国際情報

拉致情報提供者 「日本のメディアは嘘をついてもわからない」

日本の拉致被害者の名前が記載された北朝鮮の平壌住民名簿が流出し、物議を醸している。日本の一部新聞は、過去にも「3億円で名簿を買い取らないか」と、高額で売りに出されていたと報じた。これは「拉致情報ビジネス」ともいえるものだが、その実態はどうなっているのか。朝鮮半島情勢に詳しい辺真一氏がレポートする。

* * *
悪徳商法の極めつけは2005年1月のニセ写真事件である。拉致された疑いが濃厚とされる日本人男女2人について、ある脱北男性が北朝鮮で撮られたとされる写真を日本のテレビ局に提供。持ち込まれたこの写真と2人の昔の写真を都内の歯科大学の専門家が鑑定し、男性は「同一人物とみて差し支えない」、女性は「同一人物の可能性が高い」と中間報告したため大騒ぎになった。

ところが、テレビで公開された写真を見た脱北者が「これは私だ」と名乗りを上げたため、インチキ写真であることが判明。写真提供者の脱北男性は「金欲しさにニセモノを渡した」と告白している。この男性が人道問題を金儲けの道具にしていたことは「日本人拉致被害者が北朝鮮で死のうと死ぬまいと私には関係ない」などと話していることからも自明だ。

今、韓国にいる脱北者は約2万1000人。最初に政府から一定の定着資金をもらうが、商売のやり方を知らない人がほとんどで、北朝鮮で学んだ知識や技術は韓国でほとんど役に立たず、またたく間に困窮してしまう。そんな彼らの一部が目をつけたのが、情報を捏造して日本のマスコミに高く売りつける「拉致情報ビジネス」なのである。

彼らは日本のマスコミを完全になめている。

「多少嘘をついても、誇張しても、分かりはしない。所詮、裏が取れない話なのだから」と開き直っているのだ。先に紹介した事例は氷山の一角にすぎない。

こうした拉致被害者の家族、ひいては日本国民を愚弄する「拉致ビジネス」の横行は言語道断で許しがたいが、彼らの捏造情報を精査、検証することなく垂れ流す日本のマスコミにも相応の責任があることを指摘しておきたい。

※SAPIO2011年12月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン