当時の安倍政権は海保の巡視船に出動を命じる一方、「偶発的衝突」に発展しないように外交ルートで中国に厳重抗議したが、中国は2016年の段階で、いつでも尖閣を奪い取れるだけの作戦と準備を整え終えたと考えておくべきだろう。
日本政府もこの事案をきっかけに「尖閣領海警備強化のための体制整備」を決定。中国公船の大型化、武装化に対応できる巡視船や航空機、基地の増強を進めてきた。
2023年4月には、防衛大臣が有事に海保を指揮できる「統制要領」を策定し、尖閣諸島への武力侵攻が起きた場合を念頭に、海保が大型無人監視機「シーガーディアン」で集めた情報を自衛隊と即時共有する仕組みを作り、海自と海保の共同訓練も実施している。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2025年12月26日号
