ビジネス

ガンホー 経常利益28倍も「パズドラ人気は峠越した」と識者

 スマホ向けゲームから爆発的なヒットを飛ばしている『パズドラ(パズル&ドラゴン)』だが、その勢いはいつまで続くのか――。

 10月29日にゲーム会社のガンホー・オンライン・エンターテイメントが発表した2013年12月期の第3四半期決算(1~9月)は、根強いパズドラ人気に支えられ、経常利益は前年同期比でなんと28倍の686億円。まさに破竹の勢いのように見える。

 だが、浮き沈みの激しいゲーム業界ゆえに、3か月ごとに業績を追わなければ変化が捉えにくい。

 エース経済研究所アナリストの安田秀樹氏に分析してもらったところ、売上高の8~9割を稼ぐパズドラ人気に陰りが見え始めていることがうかがえる。

「4~6月の売上高は437億円で営業利益は265億円、7~9月は売上高416億円、営業利益は234億円と、四半期ベースの伸び率は徐々に落ちています。7月にアンドロイド版でのアップデートに不具合が生じたこともありますが、その要因を除いてもそろそろ国内ではピークアウトが見えてきた印象を受けます」(安田氏)

 株価もピーク時の半分の水準になっていることを考えても、パズドラの次を早く当てなければ「一発屋」で終わってしまいかねない。そんなことは当のガンホー幹部がいちばんよく分かっているはずだ。森下一喜社長は雑誌のインタビューでこんなことを話している。

<パズドラはこれからも長く続くように育てますが、一方で新しい価値も生み出さないといけません。パズドラの成功体験にハマらず、縛られず、次のものを考える>(『アスキークラウド』2013年12月号より)

 強固な経営基盤を築くという意味では、二の矢、三の矢は放っている。ガンホーの会長である孫泰蔵氏がソフトバンクの孫正義社長の弟という浅からぬ縁もあり、4月にソフトバンクの連結子会社になった。

 また、10月にはソフトバンクと共同出資でフィンランドの大手スマホ向けゲーム会社、スーパーセルを買収すると発表した。心強い後ろ盾がいることでガンホーの経営基盤は盤石かと思いきや、内情はそうでもないらしい。

「ソフトバンクは赤字を抱える米携帯会社のスプリント・ネクステルを連結対象に加えるので、マイナス分を相殺する意味でガンホーは必要なパートナーでしょうが、ガンホーにとってみたら大きなメリットはありません。スーパーセルの買収もソフトバンク対ガンホーの出資比率は8対2なので、ガンホーの収益取り込みは限定的といえます」(前出・安田氏)

 パズドラで1つ85円と大事な収益源となっているアイテム課金のシステムを、別のタイトルでさらに単価を上げる方法もあろう。だが、森下社長は課金重視のビジネスモデルを良しとしていない。

「グリーやDeNAの課金システムが崩壊して業績を落とす中、森下社長はあくまで“ゲーム屋”を自認して、子供から高齢者まで遊べるゲームづくりにこだわっている。そのため、課金はできるだけ低い単価でたくさんのユーザーに遊んでもらう戦略を貫いている」(業界関係者)

 そんな安心感が国内累計2000万回を超えるダウンロード回数につながっているのは事実だろう。

 今後は『ニンテンドー3DS』(任天堂)向けに課金を伴わない『パズドラZ』を投入(12月)するなど、家庭用ゲーム機市場でもシェアを伸ばしていこうとするあたり、ゲーム屋の心意気は伝わってくる。ならば、ますます「パズドラに変わるヒットタイトルを開発して、自ら国内外に売っていく必要がある」(安田氏)はずだ。

 8月にゲーム開発者向けのカンファレンスで基調講演に立った森下社長は、「ヒットの方程式 やっぱ、ない」「つまらなかったら創り直す! ちゃぶ台返しだ!!」などと開発ポリシーを披露して会場の笑いを誘っていたという。

 パズドラを超えるヒット作へのプレッシャーを受けながら、ガンホーがどこまで業績を維持できるか、注目したい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン