国際情報

櫻井氏 中国政府に「人権弾圧を直ちに停止することを求める」

『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子など、様々な分野の論客が『今週のオピニオン』と題して、毎号書き下ろしの時事批評を寄稿する。

 4月6日に配信された10号では、櫻井よしこ氏が登場。ここではその内容を全文公開中だが、その最終回では、自らが理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」が主催し、チベット亡命政府首相のロブサン・センゲ氏、世界ウイグル会議事務総長のドルクン・エイサ氏、モンゴル自由連盟党幹事長のオルホノド・ダイチン氏の三氏を迎えて行ったシンポジウムの様子を、櫻井はこう説明する。

 * * *
 チベットもウイグルもモンゴルも中国共産党が中華人民共和国を建国して以来、非常な困難に直面してきた。中国共産党の異民族に対する政策は、その民族を独立国家を形成するネーションとは認めずに、少数民族、即ちエスニック・グループとして取り扱う不当なものだ。中国は中国には56の「少数民族」が存在すると主張し、チベットもウイグルもモンゴルも、それらのひとつにすぎないとして、問題を矮小化してきた。

 中国に対して世界は時折、抗議をするが、中国共産党の異民族弾圧政策は本質的には少しも変わらず、却って烈しさをましてきた。チベットでは僧などの焼身自殺が続いている。

 センゲ首相がチベット政策を語った。

「ダライ・ラマ法王14世の年来の主張は、(1)独立は求めない、(2)但し、チベット仏教とチベット語の学び、チベット文化の継承を認め、高度の自治を保証してほしい、というものです。私も法王と同じく、独立ではなくチベット人として生きるために高度の自治を求めているにすぎません」

 センゲ首相は、冷静に、しかし、憤りをこめてこうも語った。

「いま、中国国内では、チベット人が民族独自の宗教を学ばせてほしいと要請して平和的なデモをすれば射殺されます。ポスターを貼っただけで連行され殺害される。中国当局に批判めいたことを言えば、かき消されたように姿が消えて戻ってきません。居場所も生死も不明なままです。チベット人は、こういう状況を世界に知らせ、国際社会の中で中国共産党の圧政をやめさせるしかないと考えて身を焼くという究極の残酷な手法で訴えているのです」

 チベット人の焼身自殺は強い抗議を世界に発するための政治的行為なのだ。

 4月3日に開催されたシンポジウムではウイグル代表のエイサ氏が語った。

「私たちは東トルキスタンと呼ばれる国のウイグル人です。宗教はイスラム教です。東トルキスタン人の特徴は極めて穏やかな性格にあります。しかし2001年9月11日にアメリカが同時多発テロで攻撃されたときから、中国共産党は私たちを過激なイスラム教徒であり、テロリストだと呼び始めました。そのようなレッテル張りは大変な被害を受けたアメリカ政府当局にすんなり受け容れられ、以来、不条理極まる弾圧が激しさをましています」

「イスラム教徒」「テロリスト」という言葉で中国政府は不当にウイグル人を追い詰め、いまも新疆ウイグル自治区のウイグル人はチベット人同様、 信教の自由も母国の言葉を学ぶ自由もない。

 エイサ氏はこうも訴えた。

「毎年、14歳から25歳のウイグルの女性たちが古里から遠く離れた中国の大都市に連れていかれ、そこで働かされます。彼女らはやがて漢民族の男と結婚させられるのです。こうしてウイグル人の男性は結婚相手を奪われ、ウイグル人の消滅が図られています」

 モンゴル代表のダイチン氏が日本語で語った。来日11年、モンゴルの実情について語り始めた彼は、中国に帰れば投獄の運命が待っており、もはや、帰ることはできない。

「日本には1万人ものモンゴル人が住んでいますが、殆んどの人が恐怖で発言できません。発言すれば必ずひどい運命が待ち受けているからです。自分自身だけでなく、家族にも累が及びます。だから、1万人も日本に住んでいながら、日本の人々に、中国国内のモンゴル人がどれだけひどく拷問され、どれだけの人が虐殺されてきたか、知らせることも出来ていません。

 私はいま発言しています。けれど、私は中国のパスポートを持つ身です。日本に滞在することができず、中国に戻されるときには、生きていられるかどうかもわかりません。このような立場の人間を、日本政府はどうか、受け入れてほしいのです。永住ビザを何年間申請しても、却下され続けています」

 日本政府はいま、中国人観光客の受け入れと、日本滞在5年で簡単に永住ビザを与えているというのに、日本の永住権を真に必要としている弾圧されている人々や民族に対しては出さないのだ。

 3日の国基研のシンポジウムの内容も、4日の国会議員とセンゲ首相の意見交換の内容も、広く日本国民に知ってほしいと私は切望している。

 私たちの代表である多くの国会議員らは、センゲ首相の話に耳を傾け、共鳴した。首相来日に尽力した安倍元首相がこう語った。

「普段は国会で激しく対立している与野党だが、弾圧に苦しむ人々のために党派を超えて力を合わせましょう」

 センゲ首相の話を聞く会は、「日本国国会議員によるチベット人弾圧に関する決議」を全員の総意で決議して閉会した。中国政府に「人権弾圧を直ちに停止することを強く求める」という決議である。
 人権、自由、民主主義を尊ぶ日本で記念すべき一歩が踏み出されたのである。

 私はこの日集った約100名の議員に深い敬意を払うものだ。とりわけ首相来日に関しての準備に力を貸してくれた以下の議員には感謝を捧げたい。
 安倍晋三氏、下村博文氏、笠浩史氏、加藤勝信氏、長尾敬氏、村越祐民氏、山谷えり子氏、若泉征三氏らである。

※メルマガNEWSポストセブン10号

関連記事

トピックス

米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
高市早苗・首相はどんな“野望”を抱き、何をやろうとしているのか(時事通信フォト)
《高市首相は2026年に何をやるつもりなのか?》「スパイ防止法」「国旗毀損罪」「日本版CIA創設法案」…予想されるタカ派法案の提出、狙うは保守勢力による政権基盤強化か
週刊ポスト
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン