ライフ

茂木健一郎氏 女流俳人に「腹の上のポニョ」と名付けられる

「寝不足気味の人ほど、体重が増えます」。ハーバード大教授のこの言葉に、「メタボ」気味の脳科学者、茂木健一郎氏はショックを受けたという。その茂木氏が、「肥満と睡眠時間の深い関係」について解説する。

 * * *
 自慢ではないが、私はいつでもどこでも眠れる。移動中でも、「ちょっと寝るから」と目をつぶると、大抵はすぐに眠りに落ちてしまう。

 夜も、寝付かれず困ることはない。一日の終わりは、ベッドに横たわって、ノートパソコンでイギリスのコメディを見ることを習慣としている。大抵、五分も見ないうちに眠くなり、パソコンを閉じて眠ってしまう。

 睡眠は脳にとって必要なことなのだから、ふだん五時間しか眠っていないというのはあまり好ましいことではないが、とにもかくにも、いつでもどこでもすぐ眠れるというのは、一つの「才能」である。密かにそう思っていた。

 最近、シンガポールの国際学会に参加してその「自負」が打ち砕かれた。私自身の発表が終わって、のんびりと寛いでいると、ハーバード大学の先生の講演が始まった。睡眠の専門家だという。

「いつでもどこでも眠れると自慢する人がよくいますが……」――教授が、大きな身振りで話し始めた。ああ、それは、私のことだ。

「それは、単なる睡眠不足であると考えられます。一日八時間程度の、十分な睡眠を確保できている人が、いつでもどこでも眠れるということは有り得ません」

 そうなのか。私は、まずは軽い衝撃を受けた。そう言えば、毎日良く眠っていた小学生の頃には、時々、夜眠れないでいつまでも布団の上でごろごろと転がっていたことがあったように思う。

「夜、ベッドに横になっても、ふだんから十分な睡眠を取っている人は、すぐに眠れるものではありません。むしろ、なかなか眠れないくらいが、健康的なのです」

 私はさらなるショックを覚えた。イギリスのコメディを見始めて、五分も経たないうちに眠ってしまう私は、一体何なのだろう。演台のハーバードの先生は、自信たっぷりに講演を続ける。まさか、聴衆の一人がさっきからショックを受け続けているとは思いもしないのだろう。

 とどめを刺したのは、教授の次の一言だった。「実は、睡眠不足と肥満の間には、正の相関があることもわかっています。寝不足気味の人ほど、体重が多めになるのです。ストレスで、食べ過ぎるのでしょう」

 確かに、私は「メタボ」気味である。知り合いの女流俳人には、「腹の上のポニョ」と名付けられた。ジョギングをしていると言うと、「毎朝走っているのに、よくその体型が保てるわね」とからかわれる。してみると、私の体重が増えたのも、睡眠不足のせいなのだろうか。

※週刊ポスト2010年12月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン