芸能

技巧的脚本が新鮮な『婚活刑事』 主演・伊藤歩の芝居も光る

 ドラマにトレンドは確かにあるが、そこに乗ればヒットするとは限らない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 ホテルコンシェルジェ、危機管理専門家、保育士、消防士、内閣総理大臣、パティシェ、塗師、村おこしに取り組むスーパー公務員……。「職業」ドラマがやたら目に付く。今に始まったことではないけれど、『半沢直樹』(TBS)あたりから職業をドラマの主軸として扱う方向性に一層拍車がかかってきた気配。

 たしかに、「知らない世界を知る」ことは、ドラマの楽しみの一つ。個性的な職業をドラマの題材にしたくなる制作側の気分も、わからなくはない。

 昔は医者、刑事、弁護士あたりで十分だった設定も、繰り返しが過ぎれば飽きられる。段々に「あまり知られていない職業」へと触手が伸び、「レアな仕事」がズラリ並ぶようになったのだろう。

 では、「個性的な仕事」を物語の中にきっちりと取り込むことに成功しているドラマが、いったいどれくらいあるだろうか? 

 ドラマを見て「世の中にこんな仕事があります」という表面的な紹介は伝わってきても、あるいは他のドラマと差別化はできたとしても。その仕事「ならでは」の現場風景、手つき顔つき、リアリティ、葛藤や苦悩、困難やすばらしさといったものがくっきりと浮き上がってくる作品がいったいどれくらい……?

 例えば、『天皇の料理番』(TBS)では料理人を演じた佐藤健のプロ並みの包丁さばきに絶賛が集まっていた。その一方、朝ドラ『まれ』(NHK)のパティシエぶりには厳しい意見や感想が散見される。「お仕事ごっこ」なのか、それとも「職業人を本気で演じ、役を生きようとしているのか」。一瞬に感じ分けてしまう視聴者の嗅覚。

 もしそのあたりが中途半端であれば、ただ衣装と小道具を揃えて目をひくだけの「職業コスプレ」ドラマにしかなりえない。いや今どきのコスプレイヤーの追究度・本気度は多くのドラマをすでに凌駕しているのかも。

 さて。今クールで私が注目している職業ドラマは、そうした一般的なドラマのまさに「正反対」を独走している。

 主役は刑事。しかしまったくもって「刑事もの」っぽくないことが最大の特徴であり魅力の『婚活刑事』(日本テレビ系木曜23:59)。

 刑事・花田米子(35歳)演じる伊藤歩の前には、次々に容疑者が現れる。婚活に熱をいれるこの女刑事、惚れた男は必ず罪を犯しているという、実にシュールな設定なのだ。

 つまり、犯人らしき人物は最初にわかってしまう。捜査もしないうちに。と、「刑事もの」らしくないが見応えは十分。犯罪に手を染めることになったプロセスを紐解いていく人間ドラマを、ポップにユーモラスに展開していく。

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
《昭和には“夏の風物詩”》令和の今、テレビで“怖い話”が再燃する背景 ネットの怪談ブームが追い風か 
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト