国際情報

盧武鉉・金大中両大統領の早死に「平壌もうでの祟り」説出る

 任期5年の韓国・李明博政権も残り少ない。来年12月には次期大統領選がある。再選はできないため後がない。そろそろ「歴史に残る政権の業績」が気になりはじめるころだ。この「業績」に影響を与える要素のひとつが、北朝鮮との外交でいかなる成果をあげたかだが、韓国の大統領と北朝鮮の関係について産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏が解説する。

 * * *
 韓国の歴代政権はその“業績作り”のため対北関係を利用しようとした。南北関係は民族的課題であり、対北関係で業績を上げると「民族史に残る政権」ということになるからだ。そこで歴代大統領は任期中、南北首脳会談開催にこだわった。

 金大中元大統領しかり盧武鉉前大統領しかり。とくに金大中氏など、初の南北首脳会談(2000年6月)実現でノーベル平和賞をもらっている。

 ただこの二人の大統領はいずれも一昨年亡くなっている。それ以前の大統領(全斗煥、盧泰愚、金泳三)は健在なため、二人の早死(?)について街には「平壌もうでの祟り」という声がある。業績としての評価がいまいちということを含め、だから南北首脳会談は危ういプロジェクトなのだ。

 対北関係で「断固とした姿勢」を維持してきた李明博大統領だが、政権末期を迎えやはり「南北首脳会談ありや、なしや」が話題になっている。南北関係が冷却・膠着状態だけに、打開策として秘密接触説がよくささやかれている。

 しかし李大統領および青瓦台当局は「北に門戸は開いている。いつでもやる気はある。しかし会談のための会談はやらない」と繰り返している。つまり過去の首脳会談のように、こちらが頭を下げ、モノ・カネを出して「会談をやっていただく」式の、イベント風会談はやりたくないというわけだ。

 李明博大統領には、大統領になる前のソウル市長時代だが北朝鮮との付き合いでいくつかのエピソードがある。

 金大中政権の末期の2002年、北朝鮮の経済使節団がソウルにきた時のことだ。晩餐会の席に李明博氏も招かれた。その席でメイン・テーブルにいた北の団長から、李氏に会いたいと伝言があった。李氏が韓国経済の高度成長を実現した経営者出身と知っていたからだ。

 しかし李氏は「会いたい方がやってくるべきで自分がわざわざ立って行くことはない」と断わったというのだ。

 さらにソウル市長の在任末期の2006年(盧武鉉政権時代)、北朝鮮から招請状がきた。「それなりの知事や市長はみんな一度は平壌を訪れている。ソウル市長も任期中にぜひきてはどうか」という。しかし李氏は「訪問料(手土産)は出さない」「陸路で出かけたい」「金正日総書記との会談」を条件にしたため、訪問は実現しなかったという。

 つまり李明博大統領の北朝鮮観は「困っているのは北であって南ではない。なぜわれわれが頭を下げ会談を請う必要があるのか」というものだ。

 そこには北に対する経済的な絶対優位を背景にした経済マインドが働いている。金正日総書記と会ったという名分やカタチ、象徴性にこだわる政治家の政治マインドとは違い、対北観はかなりドライというわけだ。

※SAPIO2011年5月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン