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医師会の自民支持派 野田政権への不満利用し会長職奪還画策

 消費税増税を打ち出した野田政権だが、発足当時に比べ支持率も下がり、いよいよ先行きが大きく陰り始めた。

 2年半前、総選挙の指揮をとった小沢一郎・民主党代表代行(当時)は、経済界をはじめ、自民党の集票マシンといわれた日本医師会、農協、特定郵便局長会、地域の商工団体など保守地盤を切り崩し、政権交代の原動力にした。自民党政治の下で既得権の恩恵を受けてきた業界まで、官僚主導政治による経済の行き詰まりで展望を失って政権交代による改革に期待した。

 その民主党の新たな支持基盤が、野田政権の官僚回帰で音を立てて崩れている。民主党議員を多く手がける選挙プランナーが語る。

「政権交代直後は、民主党議員の新年会には地元の経済団体の幹部や医師会などのお歴々が来ていたが、今年はどこも寂しいかぎり。来賓の連合幹部の挨拶でさえ民主党に厳しく注文をつけた。パーティー券も買ってもらえなくなっている。

 経営者は民主党政権で官の力がますます強まって商売がやりづらいと肌身で感じているし、ましてや中小企業は消費税を上げられたら価格転嫁できないから死活問題です。これでは選挙態勢の組みようがありません」

 野田政権の自壊現象を象徴するのが4月1日に行なわれる日本医師会(日医)の会長選挙だ。

 医師会といえば「往診カバン1つに200票入っている」といわれる大票田で、自民党最大のスポンサーだったが、前回総選挙では茨城県医師会の1000人以上が自民党を集団離党したのを皮切りに各地の医師会が造反し、「医療の再生」を掲げた民主党支持に回った。その結果、政権交代後の2010年4月の日医会長選挙では小沢氏に近い茨城県医師会会長の原中勝征氏が当選した。

 本誌が入手した日医の政治団体「日本医師連盟」の内部資料によると、政権交代で自民党への政治資金の流れも大きく変わったことがわかる。政権交代前の2008年度は同連盟から自民党(党本部と議員)に5億8170万円献金され、日医の政治資金はほぼ丸ごと自民党に注がれていた。

 それが政権交代後の2010年度3000万円、2011年度はわずか1300万円まで激減し、自民党は有力な資金源を失った。一方の民主党向け献金は政権交代前(2008年度)の500万円から、2011年度は4650万円と民自逆転している。

 野田政権は国民に増税してまで「社会保障にカネを回す」と説明しているのだから、その通りなら医療関係団体は歓迎するはずだが、状況はまるで違う。

 日本医師会の代議員の言い方は露骨だ。

「民主党は2期連続で診療報酬を引き上げたものの、中身は開業医ではなく、勤務医に手厚くした。消費税増税でも、医療機関が医薬品や機材を購入する際には消費税がかかるのに、医療費は非課税になっているから患者からは消費税を徴収できない。そのため医療機関は損税が生じている。一体改革で税制の不備の抜本的解決を求めたが、野田政権は財務省のいいなりだからやろうとしない。この政権に改革など期待できない」

 医師会からも野田政権の一体改革はしょせん社会保障制度の安定にはつながらず、増税の口実だと見透かされていて支持をつなぎ止めることができない。

 そうした医師会内部の野田政権への不満の高まりを好機とみた自民党支持派が原中会長の対抗馬として古賀誠・自民党元幹事長の後援会長を務める横倉義武・日医副会長を擁立し、巨額の政治資金の配分権を握る会長ポストを何が何でも奪い返しに動いている。

 日医の会長選挙は三師会と呼ばれる日本歯科医師会、日本看護協会の政治姿勢にも大きな影響を与え、民主党派が敗れれば他の団体の雪崩現象につながるのは確実だ。

※週刊ポスト2012年4月6日号

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