ライフ

「AKBの経営システムは日本相撲協会に似ている」と森永卓郎氏

【書評】『AKB48の経済学』(田中秀臣/朝日新聞出版/1260円)

 AKBの経営システムについて書かれた同書について、エコノミストの森永卓郎氏が解説する。

 * * *
 いまやアイドル界で一人勝ちと言ってよい存在となったAKB48。あまりの人気にグラビアが独占され、仕事を失った高年齢アイドルが次々と結婚へ逃避していると、まことしやかに囁かれるほどだ。

 そのAKB48を田中秀臣氏が経済学の視点から斬った。田中氏はリフレ派の論客で、私が尊敬する経済学者の一人だ。その田中氏は、AKB人気の秘密を、デフレカルチャーがもたらした小さな消費だと断じた。人生の大部分をデフレの下で過ごした若者たちは、今後もデフレが続くと信じている。だから、身近なアイドルを、あまりコストをかけずに、自ら情報発信しながら、「心の消費」をしていく。こうしたライフスタイルは、しっかり定着しているため、今後仮に日本経済がデフレから脱却したとしても、変わらないというのだ。

 私自身は、AKB48はバブルだと思っていた。1980年代後半のバブルも、東京に遅れて、大阪に波及した後、ほどなくはじけた。だから、大阪にNMB48が誕生したいま、それほど遠くない未来にAKBバブルもはじけるに違いないと読んでいたのだ。ところが、田中氏によると、SKE48やNMB48も、地域アイドルというデフレカルチャーの下での新しいビジネスモデルの創造なのだという。

 本書に書かれているのは、ライフスタイルの観点からの分析だけではない。例えば、AKB48を経営面からもきちんと分析している。ネット社会のなかで、一部の勝ち組だけが長期間の利益を独占するようになるなかで、AKB48の経営は、日本相撲協会のシステムと似ているという。この指摘は、目から鱗で、秀逸だ。AKB48の場合、全体の仕事はAKSという統括事務所が仕切るが、個人やサブユニットの仕事は、それぞれの所属事務所が仕切っている。日本相撲協会が相撲を興行し、個々の力士の育成や管理は部屋が行うのと同じだ。その仕組みが、競争の源泉になっているというのだ。

 全体として、ちょっと礼賛しすぎかなとは思うが、それだけAKBが魅力的だということだろう。

※週刊ポスト2011年3月18日号

関連記事

トピックス

大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
「家に帰るのが幸せ」大谷翔平がリフレッシュする真美子さんとの“休日”「スーパーにお買い物に行ったり…」最近は警備強化で変化する「デコピンの散歩事情」
NEWSポストセブン
日本のエースとして君臨した“マエケン”こと前田健太投手(本人のインスタグラムより)
《国内復帰を目指す前田健太投手》「漂う関東志向」元アナウンサー妻がSNSに投稿した“東京の父”と慕うカープの大先輩との写真
NEWSポストセブン
草間容疑者は新宿区内の雑居ビルエントランスで逮捕された
《マスク姿でウロウロ…》草間リチャード敬太容疑者が逮捕前に見せていた“不可解な行動”とは 近隣店従業員が「一見酔っている様子はなくて…」と語る“事件直前の姿”
ハッシーが語った“転落”(本人SNSより、現在は削除済み)
性風俗店受付の面接を受け「なんでこんなことに…」人気棋士・ハッシーが法廷で語った離婚後の“転落”「公園で過ごすことも」【橋本崇載被告・公判】
NEWSポストセブン
アルゼンチンで女性3名が殺害される事件が発生した(Instagramより)
「性的パーティーに誘われて…」「左手の指5本と耳を切断」アルゼンチンで女性3名が殺害 “インスタ生配信”で凄惨現場を約45人が視聴《深刻化するフェミサイド》
NEWSポストセブン
逮捕された草間リチャード敬太容疑者
《黒い帽子にマスク姿で…Aぇ! group草間リチャード逮捕》現場は「警察がよく巡回するエリア」人気アイドルが明け方に露出した際の服装
NEWSポストセブン
米原市役所前で、集まった市民に手を振られる両陛下。雅子さまの、織りのジャケットが華やかな青いセットアップは、2019年、マクロン仏大統領とブリジット夫人とのご会談、昼食会のときにお召しになっていた(JMPA)
天皇皇后両陛下、国民スポーツ大会開会式にご出席 開催地の滋賀は新婚当時に琵琶湖の景色に感動し、歌を詠まれた思い出の場所
女性セブン
総裁選に出馬した林芳正氏(時事通信)
「2時間ほどしていた」「紳士でした」“セクシーヨガ”と報じられた美人インストラクターが語る林芳正氏のスタジオでの姿
NEWSポストセブン
中国の名門・清華大学に在籍する
「あまりにも美しい女性は生配信に向かない!」中国の名門・清華大の美女インフルエンサーが突然の更新ストップ【SNSを巡る親子の対立で物議】
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
《クロスボウ殺人》母、祖母、弟が次々と殺され…唯一生き残った叔母は矢が貫通「息子は、撃ち殺した母をリビングに引きずった」【野津英滉被告・公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《本人が最も恐れていた事態に…》「タダで行為できます」金髪美女インフルエンサー(26)、デリバリー注文のバーガー店が滞在先を暴露「軽視できません」
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”を繰り返していた前橋市・小川晶市長(時事通信フォト)
小川市長”ラブホ会議問題”の前橋市民から出る嘆き 「高崎の親戚からすんげえ笑われた」「男と女でどんな会議なんかい、ほんと恥ずかし」
NEWSポストセブン