秘密作戦遂行に向けどんな準備を進めていたのか(トランプ大統領/Getty Images)
米国がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領夫妻を「たった5分で」拘束した攻撃は世界に衝撃を与えた。次の矛先はイランに向けられるとも見られているが、電撃的な作戦展開はいかに計画されるのか。国際ジャーナリストの山田敏弘氏がその内実を解き明かす。
* * *
作戦着手は1月3日未明だった。停電で真っ暗になった首都カラカスに複数回の爆発音が響き、低空飛行する複数のヘリが横切る映像が報じられたが、投入された航空機は150機に上る。
この編成には先導する戦闘機や爆撃機、陸軍の特殊部隊であるデルタフォースの部隊を運ぶヘリや護衛ヘリ、そして拘束した大統領を輸送する軍用機などが含まれていた。
兵力以上に見逃せないのは、大統領官邸への突入からマドゥロ拘束までわずか5分と、あっという間に決着した点だ。
もちろん偶然ではなく、徹底した事前準備を怠らないCIA(中央情報局)の工作活動の成果だ。
事実関係を辿ると、勝負は航空戦力の侵入の前には決していたことが見えてくる。南米最強とも称されるベネズエラの防空システムが無力化されていたからだ。
ベネズエラはロシア製のS-300長距離地対空ミサイルを配備し、昨秋には中距離用のBuk-M2E地対空ミサイルも追加配備していたが、前者は一度も起動した形跡がなく、後者はCIAの工作によってあらかじめ破壊されていた。ステルスキラーの異名を持つ中国製のレーダーJY-27も機能しなかった。
米国のジャミング攻撃(サイバー攻撃のひとつ)もあり、戦闘開始前に電力や通信などインフラのネットワークが寸断されたことが大きい。CIA主導の周到な事前工作によってマドゥロ側の抵抗手段が奪われていたのである。
現代の軍事行動の多くは、電波や通信の傍受などを活用するシギント(通信信号などを分析する諜報活動)やサイバー戦から始まるといわれるが、緊張が高まる以前の平時からインフラに不正アクセスし、システムの“穴”を見出す準備をしてきたことが見て取れる。
