ライフ

伝説のピンク映画女優 取材依頼を一旦断るが、その後受ける

【書評】『昭和桃色(ピンク)映画館 まぼろしの女優、伝説の性豪、闇の中の活動家たち』(鈴木義昭著/社会評論社/2310円)
【評者】川本三郎

 * * *
 香取環という女優を御存知だろうか。あるいは内田高子を。乱孝寿を。五十歳以上の人間なら記憶にあるかもしれない。

 東京オリンピックの直前、その経済成長のなかでピンク映画が誕生した。第一作は昭和三十七年公開の「肉体の市場」といわれる。翌年の女ターザンもの「情欲の洞窟」公開に際しブルーフィルムならぬピンク映画の語が生まれた。

「肉体」や「情欲」という言葉だけでも刺激的だった時代。大手映画会社では敬遠された官能的映画が独立プロで次々と作られ、ひそかな人気を得ていった。香取環、内田高子、乱孝寿はいずれも初期のピンク映画で活躍し人気が高かった女優。

 ピンク映画の歴史を追い続けている鈴木義昭さんは若い頃にピンク映画館でアルバイトをしていたというほどのファン。そして引退して姿を消した香取環と内田高子に会うことに成功した。

 この二人の対談は、あの時代、ピンク映画に心ときめかした世代には実に懐かしく、かつ貴重。

 ピンク映画の女優は裸になるからあくまでもひかげの花。現代のようにAV女優が堂々と表に出る時代とは違う。

 だから以前、鈴木義昭さんはようやく香取環の行方を探し出し、インタヴューを申し込んだ時、断られたという。結婚して家庭のある女性としては当然だろう。

 それが二〇〇七年にはじめてインタヴューに応じてくれた。その後内田高子との対談という最高の形も実現した。もうお子さんたちも大人になったからだろう。

 内田高子は娘にはじめて自分の映画を見せた時、「綺麗だね」と言ってくれたという。香取環も子供は一人の役者として冷静に評価してくれるという。素晴しい。

 ピンク映画の会社、国映を作った矢元照雄のインタヴューも面白い。北海道で郵便局長をしていた人ではじめは教育映画を作っていた。それが転じてピンクへ。波乱の人生だ。

 消息が分らないという松井康子や扇町京子もぜひ探して欲しい。

※週刊ポスト2011年9月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025年に成年式を終えられた悠仁さま
《皇族一人あたりの警備費が表に出ないワケ》悠仁さま「公務全出席」報道で「警備費」に懸念も──側衛との意外な関係 
NEWSポストセブン
女優の天野はな(左)と木竜麻生(右)(事務所HPより)
《朝ドラや大河だけじゃなかった》天野はな、木竜麻生、森田望智、伊藤万理華…NHKによる「見い出し・囲い込んで・育てる」パターンでブレイクするアラサー女優たち
NEWSポストセブン
「住吉会幸平一家特別対策本部」の看板を設置する警視庁暴力団対策課の葛城俊英課長(右)と大場俊彦管理官(時事通信フォト)
《トクリュウと暴力団》四次団体の組長クラス「上納金払えない…」で手を染めることも 「ヤクザは闇バイト禁止」も住吉会から逮捕者多数か
NEWSポストセブン
(朝鮮通信=時事)
《顔が変わった?》北朝鮮・金正恩総書記の愛娘ジュエ氏「あか抜けて、口元には上品さも」85日ぶり登場で“驚きの姿”──成長期かそれとも……バツグンの存在感を発揮 
NEWSポストセブン
秋篠宮ご夫妻と佳子さまが揃って会場を訪れるのは今年で4回目となる、花の展覧会。今年は栃木県の県花のヤシオツツジや栃木県産のカーネション、バラを使った作品をご覧になった (撮影/JMPA)
秋篠宮ご夫妻と佳子さま、花に囲まれ笑顔満開 『関東東海花の展覧会』をご鑑賞、フォトブースでは一家揃って記念撮影も 
女性セブン
1992年、黒海艦隊の取材でクリミアを訪れた(撮影/山本皓一)
《追悼・落合信彦氏》エルサレムでは銃撃に遭遇したことも… それでもなお現場取材を続けた理由「“今”を必死で生きる気持ちを忘れないでいたいから」の言葉
週刊ポスト
2025年11月、ホーコン王太子とメッテ=マリット妃
《彼女は17歳だよ。きっと楽しいと思う》ノルウェー王室激震、エプスタイン元被告と次期王妃の“黒塗り”メール――息子マリウスは“性的暴行”裁判渦中 
NEWSポストセブン
現地では大きな問題に(時事通信フォト)
《トゥクトゥク後部座席での行為にタイ現地の人々が激怒》フランス人観光客の“公開露出”に目撃者は「丸見えだった」 入国ブラックリストに
NEWSポストセブン
父・落合信彦氏の葬儀で喪主を務めた落合陽一氏
「落合信彦の息子という記述を消し続ける時代があった」落合陽一氏が明かした、父について語り始めた理由“人の真価は亡くなった時に分かる”【インタビュー】
NEWSポストセブン
本来であれば、このオフは完成した別荘で過ごせるはずだった大谷翔平(写真/アフロ)
《大谷翔平のハワイ訴訟問題》原告は徹底抗戦、大谷サイドの棄却申し立てに証拠開示を要求 大谷の“ギャラなどの契約内容”“資産運用の内幕”が晒される可能性も浮上 
女性セブン
表舞台から姿を消して約1年が経つ中居正広
《キャップ脱いだ白髪交じりの黒髪に…》「引退」語った中居正広氏、水面下で応じていた滝沢秀明氏からの“特別オファー” 
NEWSポストセブン
中村獅童と竹内結子さん(時事通信フォト)
《一日として忘れたことはありません》中村獅童、歌舞伎役者にならなかった「竹内結子さんとの愛息」への想い【博多座で親子共演】
NEWSポストセブン