「このミステリーがすごい!」大賞作。少年皇帝と日本人絵師の間に生まれる友情
まだまだ寒いこの季節。暖かい部屋の中で、さまざまな文章に触れ、心を豊かにするチャンス。おすすめの新刊4冊を紹介します。
『最後の皇帝と謎解きを』犬丸幸平/宝島社/1760円
舞台は1920年の紫禁城。大連育ちの18歳の一条剛は、廃帝の身である15歳の溥儀に水墨画の(贋作)師として雇われる。溥儀が皇帝に復帰するための資金作りの贋作ミステリーかと思いきや、密室殺人など宮廷内で起こる4話の謎を重ねる連作ミステリーに。日本は1932年、溥儀を元首に傀儡国家の満州国を樹立。そこへ向かう日中&世界情勢が青春の友情を切り裂くのも切ない。
『60代、日々好日 時々ため息』唯川恵/光文社/1760円
“昭和の女”として、近年の風潮に抱く違和感もサラリと書く
60代の心境を綴るエッセイ。自分のことのように読んでしまう。例えば苦手になったもの→食べ放題のビュッフェ、焼肉、テレビ。避けるべきもの→長距離や夜間の運転。区別がつかないもの→フェイスブックやインスタグラム、X。唯川さんの登山小説『淳子のてっぺん』はとてもいい作品だった。エベレスト取材でお風呂に入れない期間を利用して、グレーヘアにしたのも素敵。
『豊臣兄弟 天下を獲った処世術』磯田道史/文春新書/1045円
「本能寺の変」前後の新事実を明らかにする記述は読み応えたっぷり
血統好きのこの国で名家の出ではない豊臣兄弟がなぜ天下を獲れたのか。処世術に着目する。元からの家臣がいない彼らはよく分配した。領地や銭に限らず利権や儲けの知恵も。兄弟は天才的な経済人。秀長などは奈良借という貸金事業で産業投資的な面を担う。奈良出身の高市首相も、ぜひ参考にして欲しいとか。秀長亡き後、豊臣家の下り坂が始まったという結びも心に残る。
『ほどなく、お別れです』長月天音/小学館文庫/726円
文庫書き下ろしの新刊、シリーズ第4弾も絶好調!
この2月に同名の映画が公開に。原作である本書は現在4作まで出ているシリーズの第1弾だ。就活に苦戦中の大学生、清水美空は葬儀場「坂東会館」のアルバイトに復帰。美空の持つ霊感を見抜く僧侶の里見、難しい案件のプロである葬儀ディレクターの漆原らに支えられ、美空にもある"別れ"が訪れる。葬儀は区切り。区切りが人の心に及ぼす感涙のドラマに改めて打たれる。
文/温水ゆかり
※女性セブン2026年2月5日号



