国内

放射能除染で 建設業者「これでしばらく食いっぱぐれない」

〈急募 除染作業員 誰でもできる簡単なお仕事〉

 インターネットの求人情報には連日、福島などでの除染作業員の募集要項にこんな文字が躍る。仕事の内容は、福島原発20キロ圏内での除染作業だ。待遇は1日2万円、4時間労働で、無料宿泊施設に泊まれて労災も適用される。それにしても実に軽い文句の募集である。

 そもそも「除染」とはどのような作業なのか、理解している人は少ない。地元の建設業者が説明する。

「民家の場合は、屋根に上り、高圧洗浄機で瓦の上を洗い流す。土壌の洗浄は土の表面を剥がして処分するのが基本。1時間も洗浄機を持てば手が震えるし、掘り返すのは当然ながら重労働ですが、工事としては極めて単純作業です」

 要は「水をかける」か「土を掘り返す」のが主な作業ということ。

 しかし、その「単純作業」がカネの成る木に化ける。

 野田佳彦首相は、年頭会見で「除染をしっかりすることが福島の再生に繋がる」と力説し、費用は「1兆円規模」を方針に掲げた。

 それを受けて、除染を担当する環境省は2011年度第三次補正予算に2459億円、2012年度当初予算に4513億円を計上した。さらに2013年度負担分を合わせると、1兆円を超える。

 福島第一原発から半径20キロ以内の警戒区域、放射線量が年間20ミリシーベルトを超える計画的避難区域は、国が直轄で除染を行なう。それ以外の年間1ミリシーベルト以上の地域は「汚染状況重点調査地域」として指定され、必要に応じて自治体が除染するが、費用は原則国が負担する。

 政府が1月末に示した「工程表」では2014年3月末まで2年間かけて、放射線量を半分にし、長期的には年間1ミリシーベルト以下を目指すという。

 この「長期的」というのが、業者にとっては旨味があるのだ。福島県内の中堅建設会社の幹部はこう話す。

「除染をしても民家の屋根などの線量は3割程度しか下がらず、2年で終わるはずがない。本気で1ミリシーベルト以下まで除染するなら20~30年かかる。当分は食いっぱぐれのない仕事になる」

 すでに、除染計画を策定している福島・飯舘村では、民家から森林まで除染する概算費用を、20年間で約3200億円と見込んでいる。南相馬市は今後2年間で、住宅や市街地道路の除染に約400億円をかけて、大手ゼネコン・竹中工務店を中心とするJV(※)を業者に選定した。

 除染費用にいったいいくらかかるのか。あるゼネコン幹部は、こう算盤を弾く。

「国の除染単価は400平方メートルの住宅で70万円だが、これではまともな作業はできないので、数倍の予算は必要です。これが20年、30年と続き、土壌の中間処理施設などの建設も必要になると30兆円は下らない」

※JV/ジョイントベンチャーの略。複数の業者が共同で工事を受注する共同企業体のこと。

※週刊ポスト2012年3月16日号

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
“もしトラ”リスクも…(写真/AFP=時事)
【緊迫する中東情勢】イラン・イスラエルの報復合戦、エスカレートすれば日本にも影響 “もしトラ”リスクが顕在化
週刊ポスト