国内

八ッ場ダム建設再開 国交省と下請け企業のマッチポンプでは

野田政権は昨年暮れ、公約だった八ッ場ダムの建設中止方針を覆し、「建設再開」を決めたが、その背景には何があったのか? ジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

* * *
建設再開の舞台裏は国土交通省官僚の自作自演だった。その立役者となったのが「天下りコンサルタント」だ。手元にそのことを示す1枚の文書がある。

「関東地方整備局発出八ッ場ダム報告書関連業務」というタイトルで、受注者である7社(10件)の公益法人やコンサル、発注者機関の名前、そして契約金額が並ぶ。はたしてこれは何を意味するのか。

八ッ場ダムの本体工事は鳩山内閣時代にいったん凍結され、時の前原誠司・国交相が省内に有識者会議を設置して国の直轄ダム事業全体の見直しを指示した。そして建設再開に動く決め手になったのが、建設を担当する同省関東地方整備局が昨年11月にまとめた「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書」だ。そのなかで、利根川水系の洪水調整や利水、コスト面を総合的に検討した結果、〈最も有利な案は現行計画案(八ッ場ダム案)であると評価した〉――と、建設続行を打ち出した。

本誌が入手した文書は、この報告書の策定にあたって、環境への影響や治水、利水面などの調査・検討業務をどの業者に発注したかを示すものである。国交省から民主党に提出された。

契約金額は合計約3億4343万円。驚くのは、事業再開の調査を行なった7社すべてが、国交省OBの天下り先だったことである。

例えば、「環境影響検討資料整理業務」(約1961万円)を受注した財団法人・ダム水源地環境整備センターは理事長の渡邉和足・元河川局長はじめ理事に3人の国交省OBがいる。

「利根川上流部治水検討業務」など3件、総額約1億474万円の調査を受注した建設技術研究所は副社長が同省OBで、八ッ場のシンボルである巨大な湖面2号橋「不動大橋」の設計も手がけた。「江戸川河道整備検討業務」(3990万円)を受注した「いであ」は専務と常務のほかに、人事院資料によると、幹部に3人のOBが天下っている。

ダム関連事業の設計などを直接受注して建設続行したい天下りコンサルが、「建設中止が妥当」という結果を出すとは思えない。国交省がOB企業を下請けに使って建設再開の結論を出させた露骨なマッチポンプではないか。

※週刊ポスト2012年2月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン