国際情報

韓国企業 日本企業から引き抜いた技術者に年収2倍出す

 世界各国で繰り広げられている産業スパイを巡るギリギリの攻防。各国が対策に躍起になる中、日本だけは「スパイ天国」だという。ジャーナリストの松井豊氏が日本の実態をレポートする。

 * * *
「外国から見て日本ほど『産業スパイ天国』の国はありません。これには日本人のモラルの低下も影響しています。日本人技術者ら自らによる企業機密の流出も絶えません」

 こう話すのは、海外経験が豊富な日本の大手電機メーカー元幹部のAさんだ。エンジニアのAさんは数年前、世界的に躍進している韓国の有名電機メーカーにヘッドハントされて50代で日本の会社を依願退職。以降、ソウルで薄型テレビの開発に携わっている。

 このAさんが匿名を条件に韓国での生々しい体験を打ち明ける。

「その韓国企業では、ライバルであるソニーの薄型テレビの次年度の生産計画を、作成した前年度の直後に入手し、ソニーの動向を丸裸にしていました。日本駐在の社員がソニー内部の情報提供者に簡単にアクセスし、入手しているようでした。私に対しても出身企業の生産計画を入手してほしいと頼んできましたが、私は産業スパイではありません、とはっきり言って断わりました」

 販売計画だけではなく、商品力を左右する技術も流出し、その結果、国際競争で日本メーカーが韓国勢に敗れる事態となっている。その顕著な例がブラジルで起きている。

 2006年、ブラジルはテレビのデジタル放送の技術で日本方式を採用することを決めた。ブラジルでの導入を皮切りにペルーやウルグアイなど南米では日本方式の採用決定が相次いだ。標準化獲得競争では弱い日本が欧米に勝った数少ない事例として注目された。しかも、南米はブラジルを中心に大きな経済成長が見込まれる地域であり、日本の電機メーカーにとってはテレビ商戦で優位に立てるチャンスだった。

 ところが、肝心の薄型テレビのシェアは09年時点で、韓国のサムスンとLGの2社で50%以上を占め、日本のソニーとパナソニックはその半分にも満たない。完全に韓国勢に敗れているのだ。

 この理由についてAさんはこう解説する。

「ブラジルが日本方式の採用を決めた直後、韓国メーカーは東京に即座に対策チームを置きました。その狙いは、日本メーカーからデジタル放送の技術者を引き抜くことでした。何人か引き抜いた結果、日本方式を分析し、それに合ったテレビを日本メーカーより早く開発して市場を押さえることに成功したのです」

 Aさんが働く韓国メーカーのテレビ部門では常に中途採用した50人程度の日本人エンジニアを抱え、早期退職した人材だけではなく、30代の若手の優秀なエンジニアも含まれているという。「優秀であるが故に自分の意見を主張するタイプで、日本企業が使いこなせないために飛び出た人が多かった」とAさんは話す。賃金は、日本企業で働いていた当時の年収の2倍近くもらう場合が多いという。

※SAPIO2011年3月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マッサージ店”の元マネージャー、プンシリパンヤー・パカポーン容疑者(38)。12歳のタイ少女にわいせつな行為をあっせんさせた疑いがある(写真右:時事通信)
〈仕事の初日、客は1人〉〈怖くて手も腕も足も震える〉押収物の“日記”に綴られた壮絶な日々……12歳タイ少女に性的サービスあっせんの“ブローカー”タイ人女性(38)が検挙
NEWSポストセブン
苦戦が予想される岸信千世氏(時事通信フォト)
《総選挙・注目選挙区を予測》橋本龍太郎・元首相の息子、安倍晋三・元首相の甥は苦戦の見通し 「反高市」の武田良太氏は維新現職と与党同士の潰し合いに
週刊ポスト
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
「長期間歩かずにいたせいで神経に影響」クスリ漬け、歯を全部抜かれたのでは…中国ギャル系インフルエンサー(20)の現在の容態《“詐欺集団の幹部の恋人”説に本人が「以前はね」》
NEWSポストセブン
北海道日高町で店の壁の内側から遺体が見つかった事件。逮捕された松倉俊彦容疑者(49)、被害者の工藤日菜野さん。(左・店舗のSNSより、右・知人提供)
「2人の関係は公然の事実だった」飲み屋街で目撃されていた松倉俊彦容疑者と被害女性の“親密な関係” 「『嫁とはレス』と愚痴も」【日高・看護師死体遺棄】
NEWSポストセブン
不正受給の返還を促す中小企業庁HPより
《コロナ禍から3年》「就職しようとしても不正の件がすぐにバレ…」 全額返還しても不正受給者とその家族を悩ませ続けるネットに残る名前
NEWSポストセブン
島根県の私立松江西高校で男子生徒が教師と見られる男性に暴言や机や椅子を投げたりする動画が拡散されている(HP/Xより)
「謝れや、オラァ!」私服の生徒が暴れ、“おじいちゃん教員”は呆然と立ち尽くし…「炎上した動画は氷山の一角です」島根・松江西高校のOBが明かした“環境激変”の実情
NEWSポストセブン
2025年に成年式を終えられた秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
「後継者は悠仁さま?」伝統の書道“有栖川流”、眞子さまは「筆致に賛否」佳子さまは「左利き」……秋篠宮家「書道教育」事情
NEWSポストセブン
年末に放送された『ザ・ノンフィクションの大みそか2025~放送30周年スペシャル~』司会の吉岡里帆、出演したクズ芸人の小堀敏夫
《消えた「女優・吉岡里帆の笑顔」》相方にも愛想尽かされて解散…クズ芸人・小堀敏夫氏がコンビ解散の真相を激白
NEWSポストセブン
照ノ富士(右)と先輩・白鵬の立場は逆転か(時事通信フォト)
《元横綱・照ノ富士》高まる伊勢ヶ濱親方の存在感 弟子の四股名は変更し、スカウト網もその手に…“白鵬の残したすべて”を獲得する勢い
週刊ポスト
「新年祝賀の儀」で彬子さまが着用されていたティアラが話題に(時事通信フォト)
《これまでと明らかに異なるデザイン》彬子さまが着用したティアラが話題に「元佐賀藩主・鍋島家出身の梨本宮伊都子妃ゆかりの品」か 2人には“筆まめ”の共通項も
週刊ポスト
韓国のガールズグループ・BLACKPINKのリサ(Instagramより)
《目のやり場に困る》BLACKPINKのリサ、授賞式→アフターパーティの衣装チェンジで魅せた「見せる下着」の華麗な着こなし
NEWSポストセブン
「第8回みどりの『わ』交流のつどい」で、受賞者に拍手を送られる佳子さま(2025年12月、共同通信社)
「心を掴まれてしまった」秋篠宮家・佳子さまが海外SNSで“バズ素材”に…子どもとの会話に外国人ユーザーらがウットリ《親しみやすいプリンセス》
NEWSポストセブン