国際情報

台湾国防部 中国による米軍沖縄基地への「真珠湾攻撃」警告

 尖閣諸島、竹島と、日本は領土問題に晒されているが、では、この時代に自衛隊が果たすべき役割とは何なのか。大前研一氏は、いまこそ日本の自衛隊に、新たなミッションを与えるべきだと指摘する。

 * * *
 自衛隊の新しいミッションは「領海侵犯」への対処だ。日本近海では北朝鮮の工作船とみられる不審船が頻繁に出没し、中国漁船の違法操業も後を絶たない。

 しかし、今の日本の法律では、まず領海侵犯に対処するのは自衛隊ではなく、海上保安庁の役割である。たとえば、2001年12月に発生した九州南西海域工作船事件や2010年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件で、最前線で対処したのは海上保安庁の巡視船だ。どちらの事件でも海上自衛隊も出動はしているが、よほどのことがない限り、海上自衛隊に事実上の実戦命令(治安出動)である「海上警備行動」は発令されないのである。

 だが、北朝鮮の工作船はもとより、今後は中国の武装した艦隊が尖閣諸島に接近してきたりする可能性も否定できないので、領海侵犯については海上警備行動の発令なしに海上自衛隊が対処できるようにすべきではないだろうか。要するに日本の国民と国土を守ることは、基本的に自衛隊のミッションとすべきというのが私の考えである。

 そして、その要となるのが「沖縄」だ。あまり注目されていないが、台湾の国防部(国防省)は7月に発表した2011年版の『国防白書』で、中国軍は「2020年までに、台湾海峡有事に対する外国軍の介入を防いだ上で、台湾統一に向けた大規模作戦を実行する能力を持つ」ことを最重要目標にして軍備を急ピッチで増強していると分析し、新たに就航した空母ワリヤーグをはじめとする海軍力のほか、米空母が有事の際に台湾海峡に近づくことを防ぐ対艦弾道ミサイル「東風21D」の量産・配備も2010年から始まった、としている。
 
これはどういうことか? 「2020年までに、外国軍の介入を防いだ上で、台湾統一に向けた大規模作戦を実行する能力を持つ」ということは、つまり中国が10年以内に台湾から500kmほど北の沖縄に駐留している米軍を無力化できるようになる、ということである。言い換えれば、米軍の嘉手納基地や普天間飛行場への「中国による真珠湾攻撃」がなされる可能性もある、という報告書なのだ。

 この分析は、日本にとって非常に重いと思う。台湾の国防部は親中路線の馬英九政権下で予算を削られているので、中国脅威論を煽っているという側面もあるだろうが、中国軍の動向を世界で最も知悉しているのは彼らだから、決して絵空事ではない。

 日本政府はその信憑性を真剣に分析した上で、もし中国が沖縄の米軍を壊滅状態にして台湾海峡を封鎖した時に日本はどうするのか? 沖縄の米軍基地が攻撃されれば沖縄県民に被害者が出ることも避けられないと予想されるが、それでも専守防衛で手をこまぬいているのか? 沖縄を守る決意があるのか? という議論を、ただちに始めるべきだと思うのである。

※SAPIO2011年10月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン