ライフ

「年寄りは朝が早い」をスイスのフライブルグ大学博士が証明

 白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏によれば、年をとると朝早く目が覚めるのは時計遺伝子の影響だという。以下、白澤氏の解説だ。

 * * *
 動物の体内には1日24時間の時を刻んでいる体内時計(概日リズム)がある。この体内時計が遅れるといつしか深夜族になり、ひどくなると昼夜が逆転してしまうこともある。海外旅行をしたときに、すぐに時差を調整できないのもこの体内時計がしばらくの間は自国にセットされているためである。

 若い頃は朝が苦手な人が多く、年をとると逆に夜早い時間に眠くなり朝早く目が覚めてしまう。この睡眠の相(時間帯)が前側にずれてしまう状態を「睡眠相前進症候群」と呼んでいるが、加齢に伴い睡眠相は前側にずれる傾向があり、高齢者に多く見られる睡眠障害の一つになっている。

 スイスのフライブルグ大学医学部生化学のコニー・ジュード博士は、若齢者と高齢者の口腔粘膜の細胞を採取し時計遺伝子パーツー(Per2)の発現量を比較した。すると高齢者の時計遺伝子の発現量は若齢者に比べて低くなっていた。さらに朝、昼間、夜に分けて時計遺伝子の発現を検討すると、いずれの時間帯でも加齢性の発現低下が認められた。年をとると朝早く目が覚めてしまい夜は早い時間に眠くなるのは、時計遺伝子の発現量低下が原因の一つであることが分かったのである。

 これまでの研究で、早朝や夕方に青い光を浴びると10時間後に時計遺伝子の発現が増える効果が知られていたが、今回の研究で年をとると青い光の効果も減弱することが分かった。加齢に伴う時計遺伝子の機能の低下の原因は未だに不明だが、早朝や夕方に太陽の光を浴びて時計遺伝子をリセットし、体内時計を若々しく保つことは高齢期に生体リズムを維持するために重要であることには変わりはない。

※週刊ポスト2012年3月30日号

関連キーワード

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン