尖閣有事が起きれば、どんな事態が進行するのか(写真/共同通信社)
日中関係は、中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射により、さらに緊迫の度を増している。そんななかで懸念されているのは「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる事態である。もしも尖閣有事が起きたなら、何が起きるのか、シミュレーションする。【全3回の第2回】
偽装漁民が大挙して尖閣に押し寄せる
では、今、尖閣有事が起きれば、どんな事態が進行するのか。国民はどんな対応を覚悟する必要があるのだろうか。
本誌・週刊ポストは防衛省・自衛隊の情報分析官や幹部学校戦略教官室副室長などを務めた軍事・情報戦略研究所所長の西村金一氏(元陸自一佐)と元海自一佐の外交安全保障専門家・小原凡司氏(笹川平和財団上席フェロー)の専門家2人の協力で尖閣有事のシミュレーションを行なった。
尖閣諸島を巡る攻防戦シミュレーション
小原氏は尖閣有事の発端は漁民に偽装した中国の海上民兵が上陸しようとすることから始まると見ている(図【1】)。想定されるシナリオはこうだ。
「中国は無人島である尖閣への上陸を試みるのに軍事力は使わないと思います。船舶の故障などによる緊急避難といった人道上の理由を持ち出して、漁民の上陸が必要などと言ってくると思われる。そのうえで、数百隻の海上民兵の船で尖閣諸島の周辺を完全に制圧する。
その周りを海警局の船が囲み(図【2】)、さらにその外側に中国海軍の船が待機するという陣形になると思います。なるべく軍事行動と受け取られないように、民間の行動としてやっていることをアピールする。海上保安庁がなかなか手を出せない、出しにくい状況を作るでしょう。日本の海保が『救出に行く』と言っても、中国海警局は『自分たちが対応する』と言って、海上民兵の尖閣上陸を誘導しようとするはずです」
海上民兵は中国共産党中央軍事委員会の管轄下にあり、退役軍人などで構成されるとみられている。中国海軍の指揮下で情報収集や資材運搬、補給などを行ない、ゲリラ活動の訓練も受けているとされる。
「海上民兵には、正規の民兵と非正規の民兵がいると言われており、非正規のほうは、普段は漁民として生活している人たちです。海上民兵の船には一般的に武器を搭載していない。ただし、放水銃を搭載している船はあると言われています。
海上民兵は漁民の恰好をしていますから、軍隊にはならない。その海上民兵が尖閣に上陸しようとすれば、不法上陸として日本は海上保安庁が警察権で対処し、阻止することになる(図【3】)」(小原氏)

