静かな収録だったのにOAでは騒々しいとなることも(イメージ)
「昔は、収録前に若手芸人が前説として出てお客さんを盛り上げたし、そもそも、収録現場には必ず客を入れていました。しかし、客を呼ぶにも金がかかりますし、広い場所を抑えるのも大変。そこまでしても、実際の収録現場の雰囲気が微妙な結果になってしまったら、結局あとから声入れをするしかない。
かつては“必要”だったから始まった“声入れ”が、今では必須ではない場合にも多用され、結果、悪目立ちさえしている印象です」(ベテラン番組ディレクター)
若手ディレクターによれば、近年、番組放送直後から“声入れ”に対するクレームが、テレビ局の視聴者センターなどに寄せられるようになっているという。
「ワザとらしいとかうるさいとか、中には視聴者を馬鹿にしているのか、というお叱りまで頂戴しています。我々だって、声入れなんか古臭いしダサいし、何より視聴者をだましている感じがして好きではありません。演者と制作陣だけで集まり、静かに収録が終わったはずなのに、OAを見ると騒々しいので、タレントさんからもあれは何?と突っ込まれる」(若手ディレクター)
キー局などが利用する、都内の編集スタジオ運営者の男性もこう言い切る。
「古い人ほど声を入れるよね(笑)。我々編集マンは基本的にディレクターの言うとおりにやりますが、それだと声入れがうるさくて見てられない。我々が調整すると、なんかさみしいよね、などといわれる。でも若手からは不評で、それは視聴者も一緒。なのに、現場の上層部だけが気が付いていないのでしょう」(編集スタジオ運営者)
声入れはあくまでも盛り上がりを印象付けるための「演出」なのか、それとも、視聴者に誤解を与えかねない「やらせ」なのか。前出の若手ディレクターが続ける。
「ベテランの人たちが声入れしたがるのは番組の雰囲気を簡単に作り出せるから。テレビ視聴者のメイン層である中高年層には受け入れられるかもしれませんが、逆に若手は引いています。でも若者なんか番組が狙う視聴者層と違うから研究もしないし、深刻に受け止めきれない。テレビがより中高年向けに強化されたものになりつつあるということです」(若手ディレクター)
過去の成功体験にとらわれて、現在の状況に合わせられず時代に取り残される。そうやって消えていったいくつもの事例に近い状況にテレビ制作現場も陥っているのではないかと、若手は大きな危機感を抱いている。
