昨夏は聖地のマウンドに立ったエースの高部
日本高等学校野球連盟(日本高野連)は1月30日に選考委員会を開き、今春のセンバツに出場する全32校(うち21世紀枠2校)を決定する。昨秋の明治神宮大会を制した九州国際大付(福岡)や歴代最多となる通算70勝を挙げている西谷浩一監督が率いる大阪桐蔭、あるいは横浜(神奈川)と沖縄尚学という昨年の春夏王者も選出が有力視されるなか、サプライズがあるとしたら3枠ある東海地区かもしれない。
当確は昨秋の東海大会で優勝した中京大中京(愛知)と準優勝の三重。そして最後の3枠目を争うのが東海大会準決勝第1試合で三重にコールド負け(2対10)した聖隷クリストファー(静岡)と、第2試合で中京大中京に4対6で敗れた大垣日大(岐阜)だ。無論、試合内容からすれば優勝校に惜敗した大垣日大の選出が順当だが、聖隷には昨夏の甲子園を経験した高部陸という大エースにしてプロや名門大学から引く手あまたの好左腕がいる。
それにしても不可思議な因縁としか言いようがない。
4年前となる2022年の1月、前年の秋季東海大会で準優勝しながら、落選したのが甲子園出場経験のなかった聖隷だった。当時の東海地区は現在より1枠少ない2枠だったが、選ばれたのは準決勝で日大三島(静岡)に敗退していた大垣日大だったのだ。
再び東海地区の最後の枠を争うことに
当時、東海地区の選考委員長を務めた鬼嶋一司氏は、成績上位の聖隷ではなく、大垣日大を選んだ理由として「個人能力の差」「投手力の差」「甲子園で勝てるチームかどうか」を挙げた。聖隷はエースをケガで欠きながらも、上村敏正監督が掲げる「頭とハートを使った野球」で東海大会を駆け上がったが、落選。甲子園出場を確信し、既に応援グッズなどの用意にも取りかかっていた聖隷の関係者を失望させただけでなく、長く高校野球を取材してきた筆者にもとても納得できる選考ではなかった。
大騒動に発展した当時、私は選考の過程に問題があったのではないかという強い疑念を抱き、鬼嶋氏をはじめとする当時の選考委員を訪ね歩いた。日本高野連の寶馨会長にも直撃取材し、選考の見直しと33校目の扉を開くという超法規的措置を求め続けた。聖隷に聖地への道が拓かれることはなかったものの、その後、激戦区の東海は3枠に増枠された。そして4年が経過した今春、再び東海地区の最後の枠を聖隷と大垣日大が争うことになったのである。
昨年の夏、聖隷は高部の奮闘もあって静岡大会を制し、春よりも先に夏の甲子園出場を決めた。決勝で静岡高校に勝利した直後、上村監督は私に対し、こう告げた。
「ようやくあなたの仕事も終わりましたね……」
あの落選以降、聖隷は静岡大会で好結果を残し続けながらも、甲子園にはあと一歩届かなかった。私は聖隷が甲子園に立つ日まで追い続けることを心に秘め、聖隷の試合に足を運び続けてきた。そんな筆者を慮った指揮官の労いの言葉であった。しかし、それは同時に、上村監督が自身に向けた言葉でもなかったか。
