箱入りの梅の櫛に比べて、きりがもらった櫛は明らかに安物の地味なものだったのだ。その後、きりは山で騒動があった後、わざと足を痛めたと言いだして、信繁におんぶしてもらう。少女マンガか!と突っ込みたくなる場面だ。また、真田家から織田方に人質を出すことが決まった際には、信繁の姉の松(木村佳乃)が「私が!」と立候補。実は裏切り者として隠れている松の夫を人質の従者として密かに安土に同行させようと信繁に知恵をつけられているのだ。「いや、ここはばば様(信繁の祖母)がいいのでは…」と父昌幸(草刈正雄)に言われると、松も信繁もジタバタと抵抗。こんな場面は妙に可笑しい。
歴史には女性の記録がほとんど残らないため、自由に書きやすい。過去の大河ドラマでも側室の名前や性格などは創作ということも多いのだ。また、女子は家の中にいることが多く、代表作『ラヂオの時間』のスタジオ、『有頂天ホテル』のホテルなど閉じた空間でのドタバタが得意な作家にはぴったりともいえる。
映画では役所広司や佐藤浩市など、何をやってもカッコよくなる俳優にとぼけた役をやらせるのが大好きな三谷脚本。今回のターゲットは、家康の内野聖陽だろう。信長様がきれい好きだから「馬糞もひとつ残らず拾え」とちょこまかしている小心者の家康が、将来、信繁の最大の敵になる。ここがこのドラマの仕掛けどころ。まだまだ道は長い。