国際情報

W杯開催 「危険」報道多いブラジルは実際どんな様子なのか

 サッカーW杯ブラジル大会。テレビでは連日、デモや白昼堂々の強盗など、不穏なニュースが目白押しだ。現地ブラジルはホントはどうなっているの? 日本対コートジボワール戦を観るために1才児を連れてブラジル滞在中の女性セブン女性記者が、現場からお伝えします!

 * * *
 ブラジルの空港職員は噂に違わず本当に英語が話せない。知っている限りのスペイン語を駆使するも、やはり伝達力には限界がある。あーでもない、こーでもないとやり取りをして、こちらの言いたいことはなんとか伝わったようだけど、今度は向こうの言っていることがわからない。

 すると、このままじゃ埒が明かないと根負けしたのか、子連れのハポネ(日本人)に同情したのか、見事なビール腹の強面オヤジ職員が、指で「ついてきな」というジェスチャーをし、友人の搭乗便到着ゲートまで連れて行ってくれた。オブリガード(ありがとう)!!

 友人と合流してタクシーへ。さっそくiPhoneを取り出した私たちに、運転手が片言の英語で「絶対に街中でiPhoneを見せちゃいけない。子供はしっかり抱っこして離さないこと!」と、かなり怖い顔で言った。あとで知ったのだが、ブラジルでは12万円以上で売れるらしく、iPhoneを狙ったスリや強盗が日常茶飯事だという。

 そして…翌朝からiPhoneが見つからない…。デモや暴動、地下鉄ストライキなどで、日本出発前には「えーっ、子供連れてひとりでブラジルへW杯を見に行くの!?」と、かなり心配された。いちばん心配していたのは私自身だが、考え始めると最悪のシナリオしか頭に浮かばないので、考えないようにしていただけである。

 日本でも報道されていた通り、すべての準備がお粗末。オリンダでW杯の試合チケットと予約券を引き換えに、指定のショッピングモールに向かったものの、案内や周知が不充分で、引換所にたどりつくまでに約10人に場所を聞かざるを得なかった。ソフトもハードも頑張っていた南アフリカ大会に比べると、「大丈夫かな…」と不安になる。

 いよいよコートジボワール戦を応援するため、スタジアムへ向かった。じつはその前日、観戦仲間のひとりが高熱を発症し、デング熱と診断された。キターッ! 虫に刺されるのが一層怖くなる。

 彼は抗生物質の投与だけで入院は免れたので、タクシーをチャーターし、ホテルとスタジアムを往復することになった。が、私たちのホテルはレシフェから直線距離で100kmほど離れた町にあり、どう頑張っても片道2時間はかかる。彼は運転手と交渉し、往復2万円で話をつけたという。便乗値上げが甚だしいブラジルだが、タクシーだけは意外と安い(日本だと100km往復で最低6万円はする)。

 レシフェは美しいビーチリゾートだが、ブラジル屈指の犯罪都市でもある。試合の前後には、日本人サポーターを狙ったスリや強盗の被害が多発したらしい。

 私たちはかなりスリに警戒して目をギラギラさせて行動していたせいか被害には遭わなかったが、スタジアム近くのフードコートで食事をしたときは、かなり怖かった。そこはまるでサバンナ。フードコート内はハイエナだらけで、気を抜いたら瞬殺…そんな殺伐とした空気に包まれていた。3人に1人は、獲物を狙ってブラブラしている感じだ。目つきが悪いというよりも「死んで」いる。少年たちの空虚な目が今も忘れられない。

 スタジアムも大変残念な状況だった。一見、完成しているように見えたが、スタジアム周辺の道路舗装が間に合わなかったのだろう。雨でぬかるんだ地面の上に、すのこのようなものが一面に敷かれていた。が、これに足をのせると、ズブズブと沈み込むのである。ほとんどの人が靴の中まで浸水したと思う。

【プロフィール】
尾崎唯(38)

フリー編集者/ライター。筋金入りのサッカーファンで、大学時代には女子サッカー部のストライカーとして活躍。3年前にキューバ人と結婚。「3人でブラジルへ行こう」とそそのかされて、長男レオくんを出産。ところが、「やっぱり治安の悪いところには行きたくない」と、渡航直前に夫がブラジル行きを拒否。息子と2人での観戦旅行を決意。

※女性セブン2014年7月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン