夫婦のかたちも様々だが、あらゆる夫婦バトルのエピソードが、漫談家の綾小路きみまろに、メールや手紙で続々と寄せられている。今回の報告は、広告代理店勤務のご主人(56歳)と奥様(53歳)の「連れ合いのフェチ」のエピソードだ。
奥様は「髪フェチ」なのだとか。結婚前から「私、男の人は長い髪が好き」と、僕に長髪を要求し、事あるごとに、髪の毛を触り、「これって落ち着く~!」という女房でした。
でも、寄る年波には勝てず、僕の頭髪は後退気味で、もう長髪は無理。不満気味の女房は「毛を触っていないと私、イライラしちゃうの。でも、カツラとかはダメ。本物の毛じゃないと。頭が無理なら、口髭を生やして!」。
仕事柄、口髭を生やしている同僚は多いのでOKなのですが、伸ばし始めると半分以上が白髪です。そこで、スティック状の毛染め(ヘアマスカラ)を使い、2週間後には黒々とした立派な口髭が。女房からは「ステキ!」と、ここ何年かされたことがなかった熱烈なチュー!
が、唇を離したとたん、笑い転げてしまった僕。「な、何よ!」と驚く女房の鼻の下には、黒々とした口髭が。チューのとき、僕の毛染めがくっついてしまったんです。
昔、「うちの女房にゃ髭がある」という歌がありましたけど、日頃は強気な女房も、あれ以来「チューしよう」と、毛染めをたっぷりとつけて迫ると、「こ、来ないで!」と、必死に逃げ回っています。
う~ん、快感! どうやら僕の方が、「女房に髭を生やすためのチューフェチ」になってしまったようです。
※週刊ポスト2010年11月26日・12月3日号