元仙台高裁判事の岡口基一氏
司法権(裁判所)は、行政権(内閣)や立法権(国会)から独立する────小中学生で習う基本であるはずの「三権分立」だ。しかし、「白ブリーフ」などで話題となったSNSでの投稿内容を理由に裁判官を罷免された元仙台高裁判事の岡口基一氏は、その前提に対して危機感を覚えているという。司法界の危機に、安倍政権下の「官邸一強政治」が関係していたと語る岡口氏の真意とは。ノンフィクション作家の広野真嗣氏がインタビューした。(全3回の第2回。第1回から読む)
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「裁判所は、私が入った頃とは全く変わってしまった」
そう話すのは、2024年に異例の弾劾裁判を通じて罷免され、その一部始終を『裁判官はなぜ葬られたか』(講談社)に著した元仙台高裁判事、岡口基一氏だ。
近年、裁判所の組織にとって大きな脅威になったのは、霞が関に強い影響力を及ぼした安倍晋三・元首相、菅義偉・元官房長官による官邸一強政治だという。岡口氏が明かす、知られざる司法界の変貌とは何か────。
岡口氏は東大卒業後の1991年に司法試験に合格。司法修習生の期間を経て、裁判官としてのキャリアの振り出しは、1994年、浦和地裁判事補からだった。大阪高裁判事、東京高裁判事とキャリアを重ねた2015年に私生活で行ったSNS投稿が問題視された。最高裁による2度の厳重注意と戒告処分を経て、裁判官弾劾裁判所から2024年、罷免判決をくだされたのである。
岡口氏が最高裁から注意を受けた時期と、第2次安倍政権で菅官房長官が内閣人事局を通じて霞が関のコントロールを強めたタイミングは重なる。当時、岡口氏は、裁判所トップ人事をめぐる組織内の変化も感じたという。
「安倍政権は特別な時期でした。それ以前にも自民党保守派から最高裁人事に口を出された時期もあったけれど、最高裁は、長官や最高裁判事の人事を事実上決めることができていました。それが第2次安倍政権になってから、菅官房長官は最高裁に対して『(後継候補案を)2人持ってこい、官邸で決める』と指示し、地味ながらグリップを強めていきました」
