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「天皇陛下の祈り」の崇高な精神性こそ余人をもって代え難い

 天皇が執り行なう重要な儀式に宮中祭祀がある。神々に感謝の祈りを捧げ、国家国民の安寧と平和を祈るものだが、その詳細は秘儀中の秘儀とされ、広く国民の目に触れることはない。その内容について、ジャーナリストの山村明義氏が解説する。

 * * *
「天皇の祈り」の存続が危惧されている。

 GHQの7年近い占領下を経た戦後、宮内庁によって宮中祭祀の「簡略化」が度重ねて実施されてきた。

 事実、昭和天皇の時代から「ご高齢・ご健康への配慮」「政教分離違反の疑い」などという名目の下、徐々に宮中祭祀の回数が減らされてきた。

 例えば、昭和43年の入江相政侍従長時代に、毎月1回は御親拝により行なわれていた「旬祭」が削減された。この旬祭は本来、毎月1日、11日、21日に行なわれるが、平成21年からは5月と10月の1日のみの御親拝に変更された。

 回数だけではない。昭和50年には、浄衣をまとった侍従を宮中三殿に遣わし、天皇陛下に代わって行なっていた「毎朝御代拝」を、モーニング姿で賢所の階段下の前庭で一拝する拝礼に改変。また、近年では皇太子など皇族の代拝も、侍従から掌典次長に変えられたことがある。

 これらの祭儀の「簡略化」が天皇陛下のご意志に沿って行なわれていたかといえば、かなり疑問である。元側近らの証言からすると、昭和天皇も今上天皇も、強いご決意をもって宮中祭祀にのぞまれていたことは、明らかだからだ。

 何より、「簡略化」の最大の問題は、「天皇陛下のまつり」の本来の意義を宮内庁の官僚たちが理解しないままに回数を減らしたり、祭祀の中身を変えているのではないかという懸念があることだ。

 一方で、昨年までのご公務の日数は逆に増えている事実もある。「陛下のご負担軽減」を訴えながら、宮中祭祀の親祭だけを減らしたことは、「天皇(日本)の精神性の軽視」と指摘されても仕方が無い。

 それでも先の高谷元内掌典は、こう語っている。

「たとえ陛下が(賢所での)御拝を減らされあそばされても、お仕えさせて戴いた私共には、陛下が同じようにお祈りされているのがわかるのです。宮中祭祀は未来永劫、粛々と行なわれるものなのです」

 事実、東日本大震災の被災地への御行幸や、宮中祭祀での数々の天皇陛下の祈りが、震災で大きな苦難に陥った日本国民に対し、強い勇気と鼓舞を与えた。いかに周囲が止めようと、日本と日本人を守ろうとする「天皇陛下の祈り」の崇高なる精神性こそ、余人をもって代え難い。日本の歴史と伝統が綿々と続き、永遠に変わることはないはずの宮中祭祀の精神性を変えることだけは決して許されない。

※SAPIO2012年2月22日号

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