国内

財務省が復興予算要求額に“上限を定めぬ”本当の狙いは増税

 8月19日付けの産経新聞は、「政府は18日、平成24年度当初予算で各省庁が財務省に提出する概算要求について、一般歳出とは別枠の東日本大震災の復興関連は、要求額に上限を定めない方針を固めた」と報じた。この「方針を固めた」に込められた意味を、東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。
 
 * * *
 政府が正式決定する前に流れをつくるために、官僚が特定の新聞に「方針を固めた」原稿を書かせてしまう手法がよく使われる。先に特ダネとして記事を書かせて記者との関係を良好にしておくと、その後も議論の相場誘導を図りやすい利点もある。
 
 この例で言えば、復興予算要求額に「上限を定めない方針を固めた」というのは、官僚の高等戦術の臭いがぷんぷんする。上限を決めないのだから、予算は分捕り放題になるかもしれない。それだと「財務省は歳出を削りたいんだから困るんじゃないか」と思われるだろう。そうではないのだ。
 
 財務省の本当の狙いは増税である。増税さえ確実になれば、歳出は膨らんでもかまわない。むしろ乱暴なくらい歳出が膨らまないと、肝心の増税の必要性が薄れてしまう。実は、そちらのほうがはるかに困るのだ。

 いまの段階では「上限を設けない方針」を表に出して、歳出要求がどんどん積み上がるのを放置する。要求が膨らんでいい加減なところに来たら、おもむろに「今年はこのくらいでなんとか。でも増税しなければとてもダメですね」と話を落とす。
 
 財務省はそんな作戦を考えているはずだ。歳出を適当に膨らませて増税を確実にする。それは財務官僚にとって、口が裂けても言わない伝統の基本的テクニックである。だからいま「上限を設けない方針を固めた」という記事が出るのは、財務官僚にとってウェルカムである。
 
 実際には、復興基本方針で1次補正と2次補正を除いて使える復旧・復興予算は5年間で残り13兆円程度と決まっているから上限はある。財務省はいずれ増税が決まるころに来年度の上限も決着させる腹だろう。

※週刊ポスト2011年9月9日号

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン