モサドとCIAの最強タッグが目を光らせる(写真はイランで起きたデモ/Getty Images)
イランに対してはモサドと連携
マドゥロ官邸のような敵対組織のなかにいかに協力者を確保するのか。実はCIAには工作員が実際に接触する前に、協力者になり得る可能性を秘めた人物を見極める「スポッター」という専門家が存在する。
候補となる人物の経歴、家族、人脈といったことを徹底的に調べ上げ、任務に最適な候補者を選別するわけだ。親米的なイデオロギーの持ち主であることは重要だが、目をつけるポイントの一つは経済的に困窮していたり、不遇だったりといった「弱み」がある人物かどうか。
諸条件が適合しても、工作員が自らCIAの要員であることを明かして接触することはない。大学教授や記者などを装って近づき、本人の境遇や考え方からして断われないような提案を持ち出して協力を引き出すのだ。
ベネズエラへの介入に続いてトランプは、物価高への抗議に端を発したデモで多くの死者も出たイランに対する軍事行動をちらつかせている。
昨年6月にはフォルドゥなど3つの核施設に対して地下貫通爆弾を打ち込んだ「ミッドナイトハンマー作戦」を実行したが、完全な破壊ではなかった。破壊する攻撃力はあるのに、「これだけでは現体制の転換に至らない」という計算が働き、次の攻撃の余地を残したと筆者は見ており、体制が揺らぐ現在の暴動はトランプにとって好機と映っているはずだ。
これを踏まえてCIAは、イラン国内に多数のスパイを放つモサド(イスラエルの情報機関)と連携しつつ、「核開発が続いていた」と判断できる情報があるか、鼻を利かせているに違いない。情報があれば軍事行動は現実化しうる。
とはいえ上司であるトランプはCIAが敬遠する予測不可能を体現したような指導者だ。この先の展開は読めない未知の領域に違いない。
【プロフィール】
山田敏弘(やまだ・としひろ)/1974年、滋賀県生まれ。国際ジャーナリスト。1999年米ネバダ大学ジャーナリズム学部卒業。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版編集記者などを経て、米マサチューセッツ工科大学で国際情勢やサイバーセキュリティ、インテリジェンスの研究・取材活動にあたった。帰国後はジャーナリストとして活躍。著書に『CIAスパイ養成官:キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』(講談社)など。
※週刊ポスト2026年1月30日号
