ライフ

肝臓がん治療 「ラジオ波焼均法」などの直し方が可能になる

 肝臓がんの治療は、肝機能の状態とがんの進行度の2 つの因子から決定される。肝機能が中程度で腫瘍の大きさが3センチ以上、または多発性の場合、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などのIVR治療が行なわれる。肝臓がんに対するTACEは、開腹手術をすることなく造影剤で位置と大きさを特定し、カテーテルを用いて腫瘍部分のみを選択的に治療するため、患者に負担の少ない治療だ。

 日本人の肝臓がんの約9割はB型・C型のウイルス性肝炎や、肝硬変から発症するため、肝機能自体が低下していることが多い。治療は肝機能と、がんの進行度を評価して方針を決定する。

 肝機能は腹水や脳症の有無、血清ビリルビン値(胆汁排泄能)、血清アルブミン値(たんぱく合成能)、プロトロンビン活性値(血液凝固能)の5 項目の数値で、良い方からABCの3 段階に分けている。さらに腫瘍の大きさと数で総合的に治療法を決定する。

 東京女子医科大学東医療センター外科の塩澤俊一医師に話を聞いた。

「肝機能がA、Bで腫瘍が単発ならば、大きさにかかわらず肝切除を勧めます。腫瘍が2~3個で、腫瘍径が3センチ以内なら、肝切除かラジオ波焼灼法を選択します。肝機能がA、Bで腫瘍径3センチ以上の場合や多発例では、IVR治療の対象となります。肝機能がCと判定されると、基準を満たせば肝移植の道が残されていますが、多くの場合、積極的な治療は難しくなります」

 ラジオ波焼灼法は、皮膚の上から腫瘍に直接針を刺入し、40~50センチのラジオ波で腫瘍を焼灼する局所療法だ。開腹の必要がなく患者の負担は少ないが、腫瘍焼灼が不十分だとがんが急速に増大することがあり、腫瘍径3センチ以上は適応外とされている。

 そこで3センチ以上や多発性の場合はIVR治療を実施する。IVRはエックス線の透視を利用しながら行なう治療の総称で、肝動脈化学塞栓療法(TACE)や肝動脈動注化学療法(TAI)などが含まれる。

取材・構成■岩城レイ子

※週刊ポスト2010年11月26日・12月3日号

関連キーワード

トピックス

警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン