ビジネス

低所得者対策に軽減税率は非効率 もっとよい方法を識者提案

 消費増税に伴う軽減税率が話題だが、経済学者で投資家の小幡績氏は、それは低所得者対策どころか富裕層優遇政策だという。では、実際の低所得者対策としてはどんな方法があるのか、小幡氏が解説する。

 * * *
 低所得者対策としては、カナダで行なわれている、「給付付き税額控除制度(所得の少ない人へ補償を行なう制度)」を利用したものが、もっとも合理的で効率的であるといわれており、マイナンバーが導入される日本でも実現可能となります。

 一定の年収以下の人たちや一定の資産保有額以下の人たちに対して、定額で給付金を配る対策で、そうした負担緩和措置を行なうことのほうが軽減税率よりもはるかに望ましいのです。

 軽減税率により一人あたり5000円の消費税負担を減らすやり方では、年収1000万円の人にも3000万円の人にも負担軽減となってしまいますが、年収500万円以下の層に限って対策を取れば、同じ総還付額でも高所得者への負担軽減の分を低所得者に回せます。それによって「みんなに5000円」ではなく、「本当に困っている人に1万円」の給付を行なうことも可能になるのです。

 にもかかわらず、なぜ政府は「軽減税率」を推し進めるのか。

 問題は、「軽減税率」というものが政治的に、あるいは一般的に、支持が集まりやすい、ということです。欧州でも、軽減税率が多くの国で導入されています。それは、非効率的であると分かっていながら、国民の要望として、あるいはそれを受けた政治的な志向として、導入されてきています。

「必需品にも課税するのはひどい」「低所得者が苦しむ」という議論が直感的に支持を得やすいからだと思われますが、低所得者への現金給付で代替する、と説明しても納得が得られないのは、かなり不思議なことです。経済学者の間でも、行動経済学的にどう説明するか、議論が分かれているところなのです。

※週刊ポスト2015年11月6日号

関連キーワード

トピックス

“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
露出を増やしつつある沢尻エリカ(時事通信フォト)
《過激な作品において魅力的な存在》沢尻エリカ、“半裸写真”公開で見えた映像作品復帰への道筋
週刊ポスト
初めて万博を視察された愛子さま(2025年5月9日、撮影/JMPA)
《万博ご視察ファッション》愛子さま、雅子さまの“万博コーデ”を思わせるブルーグレーのパンツスタイル
NEWSポストセブン
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
尹錫悦前大統領(左)の夫人・金建希氏に贈賄疑惑(時事通信フォト)
旧統一教会幹部が韓国前大統領夫人に“高級ダイヤ贈賄”疑惑 教会が推進するカンボジア事業への支援が目的か 注目される韓国政界と教会との蜜月
週刊ポスト
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン