国内

日本で『もしドラ』が売れたのはリーダーシップの指標ないから

 日本のリーダー不足は深刻だ。メディアが連日、後継首相候補の名前を取り沙汰しているが、国家を率いるに足るリーダーシップを備えた政治家は、残念ながら与党にも野党にも全く見当たらない。いま、日本のリーダーシップ教育に何が必要なのか。大前研一氏が解説する。

 * * *
 私は過日、文部科学省の官僚たちと2時間にわたって議論する機会を得たが、海外のリーダーシップ教育について説明すると、みんな目を丸くしていた。

 私は彼らに「教育の目的をどう定義しているのか」と質問した。この問題は、日本国民も根本から考えてみるべきだと思うが、私の答えは、義務教育の目的は「立派な社会人をつくること」であり、大学教育の目的はアカデミックな知識ではなく「“稼ぐ力”をつけること」に尽きる。

 大学の授業料の投資利益率を回収期間10年、無収入期間4年として計算すると、高卒との給与格差が月額9万円必要となる。言い換えれば、9万円分の能力を身につける場所でなければならないのだ。

 この議論で印象的だったのは、文科省の官僚たちが「リーダーシップは天与のものじゃないんですか?」と怪訝な顔で質問してきたことである。

 否、リーダーシップは教育によって育むことができる。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)が大ベストセラーになった背景の一つは、日本にリーダーシップの指標がないからではないかと思う。あの本はリーダーシップ論の入門編のようなものであり、その種の勉強は実は大事なプロセスなのである。

 戦前や昭和40年代までの戦後日本では、地域共同体の中で幅広い年齢層の子供たちが近所の空き地や川原などに集まり、年長者が年下の者の面倒を見ながら遊んでいた。アメリカのサマーキャンプ式リーダーシップ教育に匹敵するものが、日常生活の中にあった。

 実際、かつては日本の政界、経済界にも優れたリーダーが大勢いた。しかし、年齢を超えて遊ぶ環境がほとんどなくなってしまった現在、リーダーシップ教育の重要性は否応なしに増している。

※週刊ポスト2011年7月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト