国内

第2のミシンブーム到来か 被災地に贈りたいという人急増

「大阪の岸和田が舞台のNHK連続テレビ小説『カーネーション』が始まった昨年9月以降、ミシンの創作活動スペースやミシン教室などへの問い合わせの数が増えています」

というのは、大阪で人気のミシンも使えるリフォームショップ『Jouer jouer』の店長・小西能理子さん。また、『近畿ブラザー』広報担当者も、「昨年9月以降、家庭用ミシンの販売・修理やミシンの講習も好調です」と証言する。

このように静かなブームになっているミシンだが、実は日本での歴史は150年以上も前に遡る。1790年ごろにイギリスで発明されたミシンは、ペリーによって日本の将軍家に贈られたのが最初といわれている。

その後、明治にはいり、軍服の大量生産をするためにミシンが大量に輸入され、第二次世界大戦後、1960~1970年代にはいると第1次ミシンブームが到来する。ミシン博物館館長の橋和田證さんはこう話す。

「当時ミシンは、テレビ、洗濯機、冷蔵庫の次に欲しいもののひとつであり、三面鏡と並び嫁入り道具として持つ人も多く、5万5000円~10万円のものが売れていました」

その後、日本ではバブル景気となり、ミシンで手作りするよりも既製品を買うのが普通になると、ミシン人気は急落。家庭から姿を消し始める。しかし、2000年代になると再びブームの兆しが。

「エコが叫ばれるようになり、手作りや古いものを再利用するリサイクルやリフォームなどが見直され始めると、ミシンに興味を持つ人たちが再び増え始めたんです」(橋和田さん)

そして昨年、東日本大震災が発生。ミシン販売修理から宅配までを行う『あんしんミシン』では、復興支援としてミシンを提供したほか、ミシンの値段を下げて販売も開始。その情報をホームページにのせたところ、問い合わせが殺到した。

「“ボランティアでミシンを贈りたい”“ミシンを使って支援をしたい”という人たちの問い合わせが相次ぎ驚きました」(広報担当の松岡宣道さん)

震災をきっかけに、長年の夢だった『ミシンカフェ(お茶しながらミシンが使えるカフェ)&ラウンジnico』をオープンさせたオーナーの中嶌ユキさんは、「利用者には、手作りの良さを子供に伝えたいという親御さんが増えています」と語る。

いまや家庭用ミシンは1万円を切るものから15万円くらいまであり、1万~2万円台の商品が売れている。置いておくスペースがない、買っても使いこなせるか心配など、購入に躊躇する人は、前出『あんしんミシン』の宅配レンタルサービスを利用するという手もある。このような新サービスも続々登場し、ミシンはより身近になっているのだ。

第2のミシンブームの陰には、人の温もりや古いものを大事にしたいという、いまの日本人の思いがあるのかもしれない。

※女性セブン2012年2月16日号

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン