国際情報

売春婦、作家…中国の女は想像を絶する苦境をものともしない

【書評】『潜入ルポ 中国の女 エイズ売春婦から大富豪まで』(福島香織著 文藝春秋/1500円)

 * * *
 毛沢東は新中国を建設するうえで「婦女能頂半辺天(女性が天の半分を支えている)」というスローガンを掲げた。しかし、中央の共産党内は別にして、内陸部の農村では、今でも儒教的な男尊女卑の考え方が支配的である。

 本書は産経新聞の名物記者と呼ばれた福島香織氏が、約6年半の北京駐在中に取材した“中国の女”たちのルポルタージュである。女性ならではの視点と独特の筆致で、虐げられても強く生き続ける女たちの姿を描き出す。

 村民の半分がエイズ感染している河南省の“エイズ村”では、売血でエイズに感染・発症しながら、男子(家宝)を出産した女性に会う。男子を産まないと、女として認められない風潮があるからだ。

〈私は女に生まれて、幸せだと本当に思ったのは、家宝を産んだ瞬間だけだった〉

 死を賭しても男子を産むことで、女の意地を示すのである。

 300元で花嫁として売られたチワン族の女性は、家政婦として才覚を現わし、夫より稼ぐようになり、800元を払って離婚した。なのに、今もその元夫や2人の子供と一緒に暮らしている。

〈ただ、はっきりさせたかった。私はもう売られた花嫁ではないと〉

 昔に比べれば、女性の地位は向上したが、決して男尊女卑がなくなったわけではない。しかし、本書に登場する売春婦や人権活動家、セレブ、作家など様々な階層の中国の女たちは、想像を絶するような苦境をものともしない強さを見せる。

〈他者を受け入れ、自分の血肉とあわせて新たな命を生み出すのは、古今東西、女の性だ〉

 中国という国を本当に変えられるのは女たちかもしれない。

※SAPIO2011年4月20日号


関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン