芸能

「落語家」にこだわる立川談志と「噺家」柳家小三治の違い

「孤高の名人」といわれる柳家小三治は「落語家」ではなく「噺家」であるとことにこだわっているという。「落語家」と「噺家」、一体何が違うのか、『現代落語の基礎知識』などの著書をもつ広瀬和生氏が解説する。

 * * *
「落語家」か「噺家」かという問題に関して、明確に線引きをしている大御所が二人いる。立川談志、そして柳家小三治だ。

 談志は著作の中では「噺家」と「落語家」と両方の表現を混在させているが、自身については「噺家なんぞと呼ばれたくない。俺は落語家だ」と語っていたことがある。「私ほど落語に深く興味を持った者は過去一人も居るまい」(『談志 最後の根多帳』)と断言する家元ならではの強烈な自負心の表われだろう。

「落語とは人間の業の肯定である」と定義づけ、自身の活躍で落語が「能のようになる」のを阻止した「中興の祖」談志には、確かに「噺家」より「落語家」が似つかわしい。

 一方、小三治は「噺家」だ。

 昨年落語協会会長に就任した小三治は、誰もが認める「孤高の名人」だが、「噺のマクラ」が異様に長いことでも知られている。ときに「早く落語に入れ」と苛立つ客もいるが、ファンはその「長いマクラ」を愛している。マクラを集めた本はベストセラーだし、玉子かけ御飯へのこだわりや駐車場のホームレスについて語った「マクラのCD」も売れた。

 1時間も随談だけしゃべって落語を演らずに高座を降りることも、ファンにとっては充分に想定内だ。
 
 あるとき、その「長いマクラ」で確定申告について延々と語っているうちに、職業欄の話になった。

「私は落語家って書きたくない。噺家と書きたい! でも噺家って書いたら税務署から電話が掛かってきた。『クチアタラシイ……何です、これ?』って。そんなとこに税金払いたくないね!」

 これには笑った。落語家と呼ばれたくない、という小三治の主張は一貫している。

「だいたい落語家なんて言い方、昔はありませんでしたよ。昭和初期には噺家と書いてた。『落語家』と書いて『ハナシカ』とルビが振ってあったモノもある」

※週刊ポスト2011年3月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
国内統計史上最高気温となる41.8度を観測した群馬県伊勢崎市。写真は42度を示す伊勢崎駅前の温度計。8月5日(時事通信フォト)
《猛暑を喜ぶ人たちと嘆く人たち》「観測史上最高気温」の地では観光客増加への期待 ”お年寄りの原宿”では衣料品店が頭を抱える、立地により”格差”が出ているショッピングモールも
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に音楽ユニット「girl next door」の千紗と結婚した結婚した北島康介
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
二階堂ふみとメイプル超合金・カズレーザーが結婚
二階堂ふみ&カズレーザーは“推し婚”ではなく“押し婚”、山田美保子さんが分析 沖縄県出身女性芸能人との共通点も
女性セブン
山下美夢有(左)の弟・勝将は昨年の男子プロテストを通過
《山下美夢有が全英女子オープンで初優勝》弟・勝将は男子ゴルフ界のホープで “姉以上”の期待度 「身長162cmと小柄だが海外勢にもパワー負けしていない」の評価
週刊ポスト
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン