スポーツ

元阪神の川藤幸三 巨人と阪神のCS狙い三位争いに「情けない」

「浪速の春団治」元阪神の川藤幸三インタビュー

「ワシが川藤や!」。代打一筋19年、「浪速の春団治」といわれた元阪神タイガースの川藤幸三さんの爆笑インタビュー。第2回は「川藤、セ・リーグを叱る!?」。(聞き手=神田憲行)

*  * *
――川藤さんは阪神タイガースのOB会会長されているので言いにくいんですが、関東のスポーツ新聞で一面トップになるのがパ・リーグが多いんですよ。

川藤:まあ、情けないわ! 昔は「人気のセ、実力のパ」といわれたけれど、今は人気も実力もパやからね。パの三位に負けるとか、あり得へんやろ(笑)。(注・昨年日本シリーズはパリーグ三位でクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜いたロッテが制した)

人気でパ・リーグというのは、簡単な話、アマ時代に話題になった選手が集まってるからです。ダルビッシュ、田中将大、斎藤佑樹とか。昔は「何が何でも巨人に入りたいです」という選手が多かったけれど、今はそういう時代やなくなった。

――セはヤクルトの独走なんですが、チーム打率はそこそこあっても防御率は悪い(注・9月17日現在、チーム打率がリーグ2位、同防御率が4位)。なのになぜこの成績を残せるのでしょうか。

川藤:一年のリーグ戦みたらヤクルトにいっとるな。大きな逆転勝ちあるし、そんなん同点にすんのかとか、これはなんぼなんでも勝てんやろうというのをポポポーンと勝つ。なにかやっぱり大きな動きが出てきとる。野球には9回までの勝負所のポイントがあって、そのポイントを外すチームは負ける。ヤクルトは勝負所で点が取れる。一球にかける集中力と執念があるんや。

監督ちゅうのは勝たすために選手をどう気持ちよくグラウンドに送り出すかだけですからね。ヤクルトの連中の話をきけば、小川淳司監督を胴上げするんやという思いが伝わってきますね。監督だけが偉くてもアカンし、実力ある選手がひとりふたりいるというだけでもアカン。ヤクルトにはバントできる人間、自分を犠牲にできる選手もいる。

――そんなに小川監督は選手から慕われているんですか。

川藤:小川さんは二軍監督も長いから、チームの若手は二軍監督の時代から背中をじぃとみてきたわけやからな。だから若い選手が頑張ってるやろ。あの監督なにやっとんやあ、と疑問持ちながらやるのとは違うからね。

――一方の巨人と阪神はCS狙いの三位争い……。

川藤:情けないわね、三位争いとか。阪神と巨人は統一球に早いこと頭と気持ちの切り替えが出来無かったということでしょう(注・今年からプロ野球は統一球という低反発のボールを使用。ホームランが出にくいと言われる)。いちばん最後まで響いてきている。ホームラン頼みのチームだもん。逆にパリーグの実力投手は防御率1点代何人おるんよ。

ワシの時代かとひとりおるかおらんかぐらいやったで。逆に3割打者が少ない。昔なんか3割3分で首位打者。去年なんか3割5分や。今年は3割打ったら首位打者や。極端にいうたら5分違うんやから、どんだけピッチャーは攻めやすいか。ヤクルトはホームランで勝負するチームやないからよかった。

――選手個人に目を移しますと、かつての川藤さんみたいな破天荒な選手がいなくなりました。私は「川藤シート」のエピソードが大好きなんですよ。(注・1983年、球団から引退勧告を受けた川藤さんが「給料タダでもいいからいさしてくれ」と年俸の大幅ダウンで現役続行が決まったところ、関西の大物タレントたちが「じゃ俺たちが川藤の給料だそう」とヒット一本につき1万円を貯めて、シーズンオフに手渡そうとした。しかし川藤さんはそのお金で甲子園の年間シート席を購入して、身体障害者のファンを招待した。これが「川藤シート」と呼ばれた)

川藤:そういうてくれるのは嬉しいけれど、自分でシートこうて配ったりとか、施設に慰問とか、今の時代の選手の方が社会貢献が多いと思いますよ。

――でも今の時代の選手って、巨額の年俸を手にしてるじゃないですか。当時のクビなりかけの川藤さんの年俸と比べたら、金額の重みが違います。

川藤:あ、それはそうやな(笑)。でも世間が「重みが違う」とおもてくれたから、ワシも生きてこれた。これが計算でやっとったら、誰も「川藤ようやった」と思わないでしょ。底の浅い奴と世間も読むでしょう。川藤シートはワシのヒット一本を1万円貯めておいて渡すんやいうから、なんでワシが関係ない人様のカネもらわんとあかんねんやと断ったんや。そしたら芸人さんも「いったん出したカネは引き取られへん」いうから、じゃシート買うか、足りへんぶんはワシが出すいうて。カネないのに逆に出費になっとるからね(笑)。

【川藤幸三さんプロフィール】
1949年、福井県生まれ、62歳。福井・若狭高からドラフト9位で阪神入り。現役生活19年のほとんどを代打家業で送り、85年の阪神日本一にも貢献した。生涯安打数211、本塁打数16。現在はプロ野球評論家と建設会社社長という二足のわらじを履く。最新刊に「代打人生論~ピンチで必要とされる生き方~」(扶桑社新書)



関連記事

トピックス

中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン