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【小池百合子】に関するニュースを集めたページです。

「感染防止徹底宣言ステッカー」について会見する小池百合子都知事(時事通信フォト)
小池都知事肝いり「安心の虹のステッカー」は信用できるのか
 東京都がすすめる、用紙の上半分に七色の虹がデザインされた「感染防止徹底宣言ステッカー」。小池百合子東京都知事が会見で「100万枚を目指していきたい」「東京中を、安心の虹のステッカーで埋め尽くす」と述べていたように、普及は順調で、ほとんどの飲食店などの各種店舗、映画館や劇場などの入口に掲示されるようになった。このステッカーにはそれほどの威力があるのか。ライターの森鷹久氏が、声を潜めて虹のステッカーだけで簡単に信用してはならないとつぶやく飲食店で働く人たちの声を届ける。 * * * 真っ昼間から大勢の客で賑わう東京都目黒区内の飲食店。まだ陽も高いのに、アルコールで顔を真っ赤にしている客も目立つ。なぜ昼酒ができるのかと事情を聞けば「コロナで暇だから」とのこと。そんな大盛況の店内に、虹のモチーフが施された紙が一枚、ヒラヒラとはためいている。「感染対策ステッカー? ああ……経営者が持ってきたから貼ってあるだけで、よくわかりません」 店の従業員が興味もなさそうに答えてくれたこの紙、東京都が新型コロナウイルス感染防止対策として、事業者に掲示を呼びかけている「感染防止徹底宣言ステッカー」なるものである。感染防止対策に取り組んでいるということを示す手段として東京都が使用を呼びかけている「ステッカー」なのだが、効果のほどはどうなのか。大手紙都政担当記者はいう。「国との対立を鮮明化させている小池都知事肝いりの『都独自』の政策で、事業者は都のHPにある『感染拡大防止チェックシート』に記入し、このステッカーをダウンロードし印刷、店に掲示できるという仕組み。ステッカーがある店は対策をとっているから安全、ということをアピールするためのものですが、正直、感染防止対策を行なっていない店でも簡単に取得ができるため、本当に意味があるのかと疑問視されていました」(大手紙都政担当記者) 間も無く、ステッカーを掲示していた東京都江戸川区のフィリピンパブにおいて、新型コロナウイルス感染者のクラスターが発生した。区役所によれば、該当店舗はきちんと対策をとっていたと確認していたそうだが、マスコミも世間も「ステッカーに意味はあるのか」と騒ぎ出す始末である。「チェックシート」に倣い、感染防止対策を行いつつステッカーを張り出している東京都港区の居酒屋店店主・中間義和さん(仮名・50代)がため息交じりに話す。「対策チェックといっても手洗いやマスク着用の徹底、密を避け、ソーシャルディスタンスを取り、清掃消毒、利用者や従業員の体調管理を行いましょうという、ごく一般的なもの。大皿料理を避ける、回し飲みを避ける、相席を避ける、などといった飲食店に特化した対策もあります。最初は『お、対策されてんじゃん』なんて言いながら店にやってくるお客さんもいましたが…」(中間さん) 中間さんの店では、従業員は全員マスクとフェイスシールドを着用の上、レジ係はゴム手袋をはめ、客席には一人ずつ独立したアクリル製の衝立を設置。空気清浄機も導入し、とにかくやれる限りのことは全てやったと胸を張る。しかし……。「他店はどうかと見て回ると、なんら対策もしていない店が堂々とステッカーを張り出していました。ステッカーを張り出していたとある店では、おしぼりを要求したところ『ない』と。消毒液はあるか聞くとそれも『ない』と。感染防止対策をしているのかと聞くと、商売の邪魔だと追い出されそうになったんです」(中間さん) 東京都豊島区の飲食店では、さらに杜撰な方法によって「感染拡大防止徹底宣言ステッカー」が張り出されていた。同店の店長・原田亮一さん(仮名・30代)が声を潜める。「先日、オーナーからこれを貼り出せと言われて手渡されたのがこのステッカー、というより紙ですね。虹色のモチーフと感染拡大防止中の文字、その下にうちの店の名前が入っています」(原田さん) 原田さんの店は、スナックやガールズバー、カフェレストランなど数店を運営するオーナーの傘下にある。オーナーが店々をまわり、店長やスタッフに『掲示するように』と配っていたのが、件の「ステッカー」であった。ただ、原田さんに対策をした覚えはないという。「いやあ、正直消毒液とか高いですよ。うちはスタッフも客も若いし、大丈夫なんじゃないかって。コロナって、若い奴がかかっても平気だと聞きましたし、老人の客はいないんで関係ないかなって。ステッカーは一応貼っていますけど、だれも気にしていません」(原田さん) なんら対策を取っていなくとも、むしろ現場のことをほぼ何も把握していない人であっても、簡単にステッカーの申請、掲示ができてしまうという、正直、穴しかない施策に見えるとしか言いようがない。さらに呆れる実態が聞こえてきた。「知り合いのバーにも同じステッカーが貼ってありましたが、店の名前の部分が手書きでした。ホンモノは店名がしっかり印刷されているはずですからおかしいなと。聞くと、店名部分が空白のステッカーをカラーコピーしたものが配られたとかで、各々の店の名前を書いて店頭に張り出しているそうです」(原田さん) 都の職員による見回りもあり、事によっては休業要請に対する協力金の支払いにも影響してくる、ともされているが、このように「やりたい放題」なのが現状のようだ。前出の中間さんが再度訴える。「店を訪れる客も、この『ステッカー』を見るや否や、鼻で笑っていくようになりました。(対策を)やってない店とやっている店が同列に見られるのは本当に心外で、都にはしっかり見回りをしたり、制度を厳しくしてくれと言っていますが…」(原田さん) 真面目にやっているものがバカを見る、という政策は、コロナ禍においてもう何度も見てきた光景である。マスクをせずに外出する人、密を積極的に作る人、都道府県をまたぐ不要不急の行動をとる人…、こうした人々の存在の陰には、多くの「真面目にやっている人」が存在する。前者の存在があるから、やっている人で不幸にもウイルスに感染してしまった時「対策をしていなかったのではないか」などと非難される事態になっている。「ステッカー」の件に限らずではあるが、行政や国は、感染防止対策をやっている人とやっていない人に分けようとしたり、市民、国民の性善説的な感覚に丸投げするようなを政策が目立つ。まるで「私たちは言ったのに国民や市民がやってくれなかった」とでも言いたげな、無責任な姿勢である。「リーダーの不在」を痛感せざるを得ない日々が、あとどれくらい続くのか。
2020.08.19 07:00
NEWSポストセブン
台本通りの首相会見が繰り返されてきた(AFP=時事)
記者クラブ制度の大きな弊害 大手メディアは変われるのか
 リーダーの言葉が伝わってこない。新型コロナウイルスの感染再拡大が続き、国民が不安な日々を過ごす中で安倍晋三首相は沈黙を続けている。8月6日に広島市で約1か月半ぶりに開いた記者会見は16分で終わり、9日に長崎市で行った記者会見は質問2問で終了した。 6日の会見では、終了間際に質問を続けた朝日新聞記者の右腕を官邸報道室の職員がつかんだとして、朝日新聞社が「質問機会を奪う」と報道室に抗議する一幕があった。政権側が記者の質問を物理的に阻止することはもちろん批判されるべきだが、これまでの記者会見で予定調和の質問に終始してきたメディアの側にも、権力の横暴を招いた責任の一端があるのではないだろうか。 特にコロナ禍のような国難においては、リーダーが自らの意見を述べる記者会見が、為政者と国民をつなぐ場として重要になる。そこでメディアは国民に代わって指導者の言葉に耳を傾け、発言の内容を確かめ、チェックし、発言の意図や意味を国民に分かりやすく伝える役目を負う。そのためには、会見の場で質問を重ねて理解を深めるとともに、時には矛盾点や過去の発言との整合性などを厳しく追及して、リーダーの判断が適切かどうかを見極める必要がある。 だが日本のメディアがその役割を果たしているとは言い難い。日本独自の制度である記者クラブが、充実した記者会見を妨げているからだ。記者クラブに詳しいフリーランス記者の畠山理仁氏は、「象徴的なのは、安倍晋三首相の記者会見です」と指摘する。「首相会見での質問は、事前に首相官邸の記者クラブである内閣記者会を通じて官邸側に伝えられており、安倍首相の回答も事前に用意されたものがほとんどです。幹事社以外の記者からの質問にも、官邸側が情報収集して想定問答を作っています。つまり、首相会見は“出来レース”なんです」(畠山氏) 記者クラブとは、官公庁や自治体などを継続して取材するために新聞社やテレビ局、通信社など大手メディアの記者が中心になって構成する組織であり、これまでも取材対象との“密”な関係性がたびたび批判されてきた。「多くの記者クラブは役所内の一室を記者室として無償提供されており、そこを拠点に会見やレクなどに参加します。しかし、クラブに所属して長期間、行政の当事者と顔を合わせていると、“大家(おおや)”に気兼ねして、会見場の空気を悪くする質問ができなくなります。現場の記者は『いや、我々にも厳しい質問は可能だ』と言いますが、それが現実的ではないことは首相会見を見れば明らかです。一方で(クラブに所属していない)フリーランスの記者は当事者の機嫌を気にする必要がなく、予定調和でない質問をするので、有権者にとって有益な情報を引き出すことができます。だがこれまで多くの記者クラブはフリーランスが会見に参加することや質問することを認めませんでした」(畠山氏)記者クラブの閉鎖体質は地方でも 2012年に第二次安倍政権が発足して以来、フリーランスの記者は首相会見に出席はできても、質疑で指名されることはなかった。だが、コロナ禍への対応をめぐる2月29日の首相会見後、フリージャーナリストの江川紹子氏が「質問があります」と声を挙げたのに、安倍首相が無視したことがSNSなどを通じて拡散されて批判を浴びると、その後は首相会見でフリーの記者が指名されるようになった。 7月5日に投開票された東京都知事選でも、記者クラブの弊害が見られた。選挙戦前には、小池百合子・東京都知事のカイロ大卒業をめぐる学歴詐称疑惑などを取り上げたノンフィクション『女帝 小池百合子』(石井妙子著)が刊行され、テレビなどでも話題となっていたが、小池都知事の定例会見でこの本の内容について問う記者クラブの記者はいなかった。「都知事の会見を主催するのは、大手メディアの記者で構成する都庁記者クラブです。会見にはフリーランスの記者も参加できますが、会見の途中でどのメディアの記者がどの席に座っているかを示す『座席表』が小池さんの手元に届き、彼女はそれを見て、厳しい質問をしない旧知の記者を指名します。そうして指名されたクラブ記者が、世間で大きな話題となっていた学歴詐称疑惑について質問することはありませんでした」 そう語る畠山氏こそ、無風の都知事会見に風穴を開けた人物だ。6月12日、小池都知事の再出馬会見で畠山氏は、都知事と仲の良いフジテレビ記者の前に陣取り、その記者に向けられたと思われる指名を“横取り”してマイクを握り、こう問いかけた。「知事職は学歴や経歴は不問の職業だが、前回(2016年)の都知事選で選挙公報に『カイロ大学卒業』と書かれていた。その内容は候補者本人が責任を負う。小池さん自身が(卒業)証明書の原本を提示することは可能か」 小池都知事は、「卒業云々については、すでに何度もカイロ大学は認めていると申し上げてまいりました」などと返答し会見が終わったが、6月15日になって卒業証書と卒業証明書の「原本」を公表した。当時の様子を畠山氏が振り返る。「出席者の中には、『あれは畠山さんじゃなくて、フジテレビの記者が指名されたのではないか』という人もいました(苦笑)。ただ僕が質問するまで記者クラブの記者は学歴詐称問題について何も問わず、僕の質問後も追加で聞くことがなかったのは残念です。ちなみに小池さんがカイロ大学卒業証明書の原本を提示した会見には、フリーランスの僕は呼ばれませんでした。事務方からは『連絡ミスでした。すみませんでした』と謝罪されましたが……」 小池都知事による原本提示は、フリーランスの畠山氏が、都知事の会見で多くの人が知りたかったことを尋ねて、有権者に必要な情報がもたらされた好例である。参考までに、6月12日の会見で畠山氏の後に指名されたフジテレビ記者の質問は、「これまでの4年間の都政を一言や四字熟語で表すと?」というものだった。メディアが権力の監視を担うために 都知事選から2週間以上経った7月22日、朝日新聞系の書評サイト『好書好日』に朝日新聞都庁キャップのコラムが掲載された。そこで都庁キャップは都知事選前の学歴詐称疑惑を振り返り、「猛省しなければならない事実がある」として、こう記した。〈この疑惑に関する質問が初めて出たのは、6月12日にあった小池氏の都知事選出馬会見。しかも質問したのはクラブ加盟社の記者ではなく、フリーの記者だった。疑惑にとどまっていたとしても、事実関係の有無を権力者に尋ねる行為を怠った。記者クラブによる権力監視の機能が衰えたと指摘されても致し方ないことだと感じている。そして、それが小池氏圧勝を後押ししたとの批判が出てしかるべきだ〉 畠山氏の名前を記さず「フリーの記者」とするところに特権意識がうかがえるが、それは措くとして、今後は「猛省」を活かして有権者のための権力チェックに励んでほしい。それができないなら、記者クラブの特権を手放すべきではないか。 畠山氏らが記者会見のオープン化を求めるようになったのは、民主党政権が誕生した2009年。以降、記者会見のオープン化はなかなか進まなかったが、光明もある。 それが7月28日に開かれた鹿児島県知事の定例記者会見だ。もともと鹿児島県は、県知事会見を主催する鹿児島県政記者クラブ(青潮会)の規約により、知事会見にクラブ非加盟の記者は参加できなかった。フリーランス記者の有村眞由美氏の働きかけで数年前からクラブ非加盟記者の「出席」は認められるようになったが、「挙手・質問」は一切認められなかった。 だが7月12日に投開票された鹿児島県知事選で当選した塩田康一氏や鹿児島県サイドは、選挙期間中から、選挙後に開かれる知事就任会見でフリーランス記者の質問を容認する姿勢を打ち出していた。「この時点で、『規約ではオブザーバー参加しか認められていない』として、フリーランス記者が会見で知事に質問することを認めなかったのは青潮会だけでした。権力者に突っ込んだ質問をして有益な情報を引き出すのは記者の使命ですが、鹿児島では、そもそも任意団体に過ぎない記者クラブが、他の記者の質問する権利を奪っていたのです」(畠山氏) しかし、畠山氏や有村氏がSNSで逐次状況を伝えたことなどにより、知事選後に青潮会はクラブ総会を開き、フリーランス記者の質問を認める規約改正を行った。塩田康一知事の就任会見では事前申し込みをしなかったフリーランス記者と青潮会の間にひと悶着はあったものの、鹿児島に足を運んだ畠山氏は会見に出席して質問することができた。長い時間をかけて、ようやく扉が開いたのだ。 メディアが、国民の知る権利に応えようとしないリーダーと対峙し、責任ある言葉を引き出すために、多様な観点を持ちつつ物怖じしないフリーランスの存在は、有害ではなく役に立つはずだ。会見の場をオープンにして、記者クラブとフリーランスが切磋琢磨しながら、権力の監視という記者本来の役割を果たすことを、多くの国民が期待している。●取材・文/池田道大(フリーライター)
2020.08.16 07:00
NEWSポストセブン
小池都知事の新指標と“フリップ芸”に見る警戒感の甘さ
小池都知事の新指標と“フリップ芸”に見る警戒感の甘さ
 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、新型コロナウイルスの感染状況を評価するための東京都の曖昧な新指標について。 * * * 7月5日に行われた東京都知事選は、小池百合子都知事が歴代2番目の366万1371票を獲得し圧勝した。翌日の会見では、東京都の新型コロナウイルス感染防止に集中したいという2期目の決意を表明したが、東京都の感染者は16日に過去最高の286人を記録し、他県と比べて圧倒的に多くなっている。 こうした感染者数の増加に、菅義偉官房長官は11日「圧倒的に東京問題」と発言。これに対し小池都知事も、「圧倒的に検査数が多いのが東京」と噛み付き、さらに「Go Toキャンペーン」の実施時期を持ち出して「むしろ国の問題だ」と反撃した。 もともと仲が悪い、馬が合わないという噂が絶えないこの2人。非難合戦からは、「良い事は自分の手柄、悪い事は相手のせい」という「自己奉仕バイアス」を感じる。それだけでなく、食うか食われるかの政治の世界で、感染対策においても誰が相対的に評価されるのか、「どちらかが得をすればどちらが損をする」という「ゼロサム・バイアス」も関係しているように思えてくる。 個人間の争いが自治体レベル、国レベルへ飛び火しそうな状況に、メディアは「責任のなすり合い」「責任転嫁」と非難した。感染者数が一向に減らない東京都に対し、情報番組のコメンテーターたちも、小池都知事の論点のすり替えと感染対策への無策を問い始めている。だが、ゼロサム・バイアスが強いほど、張り合う2人が協力的関係になるのは難しい。 彼らの言いたい事はよく分かる。小池都知事の口からはキャッチーな言葉ばかりが飛び出てくるが、感染状況を評価するため6月30日に新たに公表した指標はあやふやだ。新指標では、コロナの感染状況などを7つの項目でモニタリングし、それをもとに4段階の警戒レベルで呼びかけるとしたが、数値基準もなく複雑で、よく分からない指標になっているのだ。 4段階の警戒レベルは色分けされ、段階が高くなるほどレベルも強まる。緑で示した1段階は「感染者数の増加が一定程度にとどまっていると思われる」、黄色の2段階は「感染拡大の兆候があると思われる」、オレンジの3段階は「感染が拡大しつつあると思われる」、赤で表した4段階は「感染が拡大していると思われる」である。 まず感じたのが、警戒レベルの警報に「思われる」という表現はアリなのか?という点だ。明確さを欠く表現にこの指標の曖昧さが見事に表されている。さらに曖昧だったのが、小池都知事が会見で示したお得意のフリップだ。 東京都では2日、107人の感染者が確認されていた。都知事は、警戒レベル3段階目にあたる状況であるという認識を示し、「感染拡大要警戒」というフリップを掲げたのだが、その色はなんと緑色。緑に白字のフリップである。3段階目はオレンジのはずなのに、なぜ1段階の緑なのか?ここはオレンジでしょう!とテレビに向かってツッコミを入れた。視覚的な色の効果はどこへやら、指標を示す側のいい加減さが見えてくる。 だが待てよ。緑は確か都知事のイメージカラー。こんな時まで“百合子グリーン”で存在感を強調するのか。さすがは都知事選で圧勝しただけのことはあるなと、妙に感心させられた。 15日のフリップはさらに混迷を極める。都知事は警戒レベルを最も深刻な「感染拡大警報」へと引き上げた。当然、フリップは4段階目の赤、東京アラート発令時の都庁舎やレインボーブリッジのような真っ赤な色かと思いきや、掲げられたのは下が黄色で上が赤の2色のフリップだったのだ。「なぜ???」しばらくの間、頭の中の大きなハテナマークが消えなかった。感染拡大の兆候があるのか、拡大しているのか、2段階と4段階の中途半端な色分けに、判断の迷いや警戒感の甘さが感じられた。 とはいえ、警戒感が甘いのは国も同じだ。多くの自治体がGo Toキャンペーンに反対するなか、政府は経済対策の目玉として推し進めようとしている。小池都知事もすかさず「ブレーキとアクセルを同時に踏むようなもの」と反発し、都民に向けて不要不急の都外への外出自粛を呼びかけた。運用見直しで東京は対象外とされたものの、いい加減にこうしたゼロサム・バイアスから抜け出し、足並みを揃えていかなければ、「圧倒的東京問題」と言われたたまま感染者数は増加し、第2波に飲み込まれることになるのではないだろうか。
2020.07.17 07:00
NEWSポストセブン
都知事選では約60万票を集めた(時事通信フォト)
都知事選大敗の小野泰輔氏、「熊本に帰りたい」の真意
 九州地方を襲った豪雨は各地に深い爪跡を残し、熊本県では50人以上の死者が確認された。「ボランティアとして1日も早く(熊本に)帰りたい」 日本維新の会の推薦を受けて都知事選に立候補した小野泰輔氏(46)は落選後の記者会見でそう語った。都知事選直前の今年6月まで熊本県副知事を務めた小野氏は61万票を獲得したものの、現職の小池百合子氏に大差で敗れた。 選挙戦終盤に“故郷”の豪雨被害が拡大し、落選会見では今後の拠点を問われ、「熊本です」と答えていた。熊本に戻って政治活動を行なうのかと思いきや、そうでもないようだ。小野氏の選挙事務所で広報担当を務めたスタッフはこう話す。「先のことは一切未定です。その時の流れに身を任せて、できることをやるというタイプですので、今は熊本の被害のことで頭が一杯で、先の話は考えられないのでしょう」 そんな小野氏の今後について、政治評論家の有馬晴海氏は、熊本ではなく「国政選挙で東京から立候補」というシナリオが有力と見ている。「小野氏は元々東京出身で、熊本の蒲島郁夫知事が東大時代のゼミの先生だったことから請われて熊本に出向き副知事になりました。一方で昨年都議から転身して参院議員となった維新の会の柳ヶ瀬裕文氏と小野氏は海城高校時代の同級生。東京で支持を広げたい維新の会からの意向もあり都知事候補となったようです。 大差で敗れたとはいえ、60万票は参院選なら当選ラインを上回る。短い選挙戦で知名度もない状態で票を集めたことにより、国政選挙で“地元”である東京からの出馬の目途が立ったのではないか」 とはいえまずは“もうひとつの地元”の熊本復興に尽力してもらいたい。※週刊ポスト2020年7月24日号
2020.07.14 07:00
週刊ポスト
営業自粛が解除された新宿区歌舞伎町(AFP=時事)
パチンコ店で清掃員に就く40代男性「私も夜の街の人ですか」
 新型コロナウイルスの感染リスクが高い場所としてすっかり「夜の街」という言葉はすっかりおなじみになった。3月30日に小池百合子都知事会見に同席した厚生労働省クラスター対策班メンバーが使用して以降、都知事や各自治体の首長が繰り返し使っているが、もともとは「夜間から早朝にかけての接伴飲食業の場」という限定した状態を指す言葉だという注釈つきで使われていたのが、広まるにつれ「夜の繁華街で仕事をする人たち全般」を指すようになってきた。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、夜の歌舞伎町でパチンコ清掃の仕事をしている40代男性についてリポートする。 * * *「え! 夜の街関連って、私も入るんですか?」 新型コロナウイルスの感染経路として小池百合子東京都知事が好んで使い、名指しされ続ける「夜の街」、その筆頭格の新宿で働くさまざまな「夜の街」の人に声を掛けては話を聞いてきたが、終電間際に声をかけた暮沼健一さん(40代・仮名)の仕事は意外なものだった。「パチンコ店の清掃です。もちろん本業はありますよ」 暮沼さんは上下スウェットにナイロンリュックと極めてラフ、近所の人かと思ったら通いで働いている人だった。暮沼さんは小田急線ということで小雨の中、しばし新宿駅までお話を伺う。「パチンコ店の清掃って人気あるんです。サクッとできるし大手は時給も高い。新宿はとくに高い」 都市部のパチンコ店の大半は清掃を外部業者や自店で直接雇用するアルバイトに委託している。暮沼さんもその一人で、週の大半、夜のパチンコ店で清掃をしているという。「パチンコ店のコロナ対策って凄いですよ、そこまでやるかってくらい完璧です。バイトなんで掃除業界に詳しいわけじゃないけど、あれだけやってるとこはないんじゃないかな」 開店中はもちろん、閉店後はとくに念入りな清掃を徹底するため息もつかせぬスピードと丁寧さが要求されるという。「忙しいほうが時間が短く感じていいです。仕事も慣れれば難しいことはありません」 時給を聞いて、なるほど人気のはずだと思った。私も閉店後の2時間程度ならやってみたい。実際閉店後清掃のみという清掃員もいるそうだ。「本業持ってるのが大半でしょうね。主婦や学生はもちろん、サラリーマンの副業組もいます」◆本業で助成金もらいましたが、微々たるものでした 暮沼さんによれば本業のある人のほうが採用されるのでは、という。ダブルワーク前提のアルバイトなので、あくまで生活の足しとして働いてくれる人を求めているそうだ。「休憩時間も合わないし事情もいろいろなんでお互い親しくはなりませんけど、自営業で少しでも日銭が欲しいとか、サラリーマンの内緒の副業とか、年金の足りない分って高齢者もいますね」 なるほど、時給が高いと言っても清掃時間は短いため、まとまった金にはならない。店によっては時給1500円以上出すところもあるそうだが、全体としては僅かな収入だ。それでも欲しい人が集まっている。実際、昨今はコロナの影響で残業が無くなったり、リモートワークで手当が減ったりでアルバイトを始めるサラリーマンも多い。「本業とダブルワークでそれなりの収入にはなりますからね、ありがたい仕事です」 で、暮沼さん自身はなぜこのアルバイトをしているのか。「私、フリーのデザイナーなんですよ、小さな広告のデザインとかやってます」 どうやら「出版・広告・印刷」という括りのお仲間だったようだ。かつてはコミックのデザインなども手掛けたこともあるそうだ。最近は折込チラシやポスティングのチラシが中心だという。「ただでさえ仕事が減ってたのがコロナで完全にポシャりました。チラシなんか絶望的ですよ」 コロナによる自粛騒動の中、商店はチラシを控えるようになった。スーパーも特売チラシなど控えているし、地域の新聞折込みなどは壊滅状態、ポスティング広告はそれなりに回復したが、単価が安い上に零細商店などは手作りで対応しているのでデザイナーに頼む余裕はないという。「いまさらだけど、紙にこだわったら駄目ですね。でも紙のほうが好きなんです」 紙媒体に固執した私の仲間も多くは消えた。私も出版社退職後、2010年代はソーシャルゲームのシナリオや電子コミックの原作、編集で食いつないだ。小さな出版業界の話だが、その変遷は「コロナ後」の社会と仕事にも同じことが言えるだろう。コロナによって旧来の職業形態は大きく変わる。それに対応できなければアフターコロナを生き残ることはできない。「助成金も貰いましたが、元々そんなに売り上げがあったわけじゃありませんから微々たるものでした」 当たり前の話だが、あくまで前年比なので以前から稼げてなければ少ないのも仕方がない。それにしても暮沼さん、背に腹は変えられないとはいえコロナ騒動の「夜の街」で働くことに抵抗はないのか。「あまり気にしてませんね、夜の街ってひとくくりなら、私も言われてみればそうですね、どうしてもお水の人しか想像できないし、私がそうだと言われるとピンときませんね」◆批判する連中はお金をくれませんから クラスターのやり玉に上がっているホストクラブやキャバクラもひっくるめて「夜の街」と小池都知事は連呼している。しかし新宿や池袋を「夜の街」とくくるのは少々乱暴ではないか。例えば私の行きつけで言えば池袋の大手アニメショップは夜8時まで営業しているし、新宿の大手同人ショップに至っては夜中の11時までやっている。小池都知事の言葉だけを取るならオタク店員も「夜の街」の人々だ。そんな特別な例を出さないまでも、暮沼さん含め新宿や池袋には水商売以外にも多種多様な業種の人々がそれぞれの事情と都合で働いている。むしろ全体で見たら水商売は目立つだけで少数派だろう。とんだ風評被害だ。「私も夜の街の人、だとしたら電車やばいですね、私だってコロナかもしれませんし、差別されるんですかね」 冗談めかして笑う暮沼さん。そうなのだ。特定業種や地域をあげつらっても無用な分断と疲弊を生むだけなのだ。コロナウイルスはいまだに解明されていない未知の疫病である。国も自治体も迷走するのはわからなくもないが、そのはけ口を「夜の街」とひとくくりに押し付けるのはどうなのか。この取材後の東京都の感染者数は9日に224人、10日は243人と過去最多を更新し続けた。そのうち「夜の街」関連は3割を超えており依然として多いが、それ以外の感染場所や「感染経路不明」が上回っている。「私、今年からこのバイト始めたんですけど、すぐコロナで店が休業になっちゃったんです。パチンコ店が休んだり叩かれたり、みんな忘れてるでしょうけど」 あの自治体やネット民によるパチンコ店攻撃は何だったのか、いまとなっては不可解だが、大衆とは都合の悪いことを示し合わせることなく集団で忘れることができる団結本能の集合体である。それは歴史が証明している、今後も続く普遍的真理である。それがいまは「夜の街」なだけだ。「でも食べてかなきゃしょうがないし、嫁も体が弱いのでかわいそうです。子どもがいないのは幸いですが、人それぞれの事情がありますからね、デザイナーとしての仕事が全然ないわけじゃないですから、夜の街とか言われてもこのバイト続けますよ」 デザイナーとしての仕事は孫請けながら細々と続いている。6月に入り新規の仕事も紹介で入ってきたそうだが、生活の不安を考えるとパチンコ清掃の仕事は辞められないという。「批判する連中はお金をくれませんからね、がんばります」 そう言って笑う暮沼さんと新宿駅構内で別れた。以前よりは終電の混雑は緩和されているが、それでも人の波は戻りつつある。深夜の新宿駅、全員ある意味「夜の街」の人々だ。水商売の街で働く暮沼さんたちも電車に乗る。しゃべってないから電車は大丈夫なのか、みなそう思いたいだけなのか。もっとも電車でクラスターが起きてもわかるはずもないだろう。しゃべるから感染するのだ、電車内はしゃべらないというが、会社はどうなのか。私は緊急事態宣言中も数百人規模で密集していた大手コールセンターを知っている。狭い会議室にすし詰めで会議を繰り返す中堅IT企業も知っている。なぜクラスターが起きないのか ―― 結局のところ運任せなのか。そして「夜の街」の次の批判の生贄はどこなのか。先にも述べたとおり、200人を超え最多を記録し続ける東京都の新規感染者のうち「夜の街」は3割を超え、そろそろ誤魔化しは効かなくなってきた。 暮沼さんは「夜の街」の人で、取材者の私もある意味「夜の街」の人かもしれない。新宿は今日も飲み歩く人で賑わっていた。「夜の街、控えて」としれっと言われても緊急事態も営業自粛も解除されているし数値基準すら撤廃された。10日からは予定通り5000人規模のイベント実施も可能になる。自粛と経済とを天秤にかけて経済を選んだことは明白にも関わらず、特定地域や業種をあげつらうやり方はやはりおかしい。国は一貫して「直ちに緊急事態宣言を再び発出する状況に該当すると考えていない」という認識を変えていない。このまま感染のみでそれほど死者につながらないのなら、「コロナとともに生きる」選択は大多数の国民のコンセンサスではないか。暮沼さんもバイトをやめないだろうし、夜の街のみなさんも仕事をやめることはないだろう。いや、やめられない。コロナ禍、僅かなお金でも欲しい人はたくさんいる。コロナで死ぬより経済で死ぬほうが怖いのだ。 そんな人々を含め「夜の街」とひとくくりにする都知事。暮沼さん始め、ありとあらゆる業種の都民が働く大都市の「夜の街」のどれだけの実態を知ってそのフレーズを撒き散らしているのか、国の方針に従って経済を取ったはずの都知事が疫病の不安につけこみ分断を煽る行為、私には理解できない。●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で第14回日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年7月『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー。12月『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)を上梓。
2020.07.13 16:00
NEWSポストセブン
支持と批判が相半ばする存在だった(時事通信フォト)
鳥越俊太郎氏と舛添要一氏が政治家のコロナ対策アピール批判
 感染症などの有事にこそ、政治家の力量が問われるものだ。しかし、安倍晋三・首相や小池百合子・東京都知事、吉村洋文・大阪府知事については、新型コロナ対策を打ち出すことで「自らの“アピール”に利用した」との指摘もある。元厚労相で、前東京都知事の舛添要一氏が語る。「2月末に鈴木直道・北海道知事が独自に緊急事態宣言を発令して評価されたので、安倍首相も真似しようと思ったのでしょう。そうではなく、PCR検査数の拡充や医療従事者用のマスク、防護服の確保などに力を入れるべきだった」 ジャーナリストの鳥越俊太郎氏も、安倍首相と小池都知事の“アピール”についてこう指摘する。「安倍首相は給付金関連で10兆円以上のおカネをバラ撒きました。経済補償があって“助かった”と思っている人もいるかもしれないけど、元手は全て税金です。バラ撒いたぶんは後に税金を支払うかたちでツケが回ってくる。増税しても足りないぶんは国債を発行して賄っている。緊急事態宣言で経済的に困窮した人が多いタイミングで、自分は懐を痛めずに税金をバラ撒いていい顔をしただけです。 小池都知事も、東京アラートという不明確な基準を打ち出し、レインボーブリッジや都庁のライトアップで、マスコミを注目させることに重きを置いた。都知事選を前にして自分の“選挙活動”に終始したように見えます」 小池都知事は「夜の街」「パチンコ店」など感染リスクの高いスポットを名指ししたが、舛添氏は疑問を投げかける。「『夜の街』という漠然とした対象を批判することで、夜間に営業する飲食店などの全てが悪いかのように一括りにしていますが、それによって従業員や経営者の生活を脅かしています。営業停止命令でなく、自粛要請を出すだけなので、自粛警察をする人も出てきます。 感染リスクが高いと指定するなら、こうした中途半端な指定や情報公開ではなく、歌舞伎町の全店舗の従業員にPCR検査を実施して、全員が陰性の店には証明のステッカーを貼る。そして陽性者が出た店舗だけ2週間休業してもらうほうがいいと思います。お店にとっても、再びいつ自粛要請がくるか分からない状況よりも、証明ができたり期限付きの休業のほうがいい。休業した店舗には無利子の貸し付けを行なうなどすれば、廃業する店舗も減らせるうえに、感染対策としても有効でしょう」 対策の実効性よりも政治家の支持率が優先された──そう見られているようだ。※週刊ポスト2020年7月24日号
2020.07.13 07:00
週刊ポスト
都知事選、ある泡沫候補の政見放送 笑ってはいけなかった箇所
都知事選、ある泡沫候補の政見放送 笑ってはいけなかった箇所
 ネット世論なるものが認知されるにしたがって、選挙の性質も様変わりしている。コラムニストのオバタカズユキ氏が都知事選を振り返った。 * * * もう1週間が経つのか。あっけなく終わった東京都知事選だった。選挙期間中は緊急事態宣言こそ解除されていたが、まだまだ自粛ムードでピリピリしているコロナ禍の最中。後半、それまで落ち着いていた東京の新規感染者数がまたぞろ急増したことで、「もしや批判票が動くか」と数ミリだけ思った。けれどもそんな私の期待など何処吹く風で、小池百合子が得票数366万票、得票率59.70%で圧勝した。毎評判通りだった。 小池知事のコロナ対応は決して誉められたものではなかったと思うのだが、ヒトは非常時の変化を嫌うということだろうか。対抗馬としてロクな候補がいなかったという意見もある。たしかに2位となった宇都宮健児の左翼ぶりは古臭すぎてもううんざりと思ったし、3位の山本太郎はいまだに色物として見られていた気配がある。いずれにせよ、一強他弱すぎて盛り上がりようがなかったことは確かである。 ただひとつ、この選挙で私が気になった候補者がいる。トランスヒューマニスト党の後藤輝樹(ごとうてるき)という37歳の候補だ。ご記憶に残っているだろうか。 政見放送での紹介は、「皇歴2642年12月8日降臨爆誕、9連続落選、輝樹塾塾長、輝樹教教祖、カリスマ、革命家、愛国者、救世主、神様、変人などなど」というものだったが、都知事選の泡沫候補の中によくいる完全に頭のネジが飛んじゃっている人、では、たぶんない。ネットでけっこう話題になったのは、そのNHKの政見放送の内容ではあるものの、話が支離滅裂で、電波が飛びまくりとか、そういう類のものではない。 以下、政見放送をちょっと再現してみる。 まず後藤は、満面の笑みで視聴者に向け両手を振ったかと思うと、黒いセーターを脱ぎながら、〈世間がなんぼのもんじゃい。常識がなんぼのもんじゃい〉と喋り始め、次に「ちんこ主義」と胸に書かれた白Tシャツを脱ぎつつ、〈NHKがなんぼのもんじゃーいー!〉と言い放った。 そしてズボンを脱ぎながら、〈国家権力~、国家権力~、国家権力クソ食らえ~〉と歌い、こんどは紙おむつ一丁の姿で机の上に立ちあがり、〈生レバー、食べるよ~ぅ、国家権力クソ食らえ〉と後ろを向いて紙おむつのおしりを突き出すと、ちょうと肛門があるあたりの丸い大きなシミを見せた。かなりリアルなお漏らしうんこのような茶色いシミだった。 なんだ、これ……。夜中のNHKで初めて彼の存在を知った私は、当初、これを自分の中でどう位置づけていいかわからず、戸惑った。 観ているこちらを笑わせにかかっているのはわかるのだが、クスッともプッとも来るわけじゃない。かといって、前述したように電波系ではなさそうで、ヤバい感じもない。話の内容はいちおう筋が通っているのだが……どこか不快だ。 後藤候補曰く、〈私が今回の都知事選に立候補した理由は、3年前のR1グランプリ、アキラ100%さんの優勝がきっかけです。4年前の都知事選、私の政見放送、「ちんちん」と発言したことで放送禁止になってしまいました〉と。〈服を着ていた私が禁止で、ふるちん全裸のアキラ100%が地上波で放送、おとがめなし〉なのは理不尽にすぎるのでは、と。 ついには、机の下で紙おむつまで脱いでしまい、こうも言っていた。〈私の政見放送は「きんたま」すら放送禁止用語にされました。なのにNHKさん、玉袋筋太郎などという世にも奇妙な名前のタレントにレギュラー番組を与え、NHKで玉袋を露出させています。ビートたけしの玉袋は放送したくせに、後藤輝樹の玉袋は放送禁止。それから、まんぺこー、も放送禁止になりました。(中略)私が作った造語です。なのにNHKさん、『マンピーのG☆SPOT』などという明らかにいかがわしいタイトルの曲をジャニーズ事務所の二流とも三流ともつかないタレントにNHKで歌わせています。桑田佳祐のマンピーは放送したくせに、後藤輝樹のまんぺこは放送禁止。こんな不公平なことがあっていいのでしょうか〉 4年前の2016年に立候補した際の都知事選の政見放送をチェックしてみると、たしかに無音削除だらけだった。音が消された部分は、ほぼすべて男性器と女性器のさまざまな俗称。お前は下ネタ好きの小学生か!とつっこみたくなるほど繰り返し連呼し、それらがいちいちカットされている。ぜんぶで80カ所以上あったという。 なぜ、そんなに性器を連呼したのか。それについては、白Tシャツにあった「ちんこ主義」に基づくもののようだが、さほど深い話には思えないので説明は割愛する。ただ、今年の政見放送の後藤候補はいたって真面目に、こんなふうにも言う。〈実を言いますと、私は下ネタは嫌いです。家族と見ていて気まずい思いをしたことを、私も何度もあります。しかし、これは政見放送です。ふざけてやっているわけではございません。命をかけて真剣にやっております。日本社会に漂う閉塞感、無関心、無責任。ほんの少しでも政治や選挙に興味を持ってもらいたい。なので、あえて道化を演じています〉 やっていることは今回だって放送禁止スレスレ。けれども、根っこは意外に真面目だからということだろうか。選挙期間中、ネット上では基本好意的に話題の人とされていて、開票結果でも全22名中の8位、得票数は約2万2千票だった。あのNHKをぶっこわせの立花孝志候補の半分近くの票を獲得。『週刊実話』ではあるが、〈今後につながる出馬だった〉と評価するマスコミまであった。でも、そうやって好意的に見るのって、どうなの? ちょっとおかしくないか? 後藤輝樹のオフィシャルサイトを見ると、その政策提言や思想は極右と重なるようなところあるのだが、それは横に置く。純粋に、上記した今回の政見放送のみでの評価なのだが、私の感覚では、これは問題大ありだと思う。なぜ炎上しなかったのか、炎上して当然ではないだろうか。 問題は何か。それは紙おむつである。加えて、お漏らしうんこ状のシミをつけたことである。なにが言いたくてそんなことをしたのかは不明なのだが、ただ単純にウケを狙ったのだろう。その浅はかさが、実に残念だ。 なぜって、どうして想像できなかったのだろう。大人の紙おむつっていうのは、仕方なくするものだ。人によっては、自分の尊厳を大いに傷つけられながら、しかし、病気や障害などでそうするしかないので紙おむつをはく。 要介護の高齢者とてそうだ。認知症の人でも、紙おむつに抵抗を覚える人は多い。やはり尊厳に関わるからだ。そこに「お漏らし」しても、ケアスタッフに隠してしまう人も少なくないと聞く。他の誰かに下の世話を喜んでしてもらう人などいないからだ。そうなってしまった自分というものは、なかなか受け入れがたいのだ。 当事者の家族だって複雑な気持ちである。高齢だから仕方ない、と簡単に割り切れるものではない。語弊のある言い方かもしれないが、紙おむつを使うには、壊れていく親を直視する必要がある。自分を育ててくれた親という像を、別のものに描き変える必要がある。それは悲しく、辛い経験だ。 政見放送を見た人の中には、当事者もその家族も大勢いたはずである。後藤候補はほんの少しでも、そういう目線のあることを想像しただろうか。していないから笑いネタにできたのだろう。若いから仕方ないか。否、その程度の想像力のない人は、泡沫候補だろうが政治家を志してはいけない。 公職選挙法には、「NHKおよび基幹放送事業者はその政見をそのまま放送しなければならない」という決まりがある。また、「他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ若しくは善良な風俗を害し又は特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をする等いやしくも政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない」との制限もある。 紙おむつもシミも、法的制限にはひっかからないだろう。でも、ダメなのだ。どうしても裸になりたかったのなら、それこそアキラ100%のように、お盆でも持ってふるちんで自分を表現すれば良かったのである。
2020.07.12 07:00
NEWSポストセブン
小池知事の父の夢支えた浜渦元副知事「百合ちゃん幸せか?」
小池知事の父の夢支えた浜渦元副知事「百合ちゃん幸せか?」
 小池百合子氏(67才)が東京都知事に再選された。そのルーツは“政治好き”だった父の勇二郎氏を抜きには語れない。石油関係の事業を営んでいた1922年生まれの勇二郎氏は、石原慎太郎氏が1968年の参院選全国区で出馬すると、関西地区の責任者となってトップ当選させ、自分も1969年の総選挙に旧兵庫2区から立候補する。しかし結果は惨敗した。小池氏が甲南女子高校2年のときだ。このとき、勇二郎氏の選挙を手伝ったのが、後に自民党から選挙に出て防災担当相となる鴻池祥肇氏と、石原氏の秘書から副知事を務める浜渦武生氏だった。 小池父娘の貴重な実像を知る浜渦氏だが、築地移転問題をめぐって小池氏に厳しい追及を受けたこともある。これまで沈黙を貫いてきたキーパーソンが、ついに重い口を開き、小池都知事について話し始めた。●聞き手/藤本順一(政治ジャーナリスト)──今回の圧勝をどう見ますか。浜渦:入れる対象が彼女しかいないのだから、勝って当然でしょう、自粛選挙なのに、コロナ対策で彼女だけ毎日テレビに出続けられる。政務と言いながら実際には選挙活動ができるわけですから。ただし、彼女の都政でいったい何が変わったのか。築地の移転問題にしても、煽って煽った結果、何も変わらなかったじゃないですか。──彼女との関係は50年以上前に遡る。浜渦:彼女はかつて、私が「家に居候をしていた」と言っていましたが、それは嘘。私は関西大学の学生だった頃、「日本の新しい世代の会」という石原さんの政治団体で学生部のリーダーをしていた。 関西担当の専務理事をしていたのが父親の勇二郎さんで、1969年に旧兵庫2区から衆院選に出るというので、石原さんから「彼には何もないみたいだから、君が学生を集めて手伝ってくれよ」と言われたんです。選挙事務所すらないので、その団体の尼崎支部長だった鴻池祥肇さんの事務所を使うことになり、私はそこで寝泊まりするようになった。プレハブがあって、私が集めた学生たちもそこに詰めていました。 あの頃の勇二郎さんは中曽根康弘さんに心酔していて、息子の勇くんに一時期「康弘」と名乗らせていたほど。それなのに選挙になって中曽根さんに支援を頼んでも全く相手にもされず、頼れるのは石原さんの人気だけでした。私が車上運動員、いわゆるカラスをやっていると、勇二郎さんはこう言えと。「石原慎太郎! 石原裕次郎! 小池勇二郎!」って(笑い)。 呆れたことは何度もあります。中曽根さんが海軍少佐だったのに憧れて、勇二郎さんは「自分は中尉だった」と言うんです。でも、私の父も偶然、海軍学校から終戦の間際にようやく海軍大尉になっていたので、「父より10歳も年下で海軍学校も出ていないのによくなれましたね」と言ったら、ケッケッケッと独特の笑い方をしながら、「君ね、嘘も100回言えば本当になるんだ」と。そういう人なんです。──その頃、甲南女子に通っていた百合子さんとは?浜渦:選挙事務所に来ていたのは兄の勇くんだけで、1歳年下の彼とは国家や政治について何度も議論しましたが、5歳年下の百合ちゃん、当時のことなのでそう呼びますが、彼女とはそんな話をしたことがない。芦屋の小池家は線路近くにあって、実際には「芦屋のお嬢さん」と呼べるほどの家ではなかったんですが、お母さんは彼女をそのイメージで育てたかった。 彼女自身が言うように、百合ちゃんの顔にはアザがありますが、実はお母さんの顔にも同じようにある。お母さんはそのことを気にしていたようで、だからこそ特別、娘を大切にしていた。当時の百合ちゃんはほんわかした印象で、その後の政治家・小池百合子とは全くの別人です。◆「百合子の応援をしてくれ」──結局、勇二郎さんは落選します。浜渦:選挙戦の最終日、勇二郎さんと鴻池さんと私の3人で、尼崎のガード下の焼き肉屋に入った。勇二郎さんはタスキを掛けたままで、まだ周囲に頭を下げている。鴻池さんと「もう止めましょう」と言いましたが、さすがにあれは感心しました。 ただ、勇二郎さんは「選挙のせいで会社が傾いた」と言っていましたが、実際には会社が傾いてきたから選挙に出たんです。勇二郎さんがやっていた三昌物産という貿易会社に、衆院議員になった佐藤文生さんがいたことがある。 その文生さんが運輸政務次官になった時に、「自分も当選したら通産政務次官になれる。そうしたら三昌物産がアラブの石油を一手に引き受けて、日本一の会社になる」と豪語していました。それが政治ですかと意見したら、「ポリティクス・イズ・ポリティクス、ビジネス・イズ・ビジネス」と言われました。政治とビジネスは分けていると言いたかったんでしょうが、私には政治を利用しているとしか思えなかった。──選挙後は交流がなくなったんですか。浜渦:その後、会社が潰れてエジプトに行ったと聞きましたが、たまに連絡が来ました。石原さんの事務所にいたときに電話があって、「百合子をカイロ大学に通わせるんだ。ただしアラビア語が全く分からないから、向こうの教材を全部日本語に訳して、丸暗記させる」と言っていました。勇二郎さんはビジネスでも政治でも挫折した経験から、息子の勇くんにはビジネスでの成功を託し、娘の百合子さんには政治家としての成功を託すようになったのではないでしょうか。 勇くんはその後、ODA関連の仕事をするようになるし、百合子さんも日本にいたときはお母さんの影響が強かったのに、エジプトに行ってからはお父さんの影響が濃くなって、政治家を目指すようになっていった。彼らがあちらで体験した苦労が、より絆を強くしていったのでしょう。──彼女とはいつ再会したんですか。浜渦:キャスターになったあと、一緒に番組をやっていた竹村健一さんは石原さんと仲が良かったから、その縁で会いました。その後しばらくして、今度はお父さんが訪ねてきて「百合子の応援をしてくれ」と言う。参議院選に日本新党から出馬するから、応援してくれと。しかし、私はその頃、自民党の鴻池さんのお手伝いをしていたので、「私は鴻池さんに恩義があるからダメです」とはっきり言いました。──なぜ小池百合子本人が頼みに来ないのか。浜渦:私からしたら、小池百合子はお父さんが作り上げたものですから、お父さんも同体のつもりだったんでしょう。勇二郎さんの考えは、今利用できる、もっと言えば騙せる人に近づくということ。私はそう思われたから、彼にとって必要になったときだけ連絡が来た。それは彼女も同じです。 彼女と私に関して、過去の因縁などと言う人がいるが、彼女は常に過去を否定し、今がどうあるか、どうすべきかだけを考える人。それもお父さんから徹底的に教え込まれたものだと思います。──1992年の参院選に当選した彼女は、翌年には衆院選に鞍替えし、鴻池さんのいる旧兵庫2区から出馬。彼女は土井たか子に次ぐ2位で当選し、鴻池さんは落選します。浜渦:本当にひどいと思いました。鴻池さんの落胆は大きかったでしょう。ただし、鴻池さんにも私にも、3人してガード下で焼き肉を食べた思い出はある。だからこそ鴻池さんは小池家について最期まで黙っていたし、私も語ってこなかった。◆石原家への恨み──その後、自身も都知事になった彼女の標的になりました。浜渦:前任者の活動を全否定するのが新しい人の在り方だし、過去の否定こそが小池家の教えです。まず石原慎太郎がターゲットにされ、そのあとに一番いじめやすい私が選ばれたんでしょう。 彼女には慎太郎さんではなく都連会長だった石原伸晃さんに対する恨みつらみがあった。都連の会合に呼ばれないと。伸晃さんに言わせると彼女が来ないということになるが、2人の関係が悪かったから、都知事になったあとに石原批判が始まったんです。彼女の標的は、慎太郎さんだけでなく石原家全体だった。──かつては石原さんから、「小池さんを後継に」という話もあったと聞いています。浜渦:実際に石原さんが辞めた後にその話はありました。石原さんから直接「どうか」と言ったと。百合子さんからも聞きました。しかし彼女のほうから断わったと。 実は彼女が都知事選に出馬する前に、私に電話があったんです。選挙を手伝ってほしいというお願いだったようですが、電話に出ませんでした。私は石原さんに恩義がある。石原さんがOKと言えば手を貸したでしょうが、許可がないのに勝手なことはできません。 その都知事選で石原さんは百合子さんを「厚化粧」と言って批判を浴びましたが、アザのことは知らなかったんです。──2013年に勇二郎さんは亡くなり、彼女の過去を知る人はいまやほとんどいません。現在の彼女をどう見ていますか?浜渦:メディアは彼女の言うことが虚偽だとしても、改めようとしません。言うことが少しずつ変わっていっても、過去のことを知らない若い記者たちは誰も指摘しない。 その結果、彼女の言いたい放題になってしまい、イメージが膨らんでいく。今の彼女は、メディアが作り上げた“虚怪”だと思います。だからこそ、そろそろ過去のことも含め話さなければと思うようになりました。 彼女には政治家としてやりたいことなどなく、ただ目の前の小石を拾い上げているだけに見えます。近くで支えてくれる人もいないのでは。果たして今、百合子さんは幸せなんでしょうか。【プロフィール】浜渦武生(はまうず・たけお)/1947年生まれ。石原慎太郎氏、鴻池祥肇氏の秘書を経て、東京都副知事、東京交通会館副社長、東京都参与を歴任した。2017年、築地市場移転問題に関して百条委員会から偽証罪で告発されたが、その後不起訴処分となった。※週刊ポスト2020年7月24日号
2020.07.12 07:00
週刊ポスト
安倍首相が後継者選び失敗 自民党「四分五裂」相関図
安倍首相が後継者選び失敗 自民党「四分五裂」相関図
「次の総理」は誰になるのか──歴代最長政権となった安倍晋三・首相にとって“後継者選び”は何よりも「求心力」を維持できる道具だったはずだ。しかし、コロナ対応で安倍首相の重用する後継候補が何の成果も挙げられず、一気に「遠心力」が生まれ始めた。“だったら俺にやらせろ”──。都知事選を圧勝した小池百合子氏が国政復帰を見据えるなか、自民党は四分五裂の状態に陥りつつある。 その最大の原因は、安倍首相が「後継者選び」に失敗したことだ。歴代最長政権を誇る安倍首相にとって、「後継者選び」は自らの権力維持の重要な手段のはずだった。 かつて中曽根康弘・首相(在任5年)は3人の後継者を競わせ、最後は「中曽根裁定」で竹下登氏を後継総裁に指名する力を維持した。小泉純一郎・首相(在任5年5か月)も安倍氏を後継者として養成し、総裁選で圧勝させた。 安倍首相が後継者に据えようとしてきたのが岸田文雄・政調会長だ。面長の顔に顎を隠せない小さなアベノマスクを国会でも議員会館でも着用し続けて首相に“忠誠”を示していることで知られる。首相は自分に決して逆らわない岸田氏であれば、退陣後も「院政」を敷けると考えていた。 ところが、その判断は裏目に出た。自民党内に“ボロ神輿は担げない”という不満が広がったからだ。岸田後継に最も反発したのが菅義偉・官房長官と二階俊博・自民党幹事長だとみられている。「菅さんは岸田さんと同じ派閥にいたことがあるが、“何がやりたいのかわからない”と政治家としての評価は最低レベルで、“発信力がないから選挙に勝てない”と総理にふさわしくないと考えている。二階さんも同じ党三役として、岸田さんの調整能力の乏しさに失望している」(自民党役員経験者) 安倍首相が昨年の内閣改造でその岸田氏を幹事長に起用して後継レールに乗せようとしたときも、二階―菅ラインが阻止。以来、2人と首相との溝が深まっている。 コロナ対策の給付金でも岸田氏は力量不足を露呈した。首相と会談して所得が減少した世帯への「30万円」給付を決めたと胸を張ったものの、二階氏や公明党に「一律10万円」給付へと一晩でひっくり返された。それを誤魔化そうと〈自民党としても当初から訴えてきた10万円一律給付を前倒しで実施する〉とSNSで発言して恥を上塗りする始末だった。政治評論家・有馬晴海氏が語る。「岸田氏は外相や自民党政調会長など要職を歴任してきたが、これといった実績は残していない。政界の名門家系の3世議員で宮沢家の親戚というだけで派閥の会長になった。俗に存在感がない人を毒にも薬にもならないというが、政治家の場合は国民にとって毒にしかならない。国難の中でリーダーシップを取れる人物ではないという評価は政界に広く定着している」“その程度の人物”が総理・総裁候補とあって、「岸田を担ぐならオレが」と首相のお膝元の最大派閥・細田派では、西村康稔・新型コロナ担当相、稲田朋美・幹事長代行、下村博文・選対委員長、萩生田光一・文科相らがポスト安倍に意欲を見せ始めたのだ。 西村氏が新型コロナ対応で出番が増えて知名度を上げると、下村氏と稲田氏はコロナ後の社会を考える「新たな国家ビジョンを考える議員連盟」を設立。“初の女性首相”を目指す稲田氏は他にも「女性議員飛躍の会」や「伝統と創造の会」などを主宰して勢力拡大に動いている。3人とは派内でライバル関係にある萩生田氏も意欲ありと見られている。 第二派閥の麻生派からは河野太郎・防衛相が「岸田後継」に反旗を翻した。新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備中止を表明し、「次は出る、と言っている」と事実上の総裁選出馬を表明。「岸田支持で派内を一本化したい麻生さんは出馬を止めるだろうが、河野さんは聞く耳持たない」(麻生派議員)という。 安倍首相が後継者の人選を見誤ったことで、細田派、麻生派の主流派から我も我もと“自称後継者”が出現して政権に遠心力が働いている。 それだけではない。コロナ危機は総裁レースの様相を一変させた。岸田氏に次いで首相の覚えがめでたい総理候補とされていた加藤勝信・厚労相はコロナ対策が後手後手に回って評価を下げ、茂木敏充・外相も外交場面そのものがなくなって存在感を失い、レースから脱落しかかっている。◆石破総理だけはマズい… それでもなお、安倍首相は岸田後継を諦めていないとされる。理由は「石破さんだけは絶対に総理にしたくないから」(安倍側近)という。 ポスト安倍では岸田氏が地盤沈下する一方で、首相の「政敵」である石破茂・元幹事長が最右翼に浮上し、新聞の世論調査の「次の総理にふさわしい人」で他に水をあけて1位に位置している。 官邸が警戒しているのは総理・総裁選びと検察の動きが連動することだ。河井克行・前法相と案里夫妻の選挙買収事件をめぐる東京地検特捜部の捜査は、自民党本部から夫妻に流れた1億5000万円の“買収資金”の流れの解明を目指している。ターゲットは自民党首脳部だ。 公選法では、「買収行為をさせる目的をもって金銭・物品の交付を行った者」も「買収交付罪」に問われる(221条)。自民党側で河井夫妻に1億5000万円もの資金を交付すると決裁した者にも捜査が及ぶ可能性があるのだ。 買収の舞台となった昨年の参院選で安倍事務所は案里陣営に4人の秘書を派遣し、案里氏の後援会長だった町議も、克行氏から「安倍さんからです」とカネを渡されたと証言している。それだけに特捜部は巨額の党資金の決裁に安倍サイドがどう関わっていたかを注目しているとされる。 かつて田中角栄内閣の跡を継いだ三木武夫首相は、ロッキード事件が発覚すると政敵の田中前首相を守らずに検察捜査にゴーサインを出した。「今回の選挙買収事件が自民党中枢に波及し、11月危機と重なって次が石破首相になると、“第2の三木”となって捜査を安倍勢力の弱体化に利用しかねない。そうした懸念があるだけに、石破後継を阻止して安倍総理の意向に従う後継者を選ばなければならない」 首相周辺にはそうした警戒の声がある。麻生太郎・副総理の「9月解散、10月選挙」論も石破後継阻止という首相サイドの思惑と一致する。永田町には、解散論の裏に安倍―麻生への「政権禅譲」シナリオがあると囁かれている。「11月危機で退陣に追い込まれる前に、安倍首相が麻生氏に首相の座を禅譲し、麻生内閣が五輪中止など安倍政権の残務整理をする。9月解散で自民党が議席を減らせば総理交代の口実になるし、一度選挙をやれば自民党議員は当面選挙の心配がなくなるから、来年の総裁選では人気のない岸田氏を総裁に担ぎやすい」(自民党関係者) 麻生リリーフ首相の後に、岸田“傀儡”政権をつくるシナリオだ。 そして、自民党の外からは、東京都知事選で圧勝し、“いつ国政に復帰すべきか”とひそかに野心を燃やす小池百合子氏が、自民党の人材不足を象徴する総理選びの迷走を、舌なめずりしながら見つめている。※週刊ポスト2020年7月24日号
2020.07.11 07:00
週刊ポスト
Go Toキャンペーン暗雲、官邸恐れる「パフォーマンス小池」
Go Toキャンペーン暗雲、官邸恐れる「パフォーマンス小池」
 一向に減らない、新型コロナウイルスの感染者数。東京都では7月上旬、連日100人以上の感染者が出ていた。9日には1日あたり過去最多となる224人の感染が発表された。本来なら人の移動が激増する夏休みまでに、新たな一手を打たなければならない。 そこでネックになっているのが、8月にスタートする予定の国土交通省などによる「Go Toキャンペーン事業」だ。 これは、コロナでダメージを受けた観光業や飲食業、イベント・エンターテインメント業などを支援する一大キャンペーン。総額1兆6794億円を注ぎ込み、旅行代や飲食代、イベントのチケット代などを消費者に還元することで、各業界の需要喚起を図る。 官邸関係者が声をひそめて打ち明ける。「このキャンペーンはコロナの感染が拡大している時点で、壊滅的な影響が予想された観光業を救うため、観光業界と関係が深い与党幹部と官邸中枢が、肝いりで推進しているものです。 当初、『夏までには落ち着くだろう』という安易な考えで1兆円を超える予算をつけたものの、現時点で感染の再拡大がとどまらず、官邸サイドは焦っています。それでも本音では、『せっかく巨額の予算をつけたので、夏休みは旅行をしてもらいたい』と思っているはずです」 都をはじめとする自治体にも思惑がある。「いまはどこの自治体も財政が厳しく、自前のコロナ対策をやりたくてもやれない状況です。唯一潤沢な予算のあった東京もこれまでのコロナ対策で貯金を大幅に取り崩したうえ、今後は大幅な税収減が見込まれます。その状況で各知事が『早く緊急事態宣言を出してくれ』と騒いでGo Toキャンペーンをつぶすと、官邸がヘソを曲げ、前回のように10万円の給付金などが出なくなり、打つ手がなくなる。だから小池百合子都知事以下、自治体の長は国の動きを静観しています」(前出・官邸関係者) 国と自治体の綱引きが繰り広げられるなか、官邸が恐れるのは「パフォーマンス小池」の登場だ。ある政権幹部が指摘する。「先の都知事選で無事、再選を決めた小池さんは今後、大々的なパフォーマンスができる。官邸側は、『なぜ国は何も対策しないのか!』と打って出られるのが最も怖い。 彼女は自らの懐を痛める休業補償の話を巧妙に避けつつ、感染再拡大の原因は緊急事態宣言を出さない政府の弱腰にあると印象づけ、都民に対して、『外出自粛を強くお願いする。国のため、地方のため、来年の東京五輪のため、お盆休みはステイホーム!』と熱弁するでしょう。小池さんの思惑通りになれば、都民のお盆と夏休みは消滅する」 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんも、「夏の外出自粛要請は待ったなし」と指摘する。「このまま感染者が増え続けるのであれば、残念ながら夏季休暇前のタイミングでの外出自粛要請が判断されるかもしれません。夏の長期休暇が日本の感染再燃の瀬戸際における、大変重要な判断になると思います」 すでに立てた夏の計画は、直ちにリスケジュールした方がよさそうだ。※女性セブン2020年7月23日号
2020.07.11 07:00
女性セブン
「孤独な女帝」の謎に迫る(共同通信社)
小池百合子氏 「孤独な女帝」のしたたかさ、逞しさのルーツ
“異端の政治家”小池百合子氏(67)が東京都知事に再選された。4年前の知事選でブームを起こし、勢いを駆って前回総選挙では小池新党「希望の党」を立ち上げて国政に挑む大博打を打ったものの、大負けしてすってんてん。「小池は終わった」と思われていた。 それが今回はメディアあげての批判の嵐の中、新型コロナ対応で再び風をつかんで圧勝してみせたのだ。 政界では“勝負師”の彼女がこのまま4年間、おとなしく知事任期を全うすると考える者は少数派だ。次はいつ、総理をめざして国政に転じるかと与党も野党も戦々恐々としている。 群れず、頼らず、敵をつくるのを厭わない。だから嫌われ者だが、バッシングさえ逆手にとって何度挫折しても蘇る。この「孤独な女帝」のしたたかさ、逞しさのルーツはどこにあるのだろうか。 小池氏は世襲政治家ではない。だが、そのルーツは“政治好き”だった父の勇二郎氏を抜きには語れない。 勇二郎氏は戦時中、日本の皇室は中東のシュメール文明の末裔だとするスメラ学塾に参加し、「民族独立運動」など超国家思想に傾斜していた。戦後は貿易商を営んでアラブ諸国に人脈を広げた。〈大正十一年に神戸で生まれた父は、戦争中海軍に身を置いた。終戦後は、ペニシリンで一儲けした後、重油を関西電力に卸す商売やガソリンスタンド経営など石油がらみの仕事をベースに、三十代で関西経済同友会の幹事を務めるなど派手に立ち回ったようだ〉 小池氏は文藝春秋2008年6月号の「オヤジ」という表題のエッセイでそう書いている。大風呂敷を広げるのが好きな破天荒な人物だったようだ。交友があった右派の政治団体関係者の話だ。「自称・元海軍将校で戦争中は『アジア解放』の使命を軍部から命じられ、戦後は政治家の密命を帯びて世界中を飛び回っていたと。すべてがそんな調子で、娘がカイロ大学を出たのも、『自分が新たな大東亜共栄圏建設のために世界を歩いた結果のコネクション』なんだという。 ただ、地に足はついていないが、本人なりに真剣に政治のことを考えていた人だった。唐突に電話をかけてきて、『いま私が総理大臣だったらこうする』という話を延々と聞かされた」 石原慎太郎氏が1968年の参院選全国区で出馬すると、勇二郎氏は関西地区の責任者となってトップ当選させ、自分も1969年の総選挙に旧兵庫2区から立候補する。 自民党の公認は得られず、石原氏の政治団体「日本の新しい世代の会」を看板に無所属で戦ったが、結果は約7000票で惨敗した。泡沫候補だった。小池氏が甲南女子高校2年のときだ。 このとき、勇二郎氏の選挙を手伝ったのが、後に自民党から選挙に出て防災担当相となる鴻池祥肇(こうのいけ・よしただ)氏と、石原氏の秘書から副知事を務める浜渦武生氏だった。◆父の人脈を蹴落とした 世襲議員は選挙に出るにあたって親から地盤、看板、カバン(政治資金)を受け継ぎ、世襲でなければ有力政治家の秘書を経験したり、地方議員から国政をめざすなど、いずれも地縁血縁人脈をフルに使って当選を目指すのが常識である。 小池氏は違った。1992年の参院選比例区で日本新党から当選した小池氏は、翌1993年の総選挙で衆院に鞍替えし、父と同じ旧兵庫2区(定数5)から出馬する。そこには鴻池氏が現職代議士として地盤を築いていたが、そこに割って入った小池氏は土井たか子氏に次ぐ2位で当選、鴻池氏は落選する。父の人脈を利用するのではなく、逆に戦って蹴落としたのだ。 もう1人の浜渦氏も、小池氏が都知事に就任すると石原都政時代の築地移転問題で都議会の百条委員会にかけられて厳しい追及を受けた。 国会議員となった小池氏は、日本新党時代は細川護熙氏、新進党と自由党では小沢一郎氏、自民党入党後は小泉純一郎氏と時の有力者の側近となり、頭角を現わしていく。 永田町の“出世の方程式”は、実力政治家の子分となり、下積みを経験しながら政治キャリアを積む。自民党であれば、派閥組織の中で政務官、副大臣、大臣とサラリーマンのように年功序列でポストがあてがわれる。ここでも小池氏のやり方は型破りだった。政治評論家・有馬晴海氏が語る。「閨閥を持たない小池氏は、世襲議員と違って組織の中では出世が遅れてしまう。だから有力者に引き立ててもらったというより、自分から有力者に積極的にアイデアを売り込んだ。サラリーマン政治家ではなく、ベンチャーなんです。だから有力者の力が衰えたり、情勢が変わると踏み台にして別の有力者に乗り換え、自分の力でステップアップしていくしかなかった」 組織の中で出世したわけではないから、決まった後見人もいないし、子分もできない。自らの政治勘だけを頼りにリスクを取って勝負に出る。「孤独な女帝」はこうして生まれた。 自民党が閨閥なき異質の政治家の国政復帰を警戒するのは、父譲りの破天荒な血で政界秩序をかき回されることを恐れているのかもしれない。※週刊ポスト2020年7月24日号
2020.07.10 07:00
週刊ポスト
緊急事態宣言が解除された5月25日の新宿・歌舞伎町(時事通信フォト)
夜の街だけが危険ではない、学校・介護施設でも感染拡大懸念
 今なお、終わりが見えない、新型コロナウイルスの感染拡大。東京都内では連日、100人を超える感染者が出ているが、小池百合子都知事(67才)が感染拡大の場として槍玉に挙げているのが「夜の街」だ。 しかし、実際に感染が怖いのは夜の街だけではない。危険な徴候はいたるところに見られる。最大の警鐘は、「感染経路不明者」の増加だ。都の新規感染者のうち、感染経路不明者は4割弱に達する。 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが危惧する。「経路不明者がさらに経路不明者に感染させると、ねずみ算式に感染者が倍増し、やがて感染爆発にいたります」 事実、都の対策本部会議メンバーである国立国際医療研究センターの大曲貴夫さんは、7月2日の会見で、「いまの状況が続くと4週間後には感染経路が追えない新規陽性者が1日160人に増える。10日続けば1600人の新入院患者が生じる」と警告した。「無症状感染者」が多いことも気がかりだ。「感染者のうち、無症状感染者からの感染が全体の45%を占めるという研究結果が、最近、科学誌『サイエンス』に掲載されました。特に若者は感染後も無症状のままで、本人が気づかないうちに周囲にウイルスをまき散らす可能性があります」(一石さん)「陽性率」の問題もある。陽性率とは、その1週間に陽性が判明した人数の平均を、PCR検査した人数の平均で割った数値だ。緊急事態宣言下では4月11日の陽性率31.7%が最大で、7月3日の都内の陽性率は4.7%だった。 それをもって西村康稔経済再生担当相は「都内の陽性率はまだ低い」と強調するが、そこには“まやかし”がある。昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが言う。「東京全体では4.7%ですが、新宿区の検査スポットに限ると6月22~26日の平均は22.5%に達しているとのこと。6月上旬の倍以上です。検査を受けるのは夜の街の関係者だけではないため、陽性率の急上昇は市中感染の拡大を示唆します」 経路不明、無症状、陽性率の急増が意味するのは市中の感染者の増加にほかならない。現状でも、夜の街と同じように無症状者や軽症者を次々に検査していけば、「特定のスポット」を中心に、多数の感染者が出現すると予想される。 その「特定のスポット」こそ、小池都知事が夜の街を悪者にし続けることで隠しておきたいことなのだ。◆会食帰りの父親より学校帰りの子供が怖い 無症状でウイルスをまき散らす感染者はどこにいるのか。注意すべきは「学校」だ。だが、児童・生徒が感染の中心ではないことが重要な点だ。 すでに全国の学校現場では、感染者やクラスターが多数発生している。7月上旬だけで、東京都江東区の小学校の教師4人が感染し、兵庫県神戸市の中学校で教師1人が感染した。「特筆すべきは、小中高校では児童・生徒の感染が比較的少ないことです。一方で、教員など学校関係者の大人の感染者が多い。ほかの業種に比べても、明らかに目立ちます。 これが意味するのは、ウイルスは児童・生徒間で蔓延しているものの、子供の体内では一定以上はウイルスが増えないため、感染が確認されないし発症もしにくい。しかし大人にはうつすということなんです」(医療ジャーナリスト) 教室内での子供たちの行動は、感染への注意力が低かったりする点で、夜の街のホストクラブよりも感染が懸念される状況だ。それは季節性のインフルエンザが、教室内で短期間に爆発的に感染拡大することからも明らかである。 しかし、よく知られている通り、子供たちは新型コロナに感染しにくく発症しにくい。ただ、“ウイルスを保有する子供”を媒介として、その周辺の大人にじわじわと広がっていく──。「本当に怖いのは、感染した無症状の子供がウイルスを自宅に持ち帰り、両親や祖父母などに家庭内感染させることです。夜の街で会食をした父親よりも、実は学校で友達と濃厚接触してきた子供の方が危ないのかもしれない」(前出・医療ジャーナリスト)「介護施設」にも大きな危険が潜む。最近では、東京・荒川の介護施設「ひぐらしの里」での入居者と職員の感染者は19人となった。徳島県では20代の介護士が陽性となったが、その感染源はわかっておらず集団感染につながる恐れがある。血液内科医の中村幸嗣さんが指摘する。「そもそも介護施設では、日常的に職員が入居者を抱き上げるなどの介護が必須で、1人でも感染者が出たら多くの人に連鎖しやすい。しかも高齢で基礎疾患がある人は、感染すると重症化するリスクが高く、非常に危険です。社会活動の再開とともに入居者の家族などのお見舞い制限を解除すれば、無症状の感染者の訪問で介護施設が死のクラスターになる可能性があります」「外食」も安心できない。前述の通り、ホストクラブで感染者が急増したのは無症状の集団が検査を受けたから。会話を伴う飲食の場であることは変わらないので、ほかの外食産業でも無症状の人や軽症者が検査をすれば、同様に感染者が大量発生するはずだ。 この先、さらにリスクが高まるのが海外からの流入だ。 日本はタイ、オーストラリアなどとの渡航制限を段階的に緩和する予定だ。またEUが渡航禁止措置の対象から日本を解除したため、観光に行った日本人が帰国する際、ウイルスを持ち込む可能性が少なからずある。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんはこう話す。「欧米で流行したウイルスは、毒性や伝染力が高いとの研究結果があります。今後、海外からの訪問者らを介して日本に欧米型が入ってきたら、より危険が増します。実際、中国・北京ではすでに欧米型が流入しています」 小池都知事は直視しないが、再流行は始まっているのだ。※女性セブン2020年7月23日号
2020.07.10 07:00
女性セブン
(写真/Getty Images)
新型コロナ防止策、世界の新たなトレンドは局所的な地域封鎖
 七夕が終わり、刻一刻と夏が近づいてきている。夏休みやお盆の旅行計画を立てる正念場という人も多いはず。新型コロナウイルス感染予防のための自粛期間が長く続いた反動からか、8月の沖縄、北海道行きの飛行機のなかには満席に近い便もある。理由はソーシャルディスタンスにより、座席が激減しているから。早く予約しないとすぐに埋まってしまうだろう。 都内の感染者増加を受け7月4日、小池百合子都知事(67才)は「不要不急の他県への移動の自粛」を要請した。しかし、実際は聞く耳を持つ人は少ない。 振り返れば、3月末に小池都知事が外出自粛要請をした際の都内の感染者は41人、4月中旬に国が緊急事態宣言を出した際の都内の感染者は151人だった。それから3か月。都内の感染者数は100人超えが続いた。都内在住の40代主婦が話す。「いまの状況って、緊急事態宣言が出されたときに近づいているってことですよね? けど、何人超えたら自粛要請が出るなど都が明確な数値を出していないから、どのタイミングで何が起こるのかわからない。いままで帰省をがまんしてきたので、夏休みに実家に帰るのを楽しみにしていたのですが、このまま他県への外出自粛は続くのでしょうか? 次は何が起こるのでしょうか?」 景気悪化を恐れる国と、都の貯金が少なくなった小池都知事は経済が止まってカネばかりかかる休業要請はできるだけ避けたい気持ちがある。「国際オリンピック委員会(IOC)は、来年開催予定の東京五輪の可否を10月頃に評価する方針です。再延期の選択肢はないので、いまはできるだけ『東京は危険』との印象を持たれたくないという思いがある。国も都も思い切った対策が打てない状況です」(全国紙政治部記者) 東京が足踏みをするなか、世界では感染再拡大への備えが見られる。新たなトレンドは局所的な「地域封鎖」だ。 スペインは東部アラゴン州の一部で移動や施設営業を制限し、ドイツは西部の集団感染の起きた郡と隣接する2つの郡を封鎖した。また第2波の脅威に直面する中国は北京近隣で人口約39万人の河北省安新県を封鎖。イギリスも感染者が増加していた、中部の地方都市レスターを再封鎖した。 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはこう話す。「地域封鎖は全面封鎖による経済的ダメージを縮減しつつ、ピンポイントで感染拡大を抑えて資金がかからない。日本でも海外の事例と同様の、あるいは近い形で、東京に限らず特定の地域、業種に絞っての封鎖や自粛要請などの可能性はあるかもしれません」(一石さん) 現在の東京の感染状況から考えれば、「新宿区だけ」「ホストクラブだけ」という選択肢ならば少ない財源でもできるだろう。 このまま感染者の増加を放っておけば、東京はさらなる感染拡大が見込まれる。昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが言う。「いまは東京からウイルスが各地に飛び火し始めている段階です。このまま放置すると東京が火種となり、全国的な第2波の発生につながりかねません」※女性セブン2020年7月23日号
2020.07.09 16:00
女性セブン
(時事通信フォト)
小池都知事の「夜の街を見せしめに」的手法が孕む問題点
 投票終了からわずか4秒で「当確」の文字がテレビに躍った。圧倒的な勝利で終わった7月5日の東京都知事選。再選した小池百合子都知事(67才)はにやりと笑って、こう語った。「緊張感を持って、新型コロナに対応していきたい」 都内の新型コロナウイルス感染者数は7月2日から連日100人を超えた。「感染者が増えても小池さんは『夜の街に行かないで』と繰り返すばかりで、感染拡大対策はほぼゼロ。その最大の理由はお金がないから。9000億円以上あった”都の貯金”の財政調整基金の残高はコロナ対策で807億円まで激減した。資金不足で補償できないので、休業要請を出し渋らざるを得ない。そのため、とにかく『夜の街』を連呼して悪者にし、そのほかの東京は安全だと印象づけたいのです」(都政関係者) 確かに新規感染者は、接待を伴う飲食の場など「夜の街」の従業員やその客が目立つが、それには理由がある。「新宿区長と歌舞伎町のホストクラブ経営者らは協議を重ね、無症状でも従業員に積極的に集団検査を受けさせました。ホスト店側も“感染していない”ことがはっきりすれば、従業員も客も安心できますから。つまり、夜の街で感染者が増えたのは、彼らが積極的に検査に協力した結果なんです」(前出・都政関係者) 昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが言う。「緊急事態宣言の解除以降、当時から夜の街に問題があるのに都は有効な手を打てず、感染が拡大しました。夜の街での集団検査にこぎつけ、感染者を把握できるようにしたのは、都ではなく新宿区や経営者らの功績です」 実際は、夜の街対策ほど簡単なことはない。元大阪府知事の橋下徹さん(51才)はテレビ番組でこう指摘した。《補償をしっかり出す代わりに、営業停止をやる。それが政治の役割です。ボヤはボヤのうちに消さないと、一気に火が広がるんです》 限られた地域の、限定業種への補償は、いまの財政でも充分にできる。だが、小池都知事は「夜の街に行かないで」と呼びかけるのみ。そこには彼女の思惑が透けて見える。「営業停止にしてしまったら、『コロナは夜の街だけで流行している』という言い逃れができなくなります。そもそも小池さんの政治手法は、次々に“敵”を作って勢いよく攻撃し、世間を味方につけるというもの。過去には、石原慎太郎元都知事や森喜朗元首相を悪者に見立てた。コロナでも最初はパチンコ店を敵視し、次が夜の街だったわけです。“敵は生かさず殺さず”が彼女のやり方です」(全国紙社会部記者) 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは「夜の街を見せしめにするのは2つの面で大きな問題」と指摘する。「夜の街を袋叩きにしたら、『陽性になったらそこまで叩かれるのか』と思った人が、陽性がわかったときの非難や経済的被害などを恐れ、感染の可能性があっても検査を避けるようになる。その結果、感染はどんどん拡大します。経済活動を再開すれば感染者が増えるのは当然で、どの職種でもコロナに感染する可能性があります。それなのに夜の街だけ吊るし上げたら、ほかの本当に危険な感染拡大スポットを見落とす恐れがあります」※女性セブン2020年7月23日号
2020.07.09 07:00
女性セブン
都知事選「小池圧勝」で考えたいポピュリズムへの処方箋
都知事選「小池圧勝」で考えたいポピュリズムへの処方箋
 7月5日に投開票された東京都知事選は、小池百合子氏の圧勝で幕を閉じた。学歴詐称疑惑が再燃するなどの逆風もあったなか、前回都知事選に引き続き多くの票を獲得できたのはなぜか。ノンフィクションライターの石戸諭氏が「ポピュリズム」という観点から読み解く(文中敬称略)。 * * * たった4年前の選挙で掲げた公約の多くが未達成のまま、小池百合子が多くの支持を集めたのはなぜか? 私には、この結果が「ポピュリズムの時代」を象徴する現象に思えてならない。 ポピュリズムとは何か。この問いを巡る学者たちの論争は続いてはいるが、オランダの政治学者カス・ミュデらは、ポピュリズムをこう定義する。「社会が究極的に『汚れなき人民』対『腐敗したエリート』という敵対する二つの同質的な陣営に分かれると考え、政治とは人民の一般意志の表現であるべきだと論じる、中心の薄弱なイデオロギー」(『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』2018年) 重要なのは、社会が「敵対する二つの同質的な陣営に分かれる」、すなわち「敵」を設定したうえで、自らは「人民の一般意志」の代弁者として振る舞うことだ。  現在の日本で、この定義に当てはまる典型的なポピュリストは、新型コロナ対策において「夜の街」「パチンコ店」などを「敵」に設定する小池だ。私が、近著『ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の中で取材した作家・百田尚樹もリベラルメディアを巨大な「敵」「権威」として、「反権威主義」を原動力に変えてきた。 彼らの言葉の特徴は、自覚的なのか無自覚かを問わず、常に明確なターゲットを設定し、攻撃することにある。多くの人に「私が思っていたことを代弁してくれた」「よくぞ言いにくいことを言ってくれた」と思わせているところがポイントだ。 私は同書の中で、こうしたポピュリズムの時代の処方箋として、民俗学者の柳田國男の指摘を参照した。柳田は終戦直後の文章や対談で、次のように指摘している。「あの戦時下の挙国一致をもって、ことごとく言論抑圧の結果と考えるのは事実に反している。利害に動かされやすい社会人だけでなく、純情で死をも辞さなかった若者たちまで、口をそろえて一種の言葉だけをとなえつづけていたのは、強いられたのでも、欺かれたのでもない。これ以外の考え方、言い方を修練する機会を与えられていなかったからだ。こういう状態が、これからも続くならば、どんな不幸な挙国一致がこれからも現れてこないものでもない」(野原一夫『編集者三十年』より) 「一番私が反省しなければならぬと思ってしょっちゅう若い読者に話しているのは、日本人の結合力というものは、孤立の淋しさからきているのですね。そのためにみなのすることをしないでおっては損だという気持が非常に強いのです」(家永三郎との対談「日本歴史閑談」より)「孤立の淋しさ」が、「一種の言葉」だけに結合した先にやってくるのは、「不幸な挙国一致」でしかない――柳田の言葉は、SNS全盛、インターネット全盛の今だからこそ問い直されるものであるように思えてならない。柳田はさらにこう指摘している。「あなたの思うことは私がよく知っている。代って言ってあげましょうという親切な人が、これからはことに数多くなることも想像せられる」(「喜談日録」より) 現代の「代弁者」は巨大な樹木のように、組織だって現れるわけではない。大きな危機に立ち向かうために、「日本人」「都民」の協力を求め、「孤立の淋しさ」を掻き立てるように現れる。「不幸な挙国一致」が起きていないか。これがまさに今、この瞬間に問われている課題だ。
2020.07.06 16:00
NEWSポストセブン

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