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原発作業員 月収100万円超で親には月50万円を仕送りする

 菅直人首相が原発対応拠点のJヴィレッジを激励に訪れたその日も、彼は現場で働いていた。その作業服の背中には、「菅直人1回現場に来てみろよ」とある。震災から4か月以上経ち、いま明かされる「フクシマ50」の素顔。原発でともに作業するフリーライター・鈴木智彦氏の、刮目レポートである。

 * * *
「フクシマ50」の若いひとりを、佐藤としておこう。彼は3号機が水素爆発した直後、「東京電力福島第一原発」(以下1F)への“召集令状”を受け取り、地獄絵図の中に降り立った協力会社幹部だ。

 ある夕方、午後6時、佐藤はすっかりできあがっていた。1Fの原発作業員は朝が早い。一般的なサラリーマンが帰宅し始める頃は、とっくにできあがっている。

 酔いが回った彼は「今月はなんだかんだで、親に50万も仕送りしちゃった」と、自慢げな声で、ポーズだけの愚痴をこぼした。話したそうなタイミングに見えたので慎重に流れを読んで質問を重ねた。

「じゃあ、ほとんど給料ないんでしょ?」
「まだまだいけます。あと倍はオッケーです」

 それから換算して、彼の月給は100万円超えだと推測し、ウラをとった。などと書くとご大層だが、それは簡単な作業だった。佐藤が次のスナックで、財布に入っていた給与明細を見せてくれたのである。

「うそー、マジ?」

 名古屋からいわき湯本に流れ着いたホステスは、金額をみて目の色を変えた。

「結婚しよう」
「いいよ。式はどこで挙げる?」
「ハワイにしようぜ!」
「ほんと、マジ?」
「でもいわきの、ね」

 いわきのハワイとは、観光の目玉だった『スパリゾート・ハワイアン』のことだ。映画『フラガール』の舞台ともなったここは、壊滅的な被害を受け、急ピッチで新しいビルを建設中である。

 フクシマ50とホステスが、ともに本気だったとしても、二人の夢が叶うのは物理的に最速で今年の秋だ。もちろん、まだまだ1Fは終息しない。新郎の休みが取れないので、夢の実現はさらに先となるはずだ。

 それでも佐藤は十分に満足だろう。

「おじいちゃんとおばあちゃんが、近所に『うちの孫はフクシマ50だ』って自慢してるんだって聞いて、俺、すっごく嬉しくて」

 佐藤は世間が放射能におびえる現在、幸せの絶頂にある。なんとも皮肉な話である。

※週刊ポスト2011年8月12日号

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