国際情報

一見デタラメな北朝鮮外交にも明確な方針あると佐藤優氏

 北朝鮮は“異常な国家”だからまともな交渉などできない……そういった考えは間違いだと元外務省主任分析官の佐藤優氏は喝破する。一見デタラメな北朝鮮の外交の基本目的と、それに対する米国の反応を読み解いていけば、停滞してしまった日朝間の交渉に新たな可能性を見出せる。だが、機を逃せば新たな道は完全に閉ざされてしまうという。日朝交渉は今、大きな岐路に立たされている。以下、佐藤氏が北朝鮮外交の基本目的を解説する。

******************************
 北朝鮮は独裁国家なので、外交交渉が難しいという意見がよく聞かれる。筆者はそう思わない。確かに北朝鮮は、他国民を拉致したり、核兵器や弾道ミサイルなどの大量破壊兵器を開発したりするなど、国際社会で一般に受け入れられた「ゲームのルール」と異なる行動を取る。その意味で北朝鮮とは普通の外交とは異なる交渉を行なわなくてはならない。
 
 しかし、それは北朝鮮が、デタラメな外交をしているということではない。北朝鮮は明確な方針を持つ。筆者が見るところ、北朝鮮外交には2つの基本目的がある。

 第1は、金王朝を維持することである。北朝鮮指導部は力の論理の信奉者だ。だから、金正日体制の安全を保障することができるのは、米国だけだと考えている。対米交渉が北朝鮮外交の要なのである。6者協議は米朝交渉の環境を整備するための存在だ。表には出ていないが、米朝間では既にインテリジェンス機関の接触が行なわれていると見るのが、インテリジェンス関係者の常識だ。
 
 第2は、北朝鮮の経済発展のために外交を展開することだ。北朝鮮は日本に金正日体制の安全を保障する能力はないと見ている。ゆえに、日本に期待するのは経済だけだ。

※SAPIO2010年10月13・20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン