親族の女性に直撃すると……
「仕事はよくできるから、彼の仕事ぶりを見て別の会社が声をかけてきたこともあった。ゆくゆくは現場を引っ張っていくリーダーのような立場になってほしかったんです」
2022年に執行猶予つきの有罪判決を受けたあと、この男性は谷本被告と話をする機会があったという。その際に被告は犯行を“否定”するようなことを述べたという。
「本人に女の子に迫ったのかと聞くと、『そんなことしてない』っていうのよ。『友達が女の子(被害者)にお金を貸していて、そのことについて相談をしにいったら、大きい声を出された。口を押さえるつもりがうっかり首を絞めてしまった』と……。真実はわからないけど、心から反省している人が言うセリフではなかった」(同前)
事件を起こしたことで、地元に居づらくなったのだろうか。2022年末以降、被告は福岡県の産廃業者や、千葉県の建築会社へ就職するが、いずれも短期間で退職。2023年5月から今回の事件で逮捕されるまでは、東京・高田馬場の運送業者に勤務しいていた。
この会社でも男の勤務態度に問題はなく、トラブルもなかった。同社の社長は過去にこう話していた。
「女の子の“お”の字もないようなやつだった。お酒は飲むけど、2次会にはぜったい行かないタイプ。一方、業務はかなり評価していました。仕事を覚えるのがとにかく早く、配送ルートなども人の2倍以上の速さで覚えていた。
『地元の悪い縁を断ちたい』という理由で関西を出てきたと聞いたけど、実際は犯罪を起こしていられなくなっただけだったのでしょう。『前科や犯歴はない』ときっぱり言っていたし、心から裏切られた気分でした」
谷本被告がこの会社に提出した履歴書の「家族連絡先」の住所には、父親が入所しているという大阪市内の老人ホームの住所が記されていた。母親については真偽不明だが、「病気で入院していると話していた」(前出・運送業者の社長)ようで、頼れる身寄りはほとんどいなかったとみられる。
そんな中で唯一、この社長が男から連絡先を知らされていたのが関西に住むある親族の女性だった。NEWSポストセブンは12月中旬、谷本被告の起訴を受けてこの親族に取材を試みた。記者が自宅を訪れると、女性は厄介ごとには巻き込まれたくないといった口ぶりで、こう短く答えた。
「あのね、私から彼に言うことはなにもないんです。本当になにも。聞かれてもなんにも知りませんから」
事件からすでに4か月以上。片山さんの遺族は、まだ事件の悲しみの中にある。弁護士を通して片山さんの両親に取材を申し込んだところ、こうコメントを寄せた。
「事件により私どもの生活は一変しました。日々、平穏を取り戻したいと思いながら過ごしていますが、娘がいない日常に慣れることはありません。ふとした瞬間に寂しさや悔しさが襲ってきて、涙が止まらないことがあります。
裁判でどのような結果になったとしても、娘が帰ってきてくれることはなく、娘がいない日々には変わりはありません。ですが、そうであれば、せめて犯人には最大限厳しい処罰を受けてほしいというのが私どもの今の思いです」
見知らぬ女性を狙い、罪を重ねてきた谷本被告。待ち受ける公判でその“異常な認知の歪み”は明らかになるのか──。
