国内

子ども手当求む日本人は「目先損得と情緒的反応だけで卑しい」

 菅政権が打ち出した「社会保障と税の一体改革」をめぐる議論には、大きな盲点がある。国民生活を危機に陥れるその基本的問題点を、大前研一氏が指摘する。

 * * *
 危機的状況に直面しているにもかかわらず、「増税は絶対にイヤ」というのが日本国民だ。世界でも類を見ない“税金嫌い”の日本国民の租税負担率は約25%でアメリカと並んで世界で最も軽く、これまで消費税増税を掲げた政権はすべて選挙で敗北している。

 菅首相も消費税増税は「次の政権」に棚上げしている。だから、昔からずる賢い官僚は税金でカバーする分野も年金や雇用保険、健康保険という名前にして、社会負担として徴収してきた。しかし、それらは税金と呼ばないだけで、天引きされるサラリーマンにとっては税金と同じである。

 ことほどさように日本の国民は増税を嫌う一方で、子ども手当や高校無償化、農家の戸別所得補償など、政府がくれるものは大歓迎する。そこには何のロジックもない。あるのは目先の損得と情緒的反応だけである。政権政党としては税金を使った集票行動、という卑しい行為である。

 さらに、現在の日本の社会保障システムには、「負担は不均等でも受益は均等」という問題がある。国民年金と国民健康保険は赤字だが、厚生年金と企業健康保険は黒字だ。にもかかわらず、年金も健康保険も受益は同じである。たとえば、病院で治療を受けた時に国民健康保険でも企業健康保険でも同じ治療が受けられるし、患者の負担は変わらない。

 農民・漁民や商店主などの青色申告者に甘く、サラリーマンには厳しい仕組みになっているのだ。つまり、現在の社会保障システムはイカサマで、クロスサブ(内部相互補助)して全体でOKという仕組みである。
 
※週刊ポスト2011年3月4日号

関連記事

トピックス

「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《多産DVを語ったビッグダディ》「子どもができたら勝手に堕ろすんじゃないぞ」4男6女の父として子供たちに厳しく言い聞かせた理由
NEWSポストセブン
女児盗撮の疑いで逮捕の小瀬村史也容疑者(37)。新たに”わいせつ行為”の余罪が明らかになった
「よくタブレットで子どもを撮っていた」不同意わいせつ行為で再逮捕の小瀬村史也容疑者が“盗撮し放題だったワケ” 保護者は「『(被害者は)わからない』の一点張りで…」
NEWSポストセブン
成年式を控える悠仁さまと第1子を出産したばかりの眞子さん(写真・右/JMPA)
眞子さん、悠仁さまの成年式を欠席か いまなお秋篠宮家との断絶は根深く、連絡を取るのは佳子さまのみ “晴れの日に水を差す事態”への懸念も
女性セブン
ボニー・ブルーとの2ショット(インスタグラムより)
《タダで行為できます》金髪インフルエンサー(26)と関係を持った18歳青年「僕は楽しんだから、被害者になったわけじゃない」 “捕食者”との批判殺到に反論
NEWSポストセブン
2人は結婚3年目
《長髪62歳イケオジ夫との初夫婦姿》45歳の女優・ともさかりえ、3度目の結婚生活はハッピー 2度の離婚を乗り越えた現在
NEWSポストセブン
オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン