河童のルーク、天狗を守る鳥の大群、祝祭のように子を孕む女たち
2026年こそはたくさん本を読みたい……そんな目標を立てた人もいるのでは? さまざまな知識や考え方、豊かな感情を与えてくれる新刊4冊を紹介します。
『ブーズたち鳥たちわたしたち』江國香織/角川春樹事務所/1870円
大学教員の恵理加はドン・ウィンズロウの小説に出てきた澄んだクラムチャウダーを食べに米国北東部の町へ。そこでは100年前に日本から移住してきたbooze(河童)がすみ着いていた。人と野生動物の共生域が膨らむ、どこかお茶目な大人のファンタジー。河童や鳥だけでなく、女性同士のカップルに起こる生物学的マジックにはジェンダーの呪縛から解放された歓びが弾む。
社長は質素、社員達は自分の“好き”に邁進。衣料から電子機器まで、今リユースが楽しい
『セカストの奇跡 逆襲のゲオ』野地秩嘉/プレジデント社/1980円
着なくなった服を処分できない。でもそれを買ってくれ、同じ店でまた着たい物が手に入るとしたら? そんな好循環を可能にするのがゲオ傘下のセカンドストリート。本書は売買に携わる人々の姿を丁寧にルポし、リユースの価値に目覚めさせる。古着はすべて一点物。宝探しの楽しみも。新世紀のファッショニスタ(おしゃれさん)はセカストから誕生しそうな勢いを感じる。
高齢者シリーズの開幕作。団塊世代への愛ある風刺に何度も笑う
『終わった人』内館牧子/講談社文庫/1034円
昨年12月他界された内館氏。エッセイを通じて親族が一堂(犬も)に会するお正月風景を存じ上げていたので、今度もそのように過ごされるのだとばかり…。舘ひろし、黒木瞳、広末涼子で映画化された本書は内館氏の代表作の一つ。定年退職した元銀行マンの失意と再生をコミカルに描く。ちょっと毒舌なところもいい。お目にかかってもキレのいいコメントを発する明朗な方でした。
名エッセイストによるベストセラーの文庫化。おだやかな心で眠るための処方箋がみっしり
『眠れないあなたに』松浦弥太郎/小学館文庫/616円
40歳で『暮しの手帖』編集長に転身した著者は、極度のプレッシャーから睡眠障害に陥る。心療内科に駆け込んだ。その時の経験がこの本に生かされている。人生は「不安」と「孤独」と「欲望」でできている。孤独より恐ろしいのは孤立とか、将来不安があるのならお金リテラシーを身につけようとか、親身な助言をする。心を耕す読書の大切さも力説。夜の優しい月明りみたいな本だ。
文/温水ゆかり
※女性セブン2026年1月29日号



