国内

P.バラカン氏 ラジオでの反原発ソング放送禁止の裏事情語る

 震災後、きめ細かい情報や人々を癒す音楽などで、再び高く評価されているラジオ。FMラジオ「Inter FM」でピーター・バラカン氏がDJを務める番組「BARAKAN MORNING」(月~金、7~10時)もそのひとつだが、騒動は4月1日、金曜日の朝に起きた。突然、バラカン氏がこう言い始めたのだ。

「僕は忌野清志郎さんの声が実はあまり好きじゃないので、これまでかけてこなかった。でも、多くのリクエストがあり、詞を見て、今かけるべき曲じゃないかと考え、『ラヴ・ミー・テンダー』をかけようと思ったのですが、局に止められてしまいました」

『ラヴ・ミー・テンダー』とは、RCサクセションが1988年に発表したアルバム「COVERS」の収録曲で、反核・反原発ソングとして知られる。

 氏は穏やかな口調ながら、不満が滲む。その気持ちを抑え切れなかったようで、番組終了時にはこんなセリフも。

「それではまた来週お会いしましょう。僕のクビがつながっていれば……」

 そして、翌月曜日。番組には登場したのだが、まだ怒りが続いているのか、同じくリクエストが多かったという反原発を歌ったRCサクセションの『サマータイム・ブルース』をかけた後に、こんなタイトルの曲をかけていた。

『TELL IT LIKEIT IS』『YOU LIE TOO MUCH』

 直訳すれば、こうなる。「本当のことを言って」「あなたはウソばかり言っている」……。

 一体、何があったのか。バラカン氏を直撃して聞いた。

「僕の番組で紹介するのはほとんどが洋楽なので、清志郎さんの歌をリクエストするリスナーもこれまでいなかった。しかし、原発事故後、驚くほど多くのリスナーから『ラヴ・ミー・テンダー』のリクエストが殺到しました。それに応えるのが誠意のある対応と考えたわけです」

 ところが、局側から思いもかけないことを言われた。

「通常、僕の番組では一切、選曲の制限はありません。ただ、日本語の歌であり、こういう時でもあるので、一言だけ事前に担当者に伝えたところ、今はあまりよくないのでは……と言うのです。“牛乳を飲みてぇ”という歌詞が風評被害につながるのではないかと心配したようです」

 理解できない話ではないが、納得はしていない、とバラカン氏は続ける。

「風評被害を広げることを心配するよりも、風評被害が出ないように情報を全部出すほうが先決だと思います。そもそも風評被害を考えなければいけないのは、正確な情報がないから。東京電力や政府はすべてのデータをわかりやすい形で公表すべきです」

『TELL IT LIKEIT IS』などは、リスナーが東電に向けてリクエストしたのでかけたのだと言う。

“クビ発言”については、「本気でクビになると思ったわけではないけれど、瞬間的に思ったことをつい言い過ぎてしまいました。でも、そのぐらいの覚悟がないとダメでしょう」とも。

 長年『CBSドキュメント』(現在はCBS60ミニッツ)の司会を務めるバラカン氏が、日本の放送局の役割についてこう語る。

「ラジオはリスナーのため、テレビは視聴者のためにあるというのが僕の基本姿勢であり、崩したくはない。しかし、日本の放送界は全体的に、視聴者のためというより、局の利益のためにあると思っていると感じることがある。こういうことを言うと、今度こそ僕の仕事はなくなるかもしれないけれど(苦笑)」

 3.11を境に世界は変わる、とバラカン氏。原発をどうしていくのかは、国民投票などを含めた国民的な議論が必要だと考えているという。

※SAPIO2011年5月4日・11日号

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン