5月30日20時24分頃、小笠原諸島西方沖で発生したマグニチュード8.1の地震は、日本周辺の地震としては東日本大震災(M9.0)に次ぐ規模であり、震源は海底682kmと非常に深かったものの、東京都小笠原村と神奈川県二宮町で最大震度5強を記録。埼玉県鴻巣市、春日部市、宮代町で震度5弱、他にも関東の広範囲で震度4の揺れが確認された。
都心部を含む関東平野はかつて山地・丘陵で囲まれていた。その低地はもともと海底であり、その泥土の上に降り積もった火山灰が固まって地盤(関東ローム層)を形成している。ゆえに地盤が緩く近海のどこが震源でも非常に大きな揺れと、それに伴う被害が生じてしまう。
ここで注意すべきは、同じ揺れでもその地形や建物の立地によって被害の大きさが変わることである。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏が指摘する。
「埋め立て地の多い首都圏沿岸部は液状化の怖れがある。東日本大震災では千葉県の浦安や幕張で液状化の被害が多数報告されました。
さらに警戒すべきは高層マンションの被害です。今回の小笠原地震では高層ビルを中心に約2万基のエレベーターが緊急停止しました。
これは一定の揺れを感知すると止まるように設計された『地震時管制運転装置』が正常に作動したためで、災害対策が正常に機能したと評価できる一方、震度6を超えるさらなる大地震ではより多く、長時間にわたるエレベーターの停止が起こるでしょう」
今回の地震ではエレベーター内に閉じ込められた事例は14件だったが、さらに震度が大きくなればこのような事態も想定される。
「基本的にエレベーターの扉は内部からは開けられないので、業者の救助を待つ必要がある。最悪の場合それを待つ間に建物で火災が発生して命を落とす危険すらある」(和田氏)
※週刊ポスト2015年6月19日号