尖閣諸島を巡る攻防戦シミュレーション

尖閣諸島を巡る攻防戦シミュレーション

中国軍の“参戦”

 決断が遅れれば、自衛隊より先に中国軍が本格介入してくる可能性もある。

『自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか』(祥伝社)の著書がある軍事・情報戦略研究所所長の西村氏は、「日本が自衛隊を動かそうとした時に、中国軍が動き出すことを想定すべきです」と語る。

「中国軍が動く場合、まずやるのは夜間に木製でレーダーに映りにくい航空機『アントノフ―2』などで落下傘部隊を尖閣諸島に潜入させ、ヘリボーン部隊も上陸、それと並行して中国海軍の強襲揚陸艦などで本国から上陸部隊を運んで尖閣を完全制圧する。そして尖閣を制圧すれば、奪還されないように最新の南昌級駆逐艦(1万2000トン級)や昆明級駆逐艦などを尖閣周辺に進出させ、海保の艦船を排除するとともに海上優勢を保とうとするはずです」

 中国が海保の艦船に爆弾投下して尖閣諸島を軍事的に占領した場合、明らかに「武力攻撃事態」になる。

 高市首相はここで再び、自衛隊に奪還作戦を命じるかどうかの判断が問われる。

尖閣奪還作戦

 陸上自衛隊には水陸両用強襲輸送車(AAV7)を配備した島嶼防衛専門部隊「水陸機動団」(約3300人)があり、海保や国境離島警備隊とともに尖閣諸島が不法占拠された場合の奪還訓練を何度も行なっている。

 どんな作戦になるのか。西村氏が語る。

「自衛隊の尖閣奪還作戦は、早い決断と奇襲作戦が求められる。まずは島内の中国軍対空兵器を無力化し、制空権を握る作戦を行なう。併行して海上優勢の確保。尖閣周辺の中国軍の艦艇を対艦ミサイルで排除します。そのあとは、中国がやったのと同じで、夜間に落下傘部隊を潜入させ、地上を混乱させたうえで、ヘリで部隊を展開させるヘリボーン攻撃。続けて上陸部隊の輸送を行ない、強襲上陸する。

 尖閣は無人島ですが、南西諸島には日本人の住民がいる。そのため、中国側は南西諸島の他の島にも侵攻し、島民を人質にとって日本政府と交渉するというオプションが考えられます。その場合、外交交渉の一方で自衛隊が特殊作戦群などを投入して人質奪還などを行なうことになるでしょう」

 そうなると完全な日中軍事衝突だ。

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