国際情報

投資家に愛された中国経済 “思春期”過ぎて深刻な“老化”進む

いま中国では、都市部で売り出されるマンション価格が3分の1となり、全国の中小企業を支える民間金融の破綻や持ち逃げが相次いでいる。その背景には、どんな問題があるのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

* * *

2011年は中国経済が一つの転換点を迎えたことを象徴する年でもあった。

まず上昇一辺倒だった不動産価格が下落傾向に転じたことだ。未だ上昇を続ける内陸部の影響もあって全体としては数%の下落だが都市部で売り出されるマンション価格は「三分の一になった」といったニュースも聞かれるほどだ。

そして浙江省や広東省では輸出に携わる中小の製造業者の倒産が相次ぎ、民間経済(国有経済に対して)の聖地とされた温州市では民間金融(地下銀行とも呼ばれ、国有銀行が相手にしない全国の中小企業を支えている)の破たんや持ち逃げといった事件が相次ぎ、企業経営者に間には中国に見切りを付けて海外に夜逃げする者も相次いだ。

その深刻な影響は、昨年一年間で温家宝総理が3回も温州を訪れていることでも分かるはずだ。

こうした問題が次々と明らかになった背景には二つの原因が考えられる。一つは不動産バブルに代表される問題ともう一つは中国経済そのものの失速である。

中国経済に起きた変化を人体にたとえるのならばバブルは処方箋のある一過性の病気。一方の景気の減速は、抗うことのできない老化のようなものだ。つまり発展を謳歌できた“思春期”は過ぎたということだ

これを受けて中国ではいま「中所得国の罠だ」、「ルイスの転換点」だといった言葉が溢れているが、これはいずれも中国が新たな発展段階に直面していることを示したものだ。

日本では何もかも「バブル崩壊」の一言で片づけているが、深刻なのはむしろ老化だ。黙っていても投資家に愛された中国が、若さを失ってもその魅力を保てるのか。その真価が問われる一年になることだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

STARTO ENTERTAINMENTの取締役CMOを退任することがわかった井ノ原快彦
《STARTO社取締役を退任》井ノ原快彦、国分太一の“コンプラ違反”に悲しみ…ジャニー喜多川氏の「家族葬」では一緒に司会
NEWSポストセブン
東京都内の映画館で流されたオンラインカジノの違法性を訴える警察庁の広報動画=東京都新宿区[警察庁提供](時事通信フォト)
《フジ社員だけじゃない》オンラインカジノ捜査に警察が示した「本気度」 次のターゲットはインフルエンサーか、280億円以上つぎ込んだ男は逮捕
NEWSポストセブン
国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている(時事通信フォト)
「国政に再挑戦する意志に変わりはございません」山尾志桜里氏が国民民主と“怒りの完全決別”《榛葉幹事長からの政策顧問就任打診は「お断り申し上げました」》
NEWSポストセブン
中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト
参政党の神谷宗幣・代表(時事通信フォト)
《自民・れいわ・維新の票を食った》都議選で大躍進「参政党現象」の実態 「流れたのは“無党派層”ではなく“無関心層”」で、単なる「極右勢力の台頭」と言い切れない本質
週刊ポスト
苦境に立たされているフジの清水賢治社長(左/時事通信フォト)、書類送検された山本賢太アナ(右=フジホームページより)
“オンカジ汚染”のフジテレビに迫る2つの危機 芋づる式に社員が摘発の懸念、モノ言う株主からさらに“ガバナンス不全”追及も
週刊ポスト
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
NEWSポストセブン