ライフ

くも膜下出血「8月」「月曜日」「台風」が危険とのデータ

 心の準備もできず、愛する人に別れの言葉もいえずに突然の死を迎えざるを得ないのが、くも膜下出血の厄介なところである。発生メカニズムや危険因子など、明らかになりつつあるこの病魔の正体は、現代人なら常識として知っておかねばならない。

 * * *
 脳動脈瘤は血流がぶつかりやすい血管の分岐点に生じやすい。『「くも膜下出血」のすべて』(小学館101新書)の著者で、東京・西葛西の森山記念病院名誉院長を務め、長年くも膜下出血治療の最前線で活躍してきた脳神経外科の権威、堀智勝氏はこう語る。

「発生メカニズムはまだ謎が多いですが、高血圧などの長期にわたる血行力学的ストレスや、血管への微小な外傷によって動脈に解離性変化が起きて瘤ができるという説が有力です」

 発症の危険因子は高血圧、喫煙、過度の飲酒、風邪などの感染症、痩せ型などだ。脳梗塞が脂質異常症や糖尿病を抱えた肥満体型の人に起こりやすいのに対し、くも膜下出血は痩せ型に多いということはあまり知られていない。1日150グラム(日本酒で1合)以上の飲酒も危険であり、1日に1箱以上のヘビースモーカーも要注意だ。インフルエンザなど感染症にかかってから1か月以内も危険性が高まる。

 家族歴(遺伝)が影響するという説も根強い。一親等以内の近親者に脳動脈瘤患者がいる人の4%が脳動脈瘤を有するとの報告もあり、通常の家族歴のない患者に比べて3~7倍もくも膜下出血のリスクが高いともいわれている。

 堀医師はさらに興味深い統計を紹介してくれた。「なぜかくも膜下出血は日本人とフィンランド人に多いのです」

 最も少ない中東地域では、1年で人口10万人あたり1~2人だが、日本やフィンランドでは約20人に上り、他の国に比べて格段に多くなっている。日本人とフィンランド人の脳血管が弱いことが考えられるが、その理由はわかっていない。

『脳卒中データバンク2009』によると、朝の7~8時、午後の5~6時に発症のピークがある。出勤の時間帯と、帰宅の時間帯に発症が多いことがわかる。

「季節による発症率の変化はそれほど感じないのですが、気圧の変化が関係しているのではないかと感じることがあります」(堀氏)

 昨年発表された沖縄の八重山諸島での調査では、8月および月曜日に発作を起こすことが多く、台風接近日前後3日以内は他の時期に比べて1.8倍多いという結果が出ている。月曜日は『あぁ、また仕事が始まる……』とストレスを感じる人が多いため、くも膜下出血の多さに影響しているともいえそうだ。

「くも膜下出血とストレスの関係についてもいくつかの調査があります。東北大学やアムステルダム大学の調査では、睡眠中は10%前後と低い発症率なのに対し、身体活動による血圧の上昇や排便・排尿のような頭蓋内静脈圧の上昇を伴う動作の最中が40~60%台と高く、脳動脈瘤破裂を誘発する可能性があるといえます」(同)

※週刊ポスト2011年2月25日号

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト