保守派議員から「最高裁長官に合わせろ」
「私の裁判を通じて、国会議員が裁判官の独立という原則など何とも思っていないことがよくわかった」と岡口氏は語る。聞いているうちに、「司法権の行政権からの独立」といった憲法原理もその実態は空疎なものではないかと思えてくる。岡口氏は、実際、そうした原則の崩壊は権力者の日常の振る舞いにあらわれていると続ける。
「トランスジェンダーに関する法律に最高裁が違憲判決を出した際、その内容が気に入らないことを理由に、ある保守派の議員は『最高裁長官に会わせろ』と文句をつけてきたそうです。私の弾劾裁判を通じて、国会議員が裁判官のことを歯牙にもかけていないことは明らかでしたが、より平たくいうと“国会議員の方が裁判官よりも上”という意識が強いのだと思います」
これは政治権力が強くなったというより、同時にこうした現実と向き合う法曹界の人材層の変質とも響き合っている。
■取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)