国際情報

セウォル号事故「空白の7時間」を現地取材 口をつぐむ人々

韓国の全国民が解明を望むセウォル号事故「空白の7時間」

 2016年10月31日、実業家を名乗る女性、チェ・スンシル(60才)が韓国で緊急逮捕された。肩書は実業家でシャーマン、そして韓国大統領、朴槿恵(64才)の大親友。その彼女が外交や北朝鮮対策などにかかわる国家機密や、大統領の演説文を受け取り、国政に深く介入していたことや、政治資金を流用したことが逮捕理由だった。

「苦しい時にも助けてくれたから、何でも相談できる間柄だった」。両親を暗殺され、信用できる人間がいなかった朴槿恵は、そう言って彼女を擁護し、アドバイスをもらってはいたものの、疑惑そのものは否定した。しかし、事態は収束するどころか、この逮捕を発端に韓国を揺るがす一大スキャンダルへと発展している。

 チェ・スンシルの娘、チョン・ユラ(20才)の名門女子大不正入学疑惑、サムスンやロッテなど大財閥の不正献金疑惑、そして朴槿恵が公費で整形や美容注射を打っていた疑惑などが相次いで浮上。ついにはセウォル号沈没事故の当日(2014年4月16日)、整形の施術を受けていたのではないかという疑惑まで飛び出した。韓国で今、何が起きているのか。本誌・女性セブン記者は、極寒の韓国へと飛んだ──。

 1月17日、光化門(ファンファンムン)広場。

「3年たった今も、韓国国民の傷は癒えていません。もし、あの日韓国に大統領がいたら、あんな事故は起きなかった」

 セウォル号のデモのテントに座り、初老の男性が涙ぐみながら訴えた。

 私たちが韓国に着いてからまず訪れたのは、デモの中心となっている場所だ。大統領官邸「青瓦台(せいがだい)」をはじめとする公共機関や、ラグジュアリーホテル『フォーシーズンズ』が立ち並ぶ中にあるその広場は、洗練された街の雰囲気からは随分浮いているように見えた。

「もしきちんと対応していれば、食い止められた事故だったんです。あの7時間、一体何が起きていたのか、私たちは知る権利も義務もある」

 知る権利と義務──この言葉はその後の取材中も、いろんな場所で聞いた言葉だった。

 当時、日本でも連日大きく報じられたセウォル号事件は、韓国では過去のものではない。2014年4月16日に起きたセウォル号の転覆は、乗員・乗客の死者295人、行方不明者9人、捜索作業員の死者8人を出した。

 事故が起きたのは午前10時。大統領にはすぐに約300人が行方不明と連絡が入ったものの、対策本部に顔を出したのは午後5時を回っていた。国の緊急事態に怠慢があったのではないか。あれから3年が経った今、チェ・スンシルの逮捕を発端とした一大疑獄事件に発展した中で、韓国国民は大きな疑惑の目で、事件を見ている。最大の焦点は、この「空白の7時間」に朴槿恵が何をしていたのか。

 ヘアセットをしていたという説や、親しい男性との密会説、そして『巫女祭り』と呼ばれるシャーマンによる祭祀をしていた説など、さまざまな憶測を呼んでいるが、朴槿恵はすべて否認。しかし、今もって何をしていたかを明確に示すこともない。そこで今、特検(特別検察チーム)が追及しているのは、美容整形の施術を受けていたということだ。

関連記事

トピックス

『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
【改正風営法、施行へ】ホストクラブ、キャバクラなどナイトビジネス経営者に衝撃 新宿に拠点を持つ「歌舞伎町弁護士」が「風俗営業」のポイントを解説
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン