「若い裁判官がどんどん辞めている」現象が起きているという
「四大事務所に入りたい」が動機!?
岡口氏の懸念に戻ろう。
「若手裁判官は、民事事件を扱う裁判官としての実力に自信を持てないまま仕事をせざるをえない現実と直面しており、辛くなると辞めてしまう。当局に立ち向かうどころではないんです」
岡口氏が判事補となったのは1994年のことだ。
「当時の司法試験突破は現在より難しく、1年に合格者は500人しかいませんでした。東大法学部に入っていれば4年で卒業して有名企業に就職できるのに、あえて難関に挑んで7年生ぐらいでようやく合格を勝ち取れた。茨の道を選ぶのは、裁判官になって、日本国憲法が掲げる少数者保護の実現を担うのだというマインドがあったから。
ところが今はそういうタイプはいません。逆に、中学生から司法試験に挑む子までいます。2025年も女子高校生が合格しています」(岡口氏)
これは単なる受験者の若年化にとどまらない変化だと岡口氏は嘆息する。
「若い受験生に将来の希望を聞くと、『四大事務所に入りたい』というのです。つまりは経済的な理由であって、『お金持ちになりたい』と……。2025年に放送された民放ドラマ『イグナイト 法の無法者』(TBS系)でも、貧しい家庭に育った主人公が、進学費用がないという理由で弁護士になる話でしたが、あれと同じです。
これは若手裁判官も同じ。裁判官の仕事に思想的なバックボーンは乏しく、むしろ『部長(裁判長)に誉められたい』という承認欲求に支えられている。かつてとはもはや人種が違いますし、私の本は彼らの心に全く響かない(苦笑)。むしろ、『岡口のようにやれば生きづらくなる』と、反面教師のテキストになっているかも知れません」(同前)
冒頭に記した「逆のメッセージになった」という岡口氏の述懐はこのことを指している。
