引退する棚橋弘至にエールを送る天龍源一郎
新日本プロレス社長の棚橋弘至(49)が2026年1月4日に東京ドームでオカダ・カズチカ(38)と引退試合を行う。名レスラーの引退試合は数々の伝説を残してきたが、天龍源一郎(75)が2015年にオカダと繰り広げた引退試合も平成末期の語り草となる名勝負だった。
棚橋vs.オカダは過去14回行われた定番の黄金カードだ。一方、天龍vs.オカダはこの時が初対決であり、天龍のプロレス人生最後の闘いとして37歳年下の現役IWGP王者に挑んだもので、シチュエーションは大きく異なる。
全日本プロレス出身ながら、90年代以降、アントニオ猪木から長州力、藤波辰爾、闘魂三銃士に棚橋・オカダ世代まで、新日本プロレス全歴史のトップレスラーたちと対戦してきた天龍。プロレス界最後のご意見番に、棚橋弘至の引退を本音で語ってもらった。ミスター・プロレスの微塵も衰えぬ“激辛エール”とは――。
シリーズ「逆説のプロレスVol.26 さらば100年に一人の逸材! 棚橋弘至 『ストロングスタイルを否定した男』真実の物語」(双葉社スーパームック)から、一部抜粋して再構成。【全4回の第4回。第1回から読む】
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棚橋vs.オカダに天龍不満「森光子のほうがよっぽど潔い」
――棚橋選手の引退試合の相手が、今AEW(All Elite Wrestling=アメリカのプロレス団体)所属になっているオカダ・カズチカ選手になることが正式に発表されました。くしくも天龍さんの引退試合と同じ相手になりましたが、このカードを聞いてどう感じましたか?
天龍 棚橋の最後がオカダっていうのは、なんかなあなあな感じで、あまり好きじゃないね。ラストマッチというより送別会のようでさ、「ごくろうさまでした」「ありがとう」みたいな、そんなシチュエーションが先にできているマッチメイクっていうのが俺は好きじゃないんだよ。棚橋のことを快く送り出してあげたいオカダもいるんだろうけど、そういうものじゃない何かを見せてほしかったね。
――同じオカダ・カズチカとの引退試合でも、天龍vsオカダとはだいぶ意味が違いますもんね。
天龍 俺の場合は、昭和のプロレスにああだこうだ言ってるオカダにこっちから吹っかけて、最後はバコンとぶった斬られてグチャグチャになって、「これ以上プロレスはやれません。プロレスを長くやってたらこうなりますよ」っていう姿をプロレスファンに見せて散ったわけだから。棚橋だって、そういう散り方のほうが俺は潔いと思うんだよ。それがあの二人だとお互い気心知れてるから、最後はハッピーエンドで終わりそうで俺は好きじゃない。もう結末が見えてるような終焉なんてのは、クソ喰らえだよ。
――たしかに記者会見からも「最後の勝負に挑む」というような感じは薄かったように思います。
天龍 あれなら亡くなる間際まで『放浪記』の舞台ででんぐり返ししてた森光子のほうがよっぽど潔いよ。俺はああいうマッチメイクをよしとしてる棚橋が嫌なのよ。棚橋はこれから新日本の社長として、もっと大きな仕掛けで団体を大きくしていかなきゃいけないのに、冒険しないで小さくまとまっていいのかと。世間がアッと驚くようなことをやってみろって、と言いたいよ。
――本当は中邑真輔とやりたかったという事情もあるんでしょうけどね。
天龍 猪木さんの格闘技路線は否定してもいいけど、猪木さんがここまで新日本を大きくしてきた冒険心まで捨ててしまっていいのかって。俺がこういうことを言うと、棚橋のファンや今の新日本のファンに「何を言ってるんだよ、クソジジイ」って言われるかもしれないし、彼らの価値観のなかではそれも正しいのかもしれない。
でも、その向こうには俺の言ってることに「そうだ!」と賛同する多くのプロレスファンがいると思ってるし、そのさらに向こうにはプロレスにとやかく言う世間の人間がいる。新日本のトップなら、そこまで考えてなきゃウソだよ。
