国内

200数十億円のナベツネタワー建設に社内から“現実路線を”

プロ野球巨人軍のコーチ人事をめぐりナベツネこと渡辺恒雄・読売巨人軍取締役会長(読売新聞グループ本社会長兼主筆)を公然と批判した清武英利・読売巨人軍専務取締役球団代表が、11月18日、ついに解任された。この事件は巨人軍のみならず読売グループの中にも内紛の火種が存在することをうかがわせた。

グループの中核である読売新聞社では、昨年9月から東京・大手町の本社建て替え事業に着手し、地上33階(200メートル)の高層ビル建設を進めている。人呼んで「ナベツネタワー」の総事業費は「200数十億円」(同社関係者)とされるビッグプロジェクトだ。

渡辺氏が昨年4月の同社入社式でぶった大演説が、鼻息の荒さを伝える。

「今や不滅の読売を象徴する超高層新社屋をこの大手町に建設することは、私の生涯の最後の使命である。このデフレによる営業収入減の中で無謀ではないか、との批判も出るかもしれないが、わが社の資産力、経営力からしてもいささかの不安もない」

こういい放つが、同社の不動産開発は東京だけではない。大阪では関西電力と共同で豊中市の「よみうり文化センター」を54階建てのマンションや複合施設に建て替える計画があり、総事業費は「300億円は下らない」(関西のデベロッパー)と見られている。

だが、本当に「いささかの不安もない」かは疑問視されている。新聞、出版不況はいまだ続いており、読売とて例外ではない。

読売新聞の広告収入は9年前(2002年3月期)の約1507億円から、2011年3月期は約801億円に半減している。渡辺氏が販売店の総会(今年7月)で明らかにした数字だ。

部数の落ち込みは業界全体の問題ではあるが、日本ABC協会の調査では、読売の販売部数は今年に入って1000万部を割り、さらに、「3月の東日本大震災後に10数万部減った」(同社中堅)と苦境にある。

巨人戦の観客動員減がそれに追い討ちをかける。今季の主催試合の入場者数は約272万人で昨年より24万人もダウンした。かつてプラチナチケットとして新聞拡販の切り札となった「巨人戦」は、今やダフ屋が投げ売りしている状態だ。

放送ジャーナリストの金沢誠氏が語る。

「読売グループ本社の決算(2011年3月期)を見ると、“帝国”の実情はかなり厳しいことがうかがえます。営業損益は1億800万円の赤字だが、関連会社の日本テレビが過去最高益を出し、日テレ株の配当金が入って最終損益が黒字になっている。本業が苦しいのに本社ビル建設で巨額の投資が必要な本社を、関連会社の日テレが救済した格好です」

大手信用調査機関の調べでも、読売グループの連結ベースの売上高は毎年100億円ペースで減り続けている。「巨大ビル」「買収と拡大」「何が何でも1000万部」というナベツネ路線は経営の常識からして危険であり、現場から「現実路線を」という声が出たことこそ当然だろう。

「(今年6月に)渡辺方針に背いて更迭された内山斉・前社長ら4人組にかわって抜擢されたのが、白石興二郎・現グループ本社社長ら新側近衆ですが、実は、清武氏はその中心人物の1人だった。それだけに、新側近から早くも造反者が出たことは、渡辺主筆にとってもショックが大きかったようです」(読売グループ会社の元経営幹部)

※週刊ポスト2011年12月2日号

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト